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2020年10月24日 07:00

構造スリットの第一人者・都甲栄充氏が来福~構造設計一級建築士・仲盛昭二氏とベルヴィ香椎の施工不具合問題を対談(4)

 Net I・B Newsでは、福岡市東区の分譲マンション・ベルヴィ香椎における建物の傾斜や構造スリットの未施工に関する報道を重ねてきた。記者が構造スリットについて調べていたところ、東京を拠点に建築物の構造スリットの調査などを手がけている一級建築士・都甲栄充(とこう ひでみつ)氏の存在を知り、先日、都甲氏が来福した際に、構造設計一級建築士・仲盛昭二氏も交えた対談にて取材を行った。

 ――都甲氏は「初期診断」や「全数調査」を何件も経験されており、ノウハウをお持ちだと感じます。品確法を考慮すれば、初期診断は築後10年以内に行うことが理想ですか。

 都甲 築後10年といえば、マンションはほとんど劣化しておらず、構造スリットの不具合という重大な瑕疵が隠れているとは誰も考えないでしょう。しかし、外観がきれいであっても、瑕疵は隠れているのです。

 先ほど例を挙げたガンにおいても、自覚症状がなければ受診することないためガンを発見できませんが、自覚症状が出てからでは遅いのです。構造スリットの不具合も地震が発生してから対処するのでは遅いと感じます。構造スリットの不具合を「初期診断」で発見できれば、「現行犯逮捕」として、マンション販売会社にレッドカードを突きつけることができます。

 仲盛 品確法に規定された10年を越えたケースでも ゼネコンの責任は追及できます。私が技術支援を行った久留米の欠陥マンションの裁判では築後20年でしたが、鉄筋のかぶり厚が不足していたことに対して、施工業者である鹿島建設(株)が和解金を支払うことになりました。

 最近では、築後25年経過している福岡市東区のマンション「ベルヴィ香椎」における施工不良に関し、販売会社であるJR九州など3社が建替えを表明しています。
 西日本鉄道(株)が分譲したサンリヤンマンションの構造スリットについて質問をした際、西鉄は「構造スリットの未施工があれば対応する」と回答しています。

 マンション販売会社やゼネコンは、自社で販売や施工を行ったマンションについて責任をもっていただきたいと感じますし、都甲氏が提唱されているように、コンクリート打設後の構造スリットの施工状況の確認など工事全般について管理を徹底していただきたいと考えています。

 ――ガンのように隠れている構造スリットの不具合を、簡単な初期診断で発見することがマンションの価値を保全するうえでも必要ということですね。

 都甲 構造スリットは、区分所有者や住人が簡単に発見することができない隠れた重大な瑕疵です。しかも、構造スリットに不具合があれば、耐震性能が大きく損なわれます。

 1日でも早く、建築業界全体でこの構造スリット問題を真剣に検討し、現在の状況が改善できないようであれば、構造スリットに代わる耐震対策を考えるべきです。そうしなければ、最終的にはマンション区分所有者(消費者)が被害者になるのです。

 仲盛 都甲氏が言われたように、構造スリットの適切な施工が確立できないのであれば、耐震性を確保できる他の方法を考えるべきです。

 構造スリットは、国土交通省をはじめとする行政、(一社)日本建築学会や(一財)日本建築センターなどに関係する有識者などにより提唱され、確認検査機関や構造設計者により普及しました。しかし、行政や設計関係者は、現場の施工において、都甲氏が指摘した問題が実際に起きていることを知らないはずです。私も、行政や有識者を含む建築関係者全体で、代替の方法を検討すべきであると考えています。

 都甲氏は「マンション区分所有者(消費者)が被害者になる」と説明されましたが、重ねていえば、「マンションが倒壊した場合、区分所有者は被害者という立場だけでなく、近隣や通行人に対して加害者となる」ことも考えておかねばなりません。

 建築物の設計の不具合に関する私(仲盛)の知識や経験と、施工の不具合に関する都甲氏の知識や経験を連携させれば、エンドユーザーの強い味方になり得ると考えています。今後とも協力していきましょう。

 都甲 私もそう感じています。協力していきましょう。

 ――都甲氏と仲盛氏が協力され、エンドユーザーの安全や資産を守るために活躍されることを願っています。

(了)

【桑野 健介】


<プロフィール>

都甲 栄充(とこう ひでみつ)

 福岡県北九州市生まれ、明治大学工学部卒業。大成建設(株)、住友不動産(株)を経て、2009年に(株)AMT一級建築士事務所を開設。主な資格は、一級建築士、管理建築士、一級建築施工管理技士、宅地建物取引主任者、管理業務主任者、監理技術者、特殊建築物定期調査員。(一社)日本建築学会司法支援建築会議・元会員、東京地方裁判所・元民事調停委員(建築裁判専門)、(一社)日本マンション学会・元会員、八王子市マンション管理組合連絡会・元会長。
URL:https://amt-happy.co.jp/


仲盛 昭二(なかもり しょうじ)

 (協)ASIO代表理事、構造設計一級建築士。久留米市の欠陥マンション裁判では和解を勝ち取るため、原告区分所有者を技術支援。

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