2024年04月20日( 土 )

【福岡商工会議所調査】新型コロナウイルスの海外進出企業に及ぼす影響~8割の企業がマイナスの影響があるとしつつも、現地で事業を継続

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 福岡商工会議所(藤永憲一会頭、以下、商工会議所)は、九州の海外進出企業385社を対象に実施した「新型コロナウイルス感染症が九州の海外進出企業に及ぼす影響に関する調査」(調査期間:8月5~26日)の結果を発表した。

 調査実施の目的は、この調査の実施を通して企業の現状や要望を把握することで、支援施策の立案や今後の取り組みにつなげるというもの。有効回答率は31.9%(有効回答数:123社)とこの手の調査にしては高く、また、本来は直接担当していない九州全域の企業を質問対象に含めていることを考えると、多くの企業の意見を聴取できたといえる。商工会議所担当者によると、まずはこの新型コロナウイルスという未経験の状況に対して、現状をよく理解するために行った調査であったが、多くの海外進出企業にとっても自身の窮状を訴える1つの機会であったといえよう。

約8割の企業がマイナスの影響を実感

 調査結果に関して、進出先におけるコロナの影響については、「すでにマイナスの影響がでている」が70%で最多であり、続けて「今後、マイナスの影響が出る可能性がある」が11%である。合わせて81%の企業がマイナスの要素ありと認識しており、新型コロナウイルスが大きな影響を与えていることが確認できる。

 業種別では、飲食サービス・宿泊業への影響が顕著であり、100%の企業がマイナスの影響を実感している。次が卸売・小売業の88.2%であった。

 具体的な影響に関して、「取引先の営業自粛・停止による売上減少」が23%で最多、次いで「進出国での消費マインドの冷え込みによる売上減少」および「移動自粛・制限による商談機会の喪失」がそれぞれ22%と上位を占めている(複数回答)。

 感染拡大前の売上水準への回復見通しについて、「わからない」44%と約半数を占め最多で、先が見通せない様子であることがうかがえる。

約8割の企業が事業を見直しせず、継続

 一方、興味深いのが、進出先における今後の事業の見直しの検討に関する調査結果だ。「⾒直す予定はない」が47%約半数を占め最多で、続けて「しばらく様子をみる」が36%であった。合わせて83%の企業が事業の見直しはせずに耐えている状況である。商工会議所担当者によると、企業は先を見通せない厳しい状況に置かれているが、コロナの情勢と外部環境を注視しながら、次に打つ手を考えているという。

調査結果を受けて

 商工会議所として、今回の調査結果をフィードバックさせ、今後の提言活動に反映させていくとしている。いくつか検討中であるが、移動制限の課題に関してすでに1つ要望書の提出を行っている。

 商工会議所は企業からベトナムなど比較的往来が多い国への入国について問い合わせを受けており、旅客機の定期便が復活する際には第1陣に成田空港や関西空港のみならず福岡空港も加えて欲しいと考え、在福岡ベトナム総領事館に対して九州商工会議所(連)会長と(一社)九州経済(連)会長の連名で要望書を提出した。今回の調査結果が要望書のエビデンスにもなっているという。

 なお、この移動に関する課題は、調査で企業から困っていることとしてもっとも多く挙げられた課題でもあった。代表的な意見を挙げると下記の通りだ。

「移動制限によるあらゆる機会喪失(とくに新規事業の検討・企画・推進・各種監査)」
「現地へ訪問できず、オンラインのみでは、状況が把握できないところがある」
「海外取引先訪問や海外客の来訪が中断され新規案件の具体化ができない」
「各国における外国人に対する入国制限」
「国によっては渡航後14⽇間の待機があり、必要な人材の応援確保に時間を要する」

 また、企業の本社および進出先いずれも情報収集に苦労している様子がうかがえたため、商工会議所としても海外情報を発信していくことを検討している。時期、発信形態などを含め検討中だ。各国の政策・方針などが頻繁に変わるため、信頼性の高い情報を発信していくことは容易ではないが、商工会議所の持つ情報網をいかせるものと期待したい。

福岡商工会議所の取り組み

 福岡ワンストップ海外展開推進協議会:福岡商工会議所、(公社)福岡貿易会、福岡アジア貿易センター、中小企業基盤整備機構、ジェトロの5つの機関で構成している。海外進出に当たってぜひ相談してほしいとしている。
 それぞれに強みがあり、たとえば福岡商工会議所はベトナム商工会議所と協力合意(MOU)を締結しており、ジェトロは世界に多くの事務所を構えており(76カ所)、東南アジアなどに滞在経験があり現地事情に通じた職員を抱える組織もある。

 海外進出にあたり企業が苦労する事柄の1つが現地パートナー探しであり、海外で現地の人と顔が見える関係を構築することの大切であるという。なお、商工会議所(Chamber of Commerce)は全世界で認知がある組織であり、現地の政府・公的機関とも直接、間接のネットワークがあるので、海外進出を計画している企業としては同所の支援を受けることで進出リスクも低減できそうだ。

【茅野 雅弘】


<同調査に関する問い合わせ先>
福岡商工会議所産業振興部 産業振興グループ
所在地:福岡市博多区博多駅前2-9-28 商工会議所ビル6階
TEL:092-441-1119
URL:https://www.fukunet.or.jp/

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