• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年10月27日 07:00

ストラテジーブレティン(263)~コロナパンデミックの経済史的考察(3)

 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は2020年10月22日付の記事を紹介。


(2) パンデミック、経済正常化の緒につく(つづき)

戦後3度目の世界経済ブームは終わってはいない

 悲観論の根底には、リーマン・ショック後の経済成長は禁じ手政策の連発による砂上の楼閣であり持続性はない、という大局観がある。コロナパンデミックは、いずれ下されるべき審判を速めたに過ぎない、というわけである。米国はじめ各国政府・中央銀行は前例のない財政・金融緩和策(いわゆる禁じ手)を連発して、経済金融の崩壊を防いでいる。これが市場に安心感をもたらしているのであるが、それこそ問題である、という議論である。

 コロナパンデミックが起きる直前まで世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、株価はリーマン・ショック後の10年間で4倍に上昇した。武者リサーチは、この長期経済ブームの波は終わってはいない、コロナの後は再度上昇の波に戻ると主張してきた。理由は、コロナが歴史の流れを押し進めると考えられるためである。

 米国株式を100年単位で振り返ると、20年間で10倍になるという長期ブームとその後の10年間の調整が繰り返されてきた。1950~60年代のNYダウは100ドルから1,000ドルへと10倍になったが、70年代の10年間は1,000ドルとまったくの横ばいであった。80~90年代の20年間には1,000ドルから10,000ドルへと10倍になったが、2000年代の10年間はITバブル崩壊、リーマン・ショックという2つの暴落があり、ならしてみれば10,000ドルで横ばいであった。10年代に入り再度20年間で10倍の勢いで上昇相場が始まっていた。この戦後3回目の大波が終わったのかどうかが問われる。

 ちなみに各20年間の株価上昇の背景には、対をなす2つのレジーム、(1)技術・ライフスタイルとビジネスモデル、(2)金融レジーム、があった。1950~60年代のブームを支えたものは、モータリゼーション、電化による高度大衆消費社会とケインズ体制下の不換紙幣発行、である。80~90年代のブームの背景には、グローバルIT社会とドルの不換紙幣化(ドルの垂れ流し)、そして現在進行中の2010~30年のブームはAI・インターネット・デジタル社会とQE(量的緩和)・株式本位制が対応している、と想定される。

コロナが押し流す歴史進歩の3つの障害物

 コロナ以前から3つの歴史的趨勢が起きていた。
(1)ビジネス、生活、金融、政治のすべてを覆いつくすIT・インターネット・デジタル化、
(2)財政と金融の肥大化による大きな政府の時代
(3)中国の孤立と国際秩序・国際分業の再構築、である。

 しかしこうした歴史的趨勢は、牢固な障害物により展開を阻まれ、それがここ10年近く世界経済の足かせとなっていた。障害物とは、ネット化に対しては既存の慣習・制度・変わりたくない抵抗勢力、大きな政府に対しては、健全財政信仰、緊縮金融信仰、中国抑制に関しては中国経済力の脅威、中国の横車・恫喝、などである。

 これらの阻害要因が歴史の流れを押しとどめ、よどみを生じさせ、政治・制度・経済・社会・生活などにおけるひずみを大きくさせていた。ここ数年で顕在化していた世界経済の病、デフレ(=供給力余剰)、ゼロ金利(=資本余剰)は変化を押しとどめる障害物が引き起こしたものと理解することができる。もう1つの病、格差拡大も、上述の阻害要因が是正の邪魔をしていた。

 コロナパンデミックはこれらの阻害要因をことごとく壊し、歴史的趨勢を加速させるだろう。コロナ感染が沈静化したとき、世界経済はより活力を高めているはずである。本来なら何年もかかり多くの失敗の後にようやくたどり着いたであろうこれらの結論に、コロナパンデミックにより瞬時に到達できたことの意義は大きい。

(つづく)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年01月16日 07:00

コロナ禍でも今後に向けた協力を促進、九州-ベトナム関係の全面的な発展を(後)NEW!

  コロナという逆風が吹き荒れるなか、ベトナムは九州との人的・経済交流を質的に発展させるために、IC・ICT商談会やベトナム人労働者の技能向上などに注力している。ヴー...

2021年01月16日 07:00

「人間の経済」を基軸に、環境問題を考察する!(5)NEW!

 「新聞、雑誌などで地球市民(グローバルシチズン)という言葉がよく躍っているのを、読者の皆さまもお気づきのことかと思います。私たちには、特定の国・地域に限られる権利と...

2021年01月15日 18:37

【福岡県に緊急事態宣言】(8)福岡県下の主な商業施設の営業時間変更(15日時点)

 福岡県への緊急事態宣言発令を受け、対象区域内の商業施設の営業時間の変更が続々と発表されている。現時点では休業ではなく、利用者への注意を促したうえでの営業時間短縮で対...

2021年01月15日 18:16

大和エネルギー、風力発電事業から糸島市を除外

  大和ハウスグループで再生可能エネルギー関連事業を手がける大和エネルギー(株)(大阪市)は14日、福岡県糸島市二丈と佐賀県唐津市七山の脊振山系西側で計画する大規模風...

2021年01月15日 18:13

次世代のデジタルバンク「みんなの銀行」、24時間スマホで口座開設が可能に~ふくおかフィナンシャルグループ

 (株)ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市、柴戸隆成会長兼社長、以下、FFG)の子会社の(株)みんなの銀行(横田浩二頭取)は14日、インターネット専業銀行「みんな...

2021年01月15日 16:58

関係者困惑~西日本新聞の新天町再開発記事は飛ばし!?

 2021年の元旦、福岡の地方紙である西日本新聞の一面に、センセーショナルな文字列が躍った...

2021年01月15日 16:51

前熊本市長・幸山政史氏が自伝「下手と呼ばれた男の流儀」を出版

 熊本県議、熊本市長を務めた後、熊本知事選に2度出馬した幸山政史氏がこのほど、政治家生活25年を機に、自伝をまとめた。到底書評と呼べるものではなく、読書感想文の域を出...

(有)アドバーウィン(大分)/産業廃棄物中間処理

 同社は、2020年12月22日、大分地裁に破産手続きの開始を申請した。

2021年01月15日 16:43

ストラテジーブレティン(270号)~年初の経済市場点描、株高は当然だ(前)

 米国株式は史上最高値更新、日本株式も30年ぶりの高値(ドルベースでは史上最高値更新)など、株が駆け上がっている。韓国、台湾株は昨年11月以降、日本株式以上の上昇ペー...

2021年01月15日 16:29

「ほどよい距離」と「1人」、そして「あっち側とこっち側」(前)

 朝日新聞(2021年1月9日付)の「be between 読者とつくる」欄に、「ソロ活動は好きですか?」という見出しで「ソロブーム」についての分析があった。「ソロの...

pagetop