• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年11月24日 07:00

【凡学一生の優しい法律学】学術会議推薦無視事件(8)

 自民党の下村博文政調会長は11月15日、岩手県の講演先で菅総理大臣の「学術会議推薦無視」について野党議員や会員が納得しないなら、首相が任命しない民間組織に変えたほうが良い旨の発言をした。

 この発言が反社会的勢力の恫喝よりひどい暴論であることをマスコミが指摘しないこと、その背景となるマスコミの理解力のなさに筆者は強い危機感を感じざるを得ない。

 この発言の背景には、下村氏個人の法的知識や理解力のなさのみでなく、マスコミの同程度の無知識、無能力がある。国民も無知、無能のままに事件が風化していくことになることを筆者は強く懸念しているため、このことがいかに文明基準の低いことであるかを説明したい。

1. 日本学術会議の法的地位

 日本学術会議は法律により設置が認められた時の政府・内閣とは直接の指揮・命令関係にない「独立の団体」である。加えて、内閣の所轄、内閣総理大臣の「学術会議の推薦に基づく任命」などの規定はあるが、その会員の法的職務の性質上、純然たる内閣の附属機関、内閣府の行政執行上の「特別の機関」という意味はもたない。

 日本学術会議は法律上の独立団体ではあるが、法人格を有しないため、講学上は「権利能力なき社団」と定義される。しかし、実態は法の規定に従い団体としての意思決定機関、行動様式を履践しているため、単に法人格がないということにすぎず、団体の実在はある。

 これをわかりやすい例でいえば、内縁関係も法的には正式の婚姻ではないが、一定の実態関係は婚姻と認められ、法的保護の対象となることと同じである。

2. 下村発言の重大性

 このような場合では、任命手続に関する条項についての解釈の相違による問題を理由に日本学術会議法そのものを廃止することが法令(憲法や法律)違反の問題を生じないか、という重大問題を含んでいる。

 これをわかりやすい例でいえば、会計検査院の検査が煩わしいため、内閣が会計検査院そのものを廃止できるか、ということである。内閣総理大臣もその任命にかかる内閣も国民主権者の代理人にすぎないため、その代理人が主権者の意思に反した勝手なことができるか、という問題である。

 国民の意思は選挙でしか表明できないため、内閣が学術会議法そのものを廃止した場合、与党・自民党には国民の支持があるか、という問題になる。下村氏がそれでも選挙で負けないと考えているのなら、これほど国民を馬鹿にした方法はない。

 しかし、問題は山積している。つまり、恫喝の意図であるため、下村氏は何も考えていないだろうが、任命された会員の任期いっぱいまでは少なくとも廃止しないとしても、「推薦無視」の6名の法的利益や学術会議の機能阻害の問題はまったく未解決である。

 下村氏はこの6名については推薦無視のままでよいという立場であれば、現在の紛争の解決にはまったく意味のない提言、つまり単なる恫喝であることは明白である。日本学術会議も団体としての存続が理不尽な理由で廃止されるのを座視することはなく、重大な法律問題であるため、究極的には裁判という事態になる。下村氏は裁判所まで馬鹿にしているということだ。

 法文の規定を無視した推薦無視が理不尽か、推薦無視を違法だと主張する方が理不尽かという問題であるが、この判断は中学生でも可能だろう。菅総理大臣は詭弁評論家であり弁護士の橋下徹氏の助け舟により、専権としての任命権があるかのごとき前提により、推薦無視の理由を任命および罷免の理由の問題にすり替えてしまい、「人事の秘密」ゆえに理由を開示しないという1点張りの答弁を繰り返している。

 「人事の秘密」が成立するのは学術会議が105名を推薦した段階であって、「人事の秘密」が2段階もある人事は、論理に反している。菅総理大臣は学術会議の推薦を明白に無視したのであり、その「推薦を無視した理由」は人事の秘密でも何でもない。なぜなら、菅総理大臣は6名がどのような理由で推薦されたかを知る由もなく、その当否を含めて判断することは不可能であるためだ。

 総理大臣は105名のすべての会員について任命に相応しいかどうかという専権としての判断権を有する、との解釈は「学術会議の推薦に基づき」という文言と完全に矛盾することも、中学生でも理解できる論理的判断である。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年01月25日 17:59

【立憲民主党/稲富修二】選挙で国民の支持を得るために何が必要かNEW!

 福岡2区選出で立憲民主党の稲富修二衆議院議員(50)が23日、データ・マックス本社でインタビューに応じ、次期総選挙に向けた抱負を語った...

2021年01月25日 16:30

【2/14】「令和」の考案者、中西進氏講演会を開催~太宰府市史跡指定100年記念

 太宰府市の大宰府跡、水城跡が国からの史跡指定を受けて本年で100周年を迎える。同市はそれを記念して、2月14に「令和」の考案者とされる中西進氏を招いて講演会を開催す...

2021年01月25日 16:16

自民党厚生労働部会が健康保険の法改正案を審査~後期高齢者給付を1,880億円削減

 自民党厚生労働部会は1月21日、全世代対応型の社会保障制度を構築するため、健康保険法などの一部を改正する法案の審査について議論を行った。給付は高齢者中心、負担は現役...

2021年01月25日 15:44

【基山町】トラスト不動産開発と連携し、子育て世代の移住・定住を促進。保育施設を完備したマンションを建設

 佐賀県基山町は25日、トラスト不動産開発(株)と「まちづくりに関する協定」を締結した。トラスト不動産が基山町において18年ぶりとなる分譲マンションを建築することを契...

2021年01月25日 15:06

【特別インタビュー】再分配機能の強化で貧困をなくす コロナ禍で「小さな政府」は終焉(前)

 『前の安倍政権も菅政権も、コロナ対応に関して失政続きだったと思います。冬になれば感染が拡大するのが明らかだったにも関わらず、ほとんど準備をしていなかったことなど、両...

2021年01月25日 15:00

ネットバブルの寵児、折口雅博氏の自伝『アイアンハート』を読む~逃避先の米国で、あのトランプ前大統領の知遇を得て再起!!(1)

 ネットバブルの寵児が戻ってきた。人材派遣大手グッドウィル・グループ(株)元会長・折口雅博氏が自伝『アイアンハート』を出版した。副題は「ゼロから12年で年商7,700...

2021年01月25日 14:00

シェア争いが激しい韓国フードデリバリー市場(前)

 韓国人の日常生活は、コロナ禍で変化を余儀なくされている。そのなかでも、飲食店利用の減少と在宅時間の増加により、食生活に大きな変化が起こり、フードデリバリーアプリ市場...

2021年01月25日 13:34

【特集】これでいいのか産廃処理(2) 「正直者が馬鹿を見る」中間処理業界

  安定型処分場で埋立できる産業廃棄物(産廃)は、“安定型5品目”と呼ばれる、「廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず、がれき類」など。廃...

2021年01月25日 13:00

【長期連載】ベスト電器消滅への道(7)

 ベストはなぜ負けたか。ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、コジマ、エディオンなどの競合量販店が九州に食指を伸ばした、デフレと不況で消費者の購買意欲が薄れた、そ...

菅義偉首相の致命的欠陥とは

 1月21日、英紙タイムズ電子版が、ある与党関係者の話として、政府が非公式に新型コロナウイルスの影響で東京五輪の開催を中止にする必要があると結論付けたと報じた。これに...

pagetop