“自然利用か、自然破壊か”糸島にそびえ立つ最大10基の風力発電機(5)
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糸島市と唐津市の行政界・女岳の七山側で計画されている「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業」。事業者の大和エネルギー(株)(大和ハウスグループ)は、2020年7月7日~同年8月11日にかけて配慮書の縦覧を行うなど、環境アセスメント(※)ガイドに則って計画を進めている。しかし、糸島市側の計画地の周辺住民からは「そんな話はまったく知らない」との声が聞かれ、一部で反対運動が起きる事態にまで発展している。
※環境アセスメント
自然環境に悪影響を与えないように事業内容の評価を受け、環境保全の観点から望ましい事業計画をつくるための制度。事業が開発地域におよぼす影響について事業者自らが事前調査を行い、その後、地元住民や専門家、環境担当行政機関からの意見を募る。 ^自然はすぐには戻らない
DW事業は、環境アセスメントに則り配慮書を提出した段階だ。今後は、事業をより良いものにするために、福岡・佐賀両県知事や、関係市町村長、地元住民、環境影響評価技術審査会(専門家)の意見を参照し、必要とあれば再度現地調査をすることもあるだろう。
ただ、糸島市側で一部住民による反対運動が展開されている事実もある。このことについて、懸念事項として知事から意見が上がってくる可能性は高い。そのときに大和エネルギーがどういった対応を取るのかが、カギを握ることになる。
同社は反対運動について、「反対意見がある事は把握しております」としており、住民説明会の開催に関しては、今後「住民説明会をする予定です」とコメント。また、DW事業の採算性に関しては「現在、事業性確認中です」としている。
現段階でDW事業の実施が決まったわけではないが、反対運動が起こるほどに物議を醸しているのは、計画地である脊振山系が福岡県と佐賀県の大切な水資源を育んでいる自然豊かな山であり、希少な動植物が多数生息しているからだ。そしてその豊かな自然は、糸島市でいえば前述の通り貴重な観光資源であり、移住者が糸島を選択する理由の1つでもある。もしも、DW事業の計画地が二丈エリアではなく、「二見ヶ浦」や「芥屋の大門」といった観光スポットを擁する志摩エリアだったら、反対の声はもっと大きなものになっていたかもしれない。
市制移行から10年を経て、二丈も志摩も分け隔てなく「糸島」の名の下に盛況を博してきた。今回のDW事業に関しても、糸島の問題として議論が活発化することを期待したい。
風力発電機は一度設置しても、撤去すれば消えてなくなる。しかし、設置のために失われた自然はすぐには戻らない。「ハイ、元通り」とは決してならないのだ。事業者である大和エネルギーには、地元住民の声に真摯に向き合ってもらいたい。
(了)
【代 源太朗】
法人名
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