2024年04月26日( 金 )

北九州市の空き家面的対策3つのモデル地区で再整備進む(前)

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第1回協議会の様子

 一口に「空き家」といっても、大きく分けて2種類ある。(1)「単に居住(使用)する者がいない建物」と、(2)「特定空き家」だ。特定空き家とは、「倒壊の危険がある」「衛生上有害となる恐れがある」「景観を損なっている」など、周辺の生活環境の保全のために放置することが不適切である建物のことを指す。空き家率が全国平均を上回る北九州市では、この2種類の空き家について取り組んでいるが、今回は(1)の空き家についての取り組みを紹介する。というのも、(2)の特定空き家となる前段階に(1)の空き家があり、今後も人口減少が続くとみられる北九州市において、行政サービスの維持という観点でも、空き家の増加や特定空き家への進行を止める必要があるからだ。

 市場価値がある空き家においてさえ、民間の開発業者などが地権者に問い合わせても、「何となく信用できない」といった理由から、業者が門前払いされてしまい、結果、空き家として放置されるケースがあった。所有者が個人の場合、数次相続が発生することで、処分のハードルが上がり、さらに放置される危険性が高まる。

 このようなケースを防ぐべく、北九州市は行政として画期的な手法をとった。地権者の調査と地権者へのアンケートだ。アンケートとは「地権者への売却の意思確認」であり、売却の意思を確認できれば、民間業者へバトンタッチし、無事契約となれば住宅として市場に流通させ、空き家を解消することができるといった仕組み。北九州市は、空き家に関する固定資産税情報から所有者にアプローチし、参加事業者へつなぐ役割を担う。民間だけではできないこと、行政だけではできないことを、両者が協力することで可能にしていこうという取り組みだ。

 北九州市では、街中の利便性の高い住宅地で駅に近いエリアであっても、前面道路が狭く、宅地も狭小で旗竿宅地であることなどを理由に、建替えが進まず、空き家が連担している地区の存在が課題となっていた。郊外の旧新興住宅地では、高齢化の進展などにより、一定のまとまった空き家が分布して見られるエリアがあり、周辺環境が悪化するなどの危険性があった。北九州市では、次項以降で紹介する3カ所のモデル地区を定めてアンケートを実施。うち3件について、建替えすることがほぼ確実となった。

 さらに、この取り組みを全市に拡大するため、市は空き家の買取業者らが参加する「空き家等の面的対策に係る拡大実施協議会」(以下、協議会)を設置。北九州住宅産業協議会、(一社)北九州空き家管理活用協議会、北九州住宅懇話会、(公社)全日本不動産協会福岡県本部、(公社)福岡県宅地建物取引業協会北九州支部、大英産業(株)の民間6事業者で会員構成される協議会が発足した。第1回となる拡大実施協議会は9月に開催され、第2回以降も地元自治会からの空き家情報提供、協議会会員からの要望受付などを継続していくという。

住宅土地統計調査 2013年と2018年の比較

(つづく)

【永上 隼人】

(後)

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