2024年04月25日( 木 )

筑紫野市・旧上下水道庁舎を交流拠点へ 筑紫ガスによる地域貢献へのチャレンジ(前)

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筑紫ガス(株)
代表取締役社長 前田  健吾 氏
代表取締役専務 前田 健之輔 氏

新たな事業領域への挑戦

 ――まずは、筑紫野市旧上下水道庁舎用地活用事業に挑戦された経緯についてお聞かせください。

 前田社長 公共施設の再整備事業を活用することで、地域活性化のために何かできることはないだろうかと、常々考えていました。たとえば、筑紫野市役所旧庁舎は80年以上前に、二日市町役場として誕生しました。老朽化や、人口流入にともなう行政需要増加への対応から、移転新設は避けられないため、旧庁舎跡地の活用については早い段階から模索されていました。

 当社も地域活性化についてご相談を受けたり、具体的に企画を考え、実行してみたりと、まちの賑わい創出に向けて前向きに取り組んでまいりました。そうしたなかで、今回の旧上下水道庁舎用地活用事業の公募型プロポーザルの話があり、アトリエサンカクスケール(株)、(株)紬(つむぎ)とともに挑戦したところ、私たちの提案が採用されることになりました。

 ――前々から準備されてきた地域活性化に向けた構想が、ついに実現することになったわけですね。

 前田社長 長い期間にわたって取り組んできたのは、私たちの事業は地域の皆さまに支えられているという、感謝の気持ちが根底にあるからです。地域で暮らす皆さまがいて初めて、ガスや電気サービスの供給といった、安心・安全な生活に必要不可欠な社会インフラ事業が存在感を発揮できます。地域の皆さまへの恩返しの一環として、今回の挑戦を通じて、市に新たな賑わいを創出する交流拠点を提供できればと考えています。

 ――御社では「ガスまつり」などのイベントを定期的に開催し、地域住民との交流を図っておられます。

 前田社長 地域の皆さまに、私たちの活動内容を知ってもらおうという思いでイベントを始めました。ゆめタウン筑紫野や当社の永岡工場を舞台に、料理教室や工場見学など、多彩な試みを行っております。今後は、地域の魅力発信にも注力していきたいと考えており、その情報発信拠点として、旧上下水道庁舎用地を活用できればと思います。

 前田専務 JR二日市駅から近く、魅了的な施設として再生できれば、市の新たなランドマークとして期待できます。すでに公表されている通り、活用方法としては主に、地域の皆さまが気軽に立ち寄れるショールームにお客さまが集う空間(カフェなどを検討)を併設した複合施設のほか、待機児童解消のための保育棟、憩いの場として園庭を計画しています。この園庭は、災害発生時の一時避難場所、炊き出し広場としての利用も想定しています。公共施設の再整備事業という点でも、複合施設の運営という点でも、当社にとっては新しい事業領域への挑戦となります。

上下水道庁舎跡地(イメージ図)

ミッションは住民生活の補完

 ――住民の生活利便性を向上させることが、まちづくりの原点というわけですね。

 前田社長 将来的な産業構造の転換を考えたときに、やはり地域住民が暮らしやすい環境を整えておくことが重要です。人が暮らしているから、まちが活気づいていくのです。また、子育てを含め、暮らしやすい環境を整えるということは、社員にとって働きやすい環境を整えることにもつながります。良い環境が人の定着を促進し、まちを発展させていく――。この好循環を生み出せればと考えています。

 前田専務 私たちのお客さまの多くは、30代以上のファミリー層です。日々料理をされる際に、お風呂を沸かす際に、当社が供給するガスや電気サービスを利用していただいています。ただ、20代以下の世代では、オール電化が当たり前の生活しか知らないという人も少なくありません。今後、火のある生活を知らない世代が増えていくことを考えると、ガスの利便性だけでなく、当社が供給している天然ガスが地球に優しいクリーンエネルギーである点を、いかに伝えていくかというのが課題となります。この課題解決策の1つとしても、計画中の複合施設は、地域の皆さまが興味をもって、自然と足を運びたくなるようなものに仕上げなければなりません。

 ――現状、どれぐらいのお客さまにエネルギー供給をされているのでしょうか。

 前田社長 太宰府市、筑紫野市、小郡市、筑前町、佐賀県基山町が供給エリアで、区域内の一般世帯数は約7万世帯です。我々がガスを供給させていただいているお客さまは、そのうち約3万6,600世帯です。エネルギー供給インフラは生活に欠かせないものですので、行政とも緊密に連携して、地域住民の豊かな生活を支援しております。その支援の一環として、イベント開催などに取り組んでいます。地域で事業をさせていただいておりますので、地域が盛り上がっていかないと、私たちの事業展開にも影響が出てきます。地域住民の方々と手を取り合い、共存共栄を図っていかなければなりません。

 ――今回のコロナ禍においても、さまざまな支援を実施されています。

 前田専務 新型コロナウイルス対策の支援として、当社の供給エリアである3市2町の自治体に順次、支援金として寄付をさせていただきました。

 マスクやアルコール消毒液も考えたのですが、需給バランスの変動が激しく、当社が調達して配布しようとしたタイミングでは、すでに十分な供給が行われているという事態が想定されました。ですから、支援金として寄付を行ったほうが、一番効果的に各地域の皆さまに支援が行き届くと考えたのです。

筑紫野市への支援金の寄付(左から、藤田市長、前田社長、前田専務)

 ――寄付のほかに、テイクアウト可能な飲食店の情報を集約し、発信されています。

 前田専務 ガスと料理は切っても切り離せない関係です。SNSや新聞折り込みチラシで、地域の皆さまに情報提供させていただきました。また、栄養バランスや調理方法など食に関する情報も合わせて情報発信いたしました。多くの反響があり、新しい地域貢献の在り方として、1つかたちに残せたことは当社にとっても収穫でした。

(つづく)

【内山 義之】

<COMPANY INFORMATION>
筑紫ガス(株)

所在地:福岡県筑紫野市紫2-12-10
設 立:1964年8月
資本金:7,500万円
TEL:092-923-3111
URL:https://www.chikushi-gas.co.jp

(後)

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