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2020年11月10日 11:19

地元主導で再エネの「地産地消」革命~地域経済の循環とエネルギー自給化へ(後)

 地元主導による太陽光、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー(以下、再エネ)の電力供給が進んでいる。地域でつくった電気を地域で使う再エネの「地産地消」で地域経済の循環を目指し、地域の環境を守る各地の取り組みを紹介する。

バイオマス発電に運営協力

おおすみ半島スマートエネルギー(株)
代表取締役 村上 博紀 氏

 第三者所有(TPO)モデルにより、家庭用太陽光発電10件を実施。個人の初期費用ゼロで発電設備を設置でき、同社が15年間運用した後に無償譲渡する。おおすみ半島スマートエネルギー(株)代表取締役・村上博紀氏は、「太陽光発電はFIT制度の売電価格が下がり、初期投資を10年間で回収することが難しくなったため、TPOモデルを選ぶ人が増えている」と話す。

 また、農水省が管理する畑地灌漑用の荒瀬ダム(肝付町)の小水力発電所(発電容量:309kW)から、相対契約で電力を調達している。村上氏は、「山や川が多く高低差がある地域のため、行政は小水力発電を建設したいという意向があるが、50kW以上の高圧連系の発電所では系統接続の制約が厳しく、億単位の接続負担金が必要だ。そのため、50kW未満の小規模発電所、もしくは大きな需要地付近に発電所を建設して自家消費を併用する方法が現実的だ。ただし、電力需要が低下する非操業日にどう対応するかが課題」という。

 同社は、公共施設に太陽光発電を設置し、電力を自家消費する取り組みを進めており、21年春には地域の学校の屋根に設置する予定だ。環境教育も視野に入れている。

 錦江町では、環境省の補助を得て昨年建設した木質バイオマス発電所(45kW)で町有林の木材の端材を燃料に利用し、公共施設で電力を消費する試験運転が行われているため、同社は発電電力の運用に協力している。バイオマス発電の発電効率は約20%だが、熱回収は最大で約80%が可能であるため、バイオマス熱を有効活用する方法が模索されている。

 村上氏は「木質バイオマスは、FITで売電するのではなく発電電力を自家消費で消費できる小規模発電所のほうが地域への経済効果も高く、エネルギーの地産地消を実現しやすい。一方で、海外製の発電機は不具合が出たときにすぐに対処できないため、稼働が不安定になりやすい」と話す。今後は、自家消費を前提にした太陽光、小水力、バイオマス、バイオガス発電所の建設や提携を行い、小売電気事業以外でも地元に根差して利益を還元できる事業を目指す。

小水力発電所を建設

永吉川水力発電所

 LPガス供給販売を行う太陽ガス(株)(鹿児島県日置市)は、地域の太陽光や水力発電所などの電力を調達し、電力小売業を行う。太陽ガス代表取締役社長・小平竜平氏は、電力の安定供給ができて、水利権、土地所有者など多くの関係者がおり地域に利益が分散することから、小水力発電に注目。エネルギーの地産地消を目指し、2015年にひおき地域エネルギー(株)、19年にみずいろ電力(株)を主導して設立し、小水力発電所を建設。ひおき地域エネルギーは地元企業、日置市、(株)鹿児島銀行など、みずいろ電力は日本ガス(株)などの企業が出資している。

太陽ガス(株) 新エネルギー推進チーム 及川 斉志 氏

 ひおき地域エネルギーは18年に永吉川水力発電所(44.5kW)を総事業費約1億円で建設し、運営している。年間売電収入は約800万円。太陽ガス新エネルギー推進チームの及川斉志氏は、「初の水力発電所の建設で知見がなく暗中模索していたが、地元企業や専門家の協力のおかげで無事に完成し、今では大きな故障もなく順調に発電している。雨が降った後に取水口にゴミが詰まると取水できず、出力が落ちるのを防ぐため、ゴミを巻き上げる自動除塵機を導入する予定」と語る。

 日置市伊集院町では自営線を設置し、日置市庁舎などの需要家を繋げ、電力の供給販売をしている。自営線内のグリッドには太陽光とガスコージェネ設備からも電気を供給している。

 みずいろ電力は、泊野川水力発電所(503kW)を22年3月に完成させる予定だ。総事業費は約8億円で、一般家庭約650世帯分の電力を発電する。オーストリア製のペルトン水車によりコストダウンし、エネルギー回収率は最高で約85%という。及川氏は、「小水力発電は、装置設備の償却年数が22年、土木は57年と、太陽光や風力などと比べると非常に長いため、減価償却としての計上が少なく法人税額が多くなる。融資の割合が大きいとFIT期間の20年においてもキャッシュフローが厳しい。しかし融資の返済後は、メンテナンスにより60年以上、発電を続けられる安価な電源となり、環境に負担をかけずに長く事業を続けられる」と話す。

 第二次世界大戦後の発電所の大規模化により、日本ではほとんど大型水車しかつくられていなかったが、欧州では小型水車の需要があったため、発電効率化、低コスト化が進んでいるという。

 また、新たな小水力発電所の開発も予定している。及川氏は「発電所の地点探しでは、水が多く高低差があるポテンシャルが高い地点、設備を設置しやすい地点はすでに発電所が設置されていたり、昔は発電所があったりした場所が多い。昔の人の地形の把握ぶりにはいつも驚かされる」という。

 太陽ガスは、永吉川水力発電所、太陽光の市民共同発電所((特非)くまもと未来ネット、SATOEne(株)など)、福岡県の水力発電所(一貴山小水力発電所100kW)から電力を調達している。電源構成(18年度)は、JEPX 54.9%、JBU 34.2%、太陽光、小水力などのFIT 4.2%、相対取引4.4%、その他 2.3%。環境に負担が少ないエネルギーを供給できるよう、地元の再生可能エネルギー発電所からの調達を増やし、小水力発電では、発電規模の小さい地点や土地改良区が所有する水路など、コストをかけずに開発や支援を目指す。

(了)

【石井 ゆかり】

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