2024年04月19日( 金 )

アップルウォッチ、腕時計の出荷台数で世界1位に(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 長い歴史をもつ時計産業にもデジタル化の波が押し寄せ、大きな変化が生じようとしている。今回は、時計のデジタル化についてのトレンドを取り上げたい。

スイス高級ブランドが幅を利かせてきた時計市場

 時計は時間を知るための道具としてつくられたものだが、現在はファッショングッズの一角を占めるようになった。そのため、その人の着けている時計を見たら、ステータスやセンスがおおよそ推測できるものだ。

 はるか昔は、太陽の位置からおおよその時間を測っていた。いわゆる日時計である。その後、振り子を使った時計が登場し、正確な時間を知ることができるようになった。しかし、振り子時計は小型化することが難しく、小型化に向けて工夫するなかで機械式時計が考案され、その仕組みが現在の腕時計に受け継がれている。

 また、1927年にはアメリカで水晶を使ったクオーツ時計が発明され、その技術が発展を遂げた結果、腕時計の技術のもう1つの礎となっている。今日の時計業界では、スイスの高級ブランド時計が名をとどろかせ、世界の時計市場の半分はスイスブランドの時計で占められてきた。

 スイスには時計業界を代表する3つのグループがある。「スウォッチ グループ(以下、スウォッチ)」「コンパニー フィナンシエール リシュモン グループ(以下、リシュモン)」「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループ(以下、LVMH)」の3大グループだ。

 このなかで、もっとも早くからグループ化に成功し、世界最大の時計グループとなったのはスウォッチで、オメガやブレゲといった世界的な時計ブランドを所有している。スウォッチの成功に刺激を受けて、ジュエリーやファッションに強いリシュモンも市場に参入し、ファッション業界最大手のLVMHも進出した。

 リシュモンは、カルティエやピアジェなどのジュエリーブランドを中心に攻勢をしかけ、スウォッチの対抗馬として浮上した。また、ファッション業界で抜群の知名度を誇るLVMHは、時計産業でタグ・ホイヤーやウブロ、ブルガリなどのブランドを傘下に収め、勢力を拡大してきた。

 一方、スイスの時計業界には、上記の3大グループのみでなく、独立した企業も存在する。ロレックスやパテック フィリップ、オーデマ・ピゲなどは、大資本の傘下に入らず、独立して事業展開をしていることで有名だ。

 スイス製腕時計の年間売上高は2.17兆円で、時計市場の5割以上を占めている。スイス製の時計の輸出先は1位が香港、2位がアメリカ、3位が中国、4位が日本、5位がシンガポールとなっている。

アップルウォッチが販売台数でスイス製の時計を凌駕

 ところが、このようにスイス高級ブランドが幅を利かせてきた時計市場に、アップルのスマートウォッチ(アップルウォッチ)が参入し、その販売台数はついにスイス製の時計を凌駕するようになった。

 2019年のアップルウォッチの出荷台数は3,070万台で、スイス製の時計の出荷台数(2,100万台)を初めて上回ったのだ。18年のアップルウォッチの出荷台数は2,250万台であり、昨年、前年比36%増の成長を遂げたことになる。アップルウォッチが発売されたのは14年9月で、アップルウォッチは5年間のうちに市場を爆発的に拡大させている。一方、スイス製の時計の出荷台数は19年、前年比で約13%減少している。

 さらに、他のスマホ製造会社もスマートウォッチ市場に参入し、スマートウォッチ市場はスマートフォン製造会社の新しい激戦地となっている。中国のスマホ製造会社であるファーウェイ、Vivo(ヴィーヴォ)、OPPO(オッポ)なども、スマートウォッチの新製品を続々と市場に投入している。

(つづく)

(後)

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