2024年04月17日( 水 )

“自然利用か、自然破壊か”糸島にそびえ立つ最大10基の風力発電機(4)

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 糸島市と唐津市の行政界・女岳の七山側で計画されている「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業」。事業者の大和エネルギー(株)(大和ハウスグループ)は、2020年7月7日~同年8月11日にかけて配慮書の縦覧を行うなど、環境アセスメント()ガイドに則って計画を進めている。しかし、糸島市側の計画地の周辺住民からは「そんな話はまったく知らない」との声が聞かれ、一部で反対運動が起きる事態にまで発展している。

※環境アセスメント
 自然環境に悪影響を与えないように事業内容の評価を受け、環境保全の観点から望ましい事業計画をつくるための制度。事業が開発地域におよぼす影響について事業者自らが事前調査を行い、その後、地元住民や専門家、環境担当行政機関からの意見を募る。 ^

反対運動で白紙になるのは稀

 DW事業は、陸上風力発電となる。計画地に風力発電機を8~10基設置予定で、単機の出力は3,200~4,200kW。10基設置時の最大出力は3万2,000kW。すでに事業者である大和エネルギーから配慮書の提出がなされており、縦覧も行われた。

 計画地における風況条件に関して、近隣住民からは「特別風が強い場所ではないし、計画通りの出力は望めないのではないか」との声が聞かれた。風力発電機を設置するために必要な風速の目安として、年平均6m/s以上という数値が挙げられている。配慮書が出されている時点で、大和エネルギーによる現地調査は完了しており、観測ポイントにもよるが、風速に関しては年平均6m/s以上が観測されたと考えていいだろう。

 DW事業に問題点があるとすれば、どうやって巨大な部材(タワーやローターなど)を風力発電機の設置場所まで輸送するのかということだ。DW事業では、100m以上のローター系(風車の羽根など)やタワー(風車の支柱)が用いられる予定となっている。対して、計画地までは道幅の狭い曲がりくねった林道を通らねばならず、トレーラーが前述の部材を載せて走行するのは至難の業だ。大和エネルギーとしては道幅を拡幅する工事も視野に入れているだろうが、そうなると新たな自然環境への影響(土砂崩れの危険性が高まるなど)が懸念されることになる。輸送手段をどうするかが、最大のポイントとなりそうだ。

 DW事業は造成工事や風力発電機の設置工事、そして電気工事など、着工から竣工まで、最短でも3年はかかるだろう。配慮書作成までの現地調査などに2~3年かかっていると仮定すると、少なく見積もっても7年以上の歳月を費やす一大プロジェクトとなる。投下される資金も並大抵ではないはずだ。

 また、一部で反対運動が起きているが、環境省によれば配慮書が提出された後に事業が白紙になるケースは稀だという。事業者の事業廃止理由についても、反対意見や反対運動が理由になることはほとんどなく、あくまで採算性の問題であることが要因のようだ。万が一、DW事業が中止になることがあるとすれば、それは事業者である大和エネルギーの業績次第といえるだろう。ちなみに、同社の20年3月期の業績は売上高301億5,796万円、当期純利益22億6,708万円で、前期比で増収増益を果たしている。

経済産業省資源エネルギー庁公開情報より

(つづく)

【代 源太朗】

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