2024年04月19日( 金 )

北九州市の空き家面的対策3つのモデル地区で再整備進む(後)

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本格実施の段階迎えた

北九州市建築都市局長 橋口 基 氏

北九州市建築都市局長 橋口基氏

 北九州市では人口減少や高齢化等の進行にともない、今後も空き家の増加が見込まれています。国の「平成30年住宅・土地統計調査」では、本市の空き家数は7万9,300戸、空き家率15.8%で、前回の調査よりいずれも増加しており、空き家対策は待ったなしの状況です。

 本市では、2018年度から危険な老朽空き家の是正指導を促進する組織に加えて、空き家の利活用を推進する組織を立ち上げ、総合的な空き家対策に取り組んでいます。利活用の取り組みについては、空き家バンク、空き家のリフォーム補助などの事業を進めてきました。

 しかしこれらは、空き家所有者から相談を受けてから、空き家1つひとつに対応するものでした。前面道路が狭く、建替え困難な旗竿地などの一定のまとまった空き家が見られるエリアについては、課題を解決できなかったため、こちらから空き家所有者にアプローチし、建替えやリノベーションなど空き家の活用を民間事業者と協同して進める仕組みづくりが必要でした。19年度に、民間活力を活用した複数の空き家の建替え事業の検討に着手し、4戸の連担した空き家など3つのモデル地区を選定しました。この事業の入り口は空き家所有者を特定することです。

 相続などにより現所有者が登記名義と異なっている場合や、登記名義人に案内を送付しても回答率が低いなど、民間では難しい状況であることがわかりました。そこで、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市の課税情報を利用して所有者を特定し、売却意思の確認などを行う意向調査を実施したところ、回答率は7割を超えるなど市が行う意義が明確になりました。

 次に、このモデル地区で事業化の検討に協力してもらう事業者を公募し、協議会を立ち上げました。この協議会では、空き家を所有者から買い取る際のルールや事業者の決定方法などについて検討を進め、実際にモデル地区の事業者を決定して建替え事業を進めています。今年度からは住宅事業者や不動産事業者から空き家を建て替えるなどの事業提案を受ける取り組みをスタートし、事業の本格実施の段階を迎えています。

 ここに至るまでには、多くの事業者の皆さまにご協力いただきました、この場を借りてお礼申し上げます。まずは、この面的対策の事業で建替えなどの成功事例を多くつくることで、これまで手付かずとなっていた街中の旗竿地などの複数の空き家の解消が進み、まちの活力が維持・向上されることを期待しています。将来的には、民間事業者の協力を得て、複数の空き家や老朽家屋、空き地、狭あい道路を含めた街区単位での面的対策の取り組みにもチャレンジしたいと考えています。

(了)


<プロフィール>
橋口 基
(はしぐち・もとき)
1962年1月生まれ、熊本大学工学部土木工学科卒業。84年4月に北九州市役所に入庁。建設局などを経て、2019年4月から現職。

(前)

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