2024年04月26日( 金 )

「進出しないという選択肢はない」九州エリアでの展開を加速する星野リゾート

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日本有数の温泉地・九州 各エリアの観光資源をめぐる旅へ

10月5日、九州初のプレス発表会で登壇した
星野リゾート代表・星野佳路氏

 国内外で宿泊施設を複数展開する(株)星野リゾートは10月5日、九州で初となる報道関係者向けのプレス発表会を福岡市博多区内のホテルで開催した。

 冒頭、登壇した同社代表の星野佳路氏は、「初めて九州を訪れた際、国内のほかの場所と違う要素をもった豊富な観光資源があることに気付きました。このようなすばらしい観光資源をもつ九州を星野リゾートが紹介しない、九州に進出しないという選択肢は絶対にあり得ません」と、九州エリアでの展開について意欲を示した。

 同社は現在、九州エリアで「界 阿蘇」(大分県九重町/12室)を運営しているほか、2021年1月29日開業予定の「界 霧島」(鹿児島県霧島市/49室)と、21年夏開業予定の「界 別府」(大分県別府市/70室)の2施設の開業を予定している。そのほかに、由布院温泉(大分県由布市)と雲仙温泉(長崎県雲仙市)でもプロジェクトを進めているが、日本有数の温泉地を多数擁する九州エリアでの展開は、温泉旅館ブランド「界」を中心に考えているという。

 有名温泉地を中心に国内16施設(10月現在)を展開する「界」は、「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、その土地の歴史や文化を踏襲した個性的なおもてなしを提供することが最大の特徴。同社では、良質で豊富な温泉と特徴的な風土が温泉旅館をつくるうえで必要不可欠としており、これまでにも各地の特色に合わせて、地域文化を楽しむ「ご当地部屋」や、伝統工芸や芸能を体験するプログラム「ご当地楽(がく)」などを開発してきた。これらの点で、九州は非常に魅力的なエリアだと捉えており、今後は九州各地を訪れる湯めぐり旅を提案していく予定だという。

 観光地としての九州の魅力について、星野代表は「活発な火山活動によって形成された世界有数の巨大カルデラ、源泉数と温泉湧出量日本一の豊かな温泉資源、日本創生にまつわる神話とそれを連想せずにいられない神秘的な自然環境」などを評価する。

 一方で、九州観光の強みと弱みについては、「九州は、各県が一体感をもって“九州としてのブランド”にコミットしているのが強みである一方で、欧米などからは北海道や京都などに比べて『九州』という言葉・ブランドが認知されていないのがネック。今後、認知率を高めていく必要がある」との見解を示す。同社でも各施設の展開を通じて、九州ブランドの向上に寄与していきたい考えだ。

「九州エリアにおける今後の展開」(株)星野リゾート 資料

コロナを乗り越え外資系とどう戦うか

 発表会ではほかに、同社が提案するコロナ禍における観光のかたち「マイクロツーリズム」や“withコロナ期”における同社の企業動向などについて発表された。

 同社が提案する「マイクロツーリズム」とは、移動時間1~2時間圏内の地元や近場を楽しむ小旅行のことで、感染拡大防止と地域経済とを両立することが大きな特徴。同社の各施設で展開する「ご当地楽」や「ご当地部屋」などのさまざまな地域の魅力を反映する取り組みによって、地域の魅力の再発見に努めていくという。実際に同社の既存施設のなかには、マイクロツーリズムに向けた取り組みに注力することで、昨年度比で客室稼働率が向上したケースもあるといい、コロナの影響で急速に減少するインバウンドに替わる新たな観光の在り方として期待を寄せている。

 “withコロナ期”における同社の基本方針は、コスト削減に努め現金重視の経営に変えていく「現金を掴み離さない」、終息後に可及的速やかに収益を戻すための「人材を維持し復活に備える」、長期的な取り組みをいったん棚上げして目の前の危機に向き合う「CS・ブランド戦略の優先順位を下げる」の3つ。社内向けに自社の“倒産確率”を詳らかにして社員・スタッフの“漠然とした不安”を解消するなどのユニークな取り組みで全社のベクトルをそろえながら、やがて訪れる終息後の競争激化に備えている。また、「インバウンドは必ず復活する」と見立てており、そのときに外資系ホテルなどの強力なライバルといかに戦っていくか、「日本文化・地域にこだわり、日本らしさを打ち出していく」などの戦略を練り上げているところだ。

【坂田 憲治】


界 阿蘇

(大分県・瀬の本温泉) 2006年6月開業/運営中

 阿蘇くじゅう国立公園内に位置し、8,000坪の敷地にわずか12棟の離れが点在する温泉旅館。世界有数の規模を誇る阿蘇カルデラが育んだ「大自然の恵み」をテーマとしており、全客室に露天風呂を備える。
客室数:12室


界 霧島

(鹿児島県・霧島温泉) 2021年1月29日開業予定

 開業予定地は、天孫降臨の地として知られる高千穂峰を含む霧島連山など、稀有な自然環境が残されているエリアで、施設からは桜島のある錦江湾まで見わたすことが可能。霧島の貴重な観光資源である温泉、自然景観、日本創生にまつわる神話に触れられる温泉旅館を目指している。
客室数:49室


界 別府

(大分県・別府温泉) 2021年夏開業予定

 美しい別府湾を一望できるロケーションに位置しており、客室の窓から温泉街や海まで見下ろすことができる。“不夜城”ともたとえられる旧別府港を中心とする温泉街のにぎわいが一望できる、開放的なテラスが特徴。別府温泉の歴史・文化、温泉街の活気を体験できるようなおもてなしを提供する予定となっている。
客室数:70室

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