2024年04月26日( 金 )

新しいことに挑戦し進化を続ける建築設計集団

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(株)R.E.D建築設計事務所

テレワークの導入はシアトルでの体験から

FOMA2-1

 永続する企業とは、さまざまな環境変化に対応することができる組織体である。そのためには現状に満足することなく、新しいことに挑戦することも不可欠だ。新型コロナウイルスは社会に変化をもたらした。その1つがテレワークというスタイルであろう。

 R.E.D建築設計事務所は、福岡を拠点にマンションや住宅、店舗などのデザイン・企画・設計・管理を手がける。新型コロナウイルスの感染拡大防止のためもあり、同社でもリモートワークを導入したが、「コロナ問題への対応が導入のきっかけではない」と代表の赤樫幸治氏はいう。

 昨年春、赤樫氏とスタッフは、縁あってアメリカ・シアトルを訪問した。シアトルといえば、マイクロソフトやAmazon、スターバックスなど世界的な企業が誕生した地である。滞在中、Amazon本社内にある新オフィス「Amazon Spheres」やスターバックス本社といった企業をはじめ、ダウンタウンや高級住宅街など、さまざまな場所を見て回った。Amazonではリモートワークが当たり前で、社員たちは思い思いの場所で仕事をしていた。そのオープンなスタイルを目の当たりにして、仕事観やライフスタイルの違いを感じるとともに良い刺激も受けた。リモートワークの導入を意識するようになったのは、シアトルでのこうした体験からだった。

 日本に帰ると、アメリカとの風習や環境の違いもあってリモートワークの導入には至っていなかったが、コロナ禍で一気に実現へと動き出した。実際に導入することで、リモートワークでの仕事は、対面よりも効率が下がるケースがあることもわかった。今は週2回のリモートワークを続けながら、効率化と生産性の向上を追求している。

総合的な力を身に付けて欲しい

 赤樫氏は、スタッフ1人ひとりが早く1人立ちできる力をつけて欲しいと考えている。全体像が理解できていると、なぜこれが必要なのか、なぜ今やるのかがわかる。それがわかっていて行う仕事と自分が関わる仕事しか理解していない状態では、本人の成長度合いに差が出るものだ。そのため、赤樫氏は大手で見られるような分業制ではなく1人が企画から実施設計、監理、引き渡しまで、最初から最後まで関わることができる仕組みのなかで総合的な力を身に付ける体制をつくってきた。

 人材育成のためにユニークな手法も行っている。7年前から社内発表会を月に1度のペースで開催している。各人が注目した建築物を撮影した写真を投影しながら、どこが気になったのか、何が良いと感じたのかなどについて発表する。人がどのような物に興味をもち、それをどう捉えているのかなど、自分との違いや感性を共有することで、お互いに刺激を受けることができるし学びにもなる。

 「建築は見た者勝ちというところがあり、写真よりも実際に見て引き出しを増やすことが個人の成長につながります。スタッフだけでなく、私自身も非常に勉強になっています」と全体的なレベルアップに手応えを感じている。

厄介な仕事ほど将来への蓄積になる

パークサイドアパートメント大濠

 同社は、顧客の要望を最大限に取り入れながら採算性を考え、予算内で顧客が求める構造とデザインを実現することを大事にしている。そのバランス感覚のうえに、さらにスピード感覚や正確さをもったデザインを追求しているのだ。赤樫氏が貫いてきた仕事に対する姿勢と実績が評価されているからであろう、常に20件余の案件を同時並行で動かしている。依頼の多くは紹介だという。

 新しいことに挑戦し続けるのも赤樫氏の強みだ。近年は、建築物の定期検診にも取り組んでいる。これは、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合しているかを証明する検診作業(完了検査)である。建築物の増築・改装を行う場合には、この検診作業が必要になるが、「築30年や40年を経過した建物は、未検査のまま使用されているケースも散見されます」と指摘する。

 こうした検査済証のない物件は厄介者扱いされることもある。検査をするとなると費用もかかるし、予期しなかった問題が出てくることもあるからだ。たとえば、マンションをホテルに用途変更する際、検査済証がないために断られたオーナーから「何とかしてほしい」と頼まれる。相談を受けた赤樫氏は、「厄介なことほど将来のためになりますし、皆が面倒がるところには需要があるはずです。断ることはほぼありません」と、あえて難しいと思われる分野に手を付ける。

 「引き受けて後悔した物件もありましたが、実際に取り組んでみると、想像したほど面倒ではなかった物件もあります。実際に経験を積んだことで、自信が付きました。検査済証を取っていない物件を検査して、建築基準法通りの建物が増えていけば街も安全になります。今後は、建築物の定期検診も1つの事業として軌道に乗せたい」と笑顔をみせる。

 新しいことに挑戦する赤樫氏の視線の先には、シアトルでの展開もあるようだ。そのために、リモートワークでの仕事の効率やレベルを上げ、アメリカで通用する人財育成と事務所の体制をつくりあげる。常に新しいことに挑戦してきた同社が、シアトルに拠点をつくる日は近いかもしれない。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:赤樫 幸治
所在地:福岡市早良区西新4-6-15ル・リアン西新102
設 立:2009年7月
資本金:100万円
TEL:092-852-1730
URL:https://www.redoak.co.jp


<プロフィール>
赤樫 幸治
(あかがし こうじ)
1993年、立教英国学院(イギリス)高等部卒業。97年、日本大学生産工学部建築工学科神谷宏治・川岸研究室卒業後、(株)穴吹工務店設計部入社。2009年、(株)R.E.D建築設計事務所設立。

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