• このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年12月03日 17:17

【BIS論壇N0.334】RCEP、TPP、APECの動向

 NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2020年12月1日付の記事を紹介。


 11月15日、日中韓、ニュージーランド、豪州、東南アジア諸国連合(ASEAN)アセアンの15カ国によるRCEP(東アジア地域包括的経済連携)が合意に達した。2012年11月にRCEP交渉の立ち上げを宣言して以来、8年がかりで合意が実現した。域内人口は22.7億人で世界の30%、GDP(国内総生産)は25.8兆ドルで世界の30%、貿易総額も5.5兆ドルで世界の30%を占める巨大経済圏が誕生することになる。日本の輸出に占めるRCEPの割合は43%、輸入に占める割合は50%である(ともに2019年の数字)。

 メデイアは、日本にとっては最大の貿易相手国である中国と3位の韓国との初めての自由貿易協定になると歓迎する論調だ(朝日新聞11月12日付)。

 一方、インドが参加しなかったことに関して、RCEPにより日本のGDPは5%増加するが、インドが参加しても0.1%増えるだけだとの、インドを過小評価した見方もある(日本経済新聞11月12日付)。しかし、OECDの予測によれば、インドは2060年にGDPで中国を抜き、世界最大になるという。インドは21世紀の情報産業時代にICT,AI,5G、DXなどの分野で世界をリードしつつある。
 また、インドは南西アジアでも盟主としてSAARC(南アジア地域協力連合)で力を発揮している。さらに、歴史的にもインドは22世紀の大国アフリカとも関係が深い。ほか、中国、ロシアが注力しているユ-ラシアの広域経済圏機構「上海協力機構」の有力メンバ-でもある。

 一方、日本が注力する「インド太平洋構想」はインドを主要メンバ-としている。インドを中国に対するバランサ-として日本はインドを重視すべきと思われる。

 RCEPに関する日本のほかのメデイアの評価に対して、月刊情報誌「選択」12月号は次のように手厳しい評価をしている。

「21年後に中国に醤油、パックご飯、焼酎の関税をゼロにしてもらってなんの意味がありますか」「RCEPの関税撤廃範囲と税率、時期はTPPの既存の2国間FTA(自由貿易協定)とはけた違いに低水準だ」「ASEANの途上国なみのおままごとの自由化、市場開放でお茶を濁したのが実態だ」(同31頁)

 中国の習近平国家主席は11月20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で環太平洋経済連携協定(CPTPP)への前向きな姿勢を打ち出した。しかし、中国の現状では条件の厳しいTPPへの参加は容易ではない。中国の狙いはTPPをてことして、日本に近づき、日米関係にくさびを打ち込むこととの見方がある(日本経済新聞11月28日)。

 いずれにしても、関係国はRCEPの経験を基に、今世紀に世界の発展センタ-になるアジア太平洋の21カ国・地域(米国、ロシア、台湾含む)の広範な地域の国々の経済発展、貿易拡大を目指すAPECの具体的な協力対応策を検討、自由貿易を拡大する方策をアフターコロナのRCEPの国際戦略として、コロナ対策も含めて早急に行動に移すことが必須であろう。日本のリーダーシップとイニシアティブが強く求められる。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年03月02日 14:44

【緊急寄稿/佐藤章】日本が立ち向かうべき「真の問題」 医系技官ヒエラルキーと特別会計の闇

 第2次安倍政権以来8年間続いた自民党政権の下にいて満足を感じている国民はごく少数だろう。安倍晋三前首相や菅義偉現首相にかかわるスキャンダルを毎日のようにテレビや新聞...

2021年03月02日 18:18

『脊振の自然に魅せられて』素晴らしき脊振の霧氷(前)

 2月19日(金)、ワンダーフォーゲルの後輩Oを誘い、今年3度目となる雪の脊振山へ向かった。18日には雪が舞い散っていたが、天気予報を見ると19日は晴れマークとなって...

2021年03月02日 17:58

中国経済新聞に学ぶ~中国、2020年に新生児30%減少(前)

 中国公安部が2月8日に公布した人口に関するデータが多くの人たちを悩ませた。2020年12月31日現在で、20年の出生戸籍に登録した新生児数が1003.5万人、そのう...

2021年03月02日 17:51

LINE、Yahooが防災デジタル化~デジタル庁創設に向けて自民党デジタル社会推進本部が委員会を開催(前)

 自民党は2月25日、デジタル庁創設に向けて、デジタル社会推進本部デジタル施策調査小委員会を開催した。LINE(株)とYahoo(株)から「防災のデジタル化」について...

2021年03月02日 17:39

福島第一原発事故、東電の賠償額10兆円超える

 東日本大震災の福島第一原発事故による東京電力(株)の原子力損害賠償支払額の累計は、2021年度に10兆円を超える見通しとなったことがわかった。この累計には除染費用が...

2021年03月02日 16:46

コロナ時代のメイクを追求「マスクdeなりきりメイク」~明治産業「あ!めいじんぐ倶楽部」

 不動産資産管理、エネルギー販売などを行う(株)明治産業(福岡市中央区、明永喜年代表)は、オトナ女子のための部活動「あ!めいじんぐ倶楽部」をCSR活動の一環として運営...

若きトップと情熱を傾ける社員たち 快進撃はとどまることを知らない

 創業した1986年当時、(株)三和通商は海外から輸入した衣料品などを国内で売りさばくことが主な事業だった。また、お隣の韓国から人気の化粧品を仕入れるなど、時流に乗っ...

地域とともに発展してきたことに感謝 より身近なスーパーマーケットへ

 暮らしに寄り添うスーパーマーケット。その代表格がサンリブやマルショクではないだろうか。長崎、鹿児島、沖縄を除く九州全域、そして山口、広島に133店舗を構え、事業を推...

2021年03月02日 15:39

ポスト・コロナ時代をどう生きるか?変化する国家・地域・企業・個人、そして技術の役割(1)

 ポスト・コロナ時代に、バイデン新政権下での米国、中国、ミャンマー、台湾、韓国、北朝鮮、中東などの国際情勢はどう動き、日本はどのような役割をはたすべきなのか。さらに、...

2021年03月02日 15:18

ワクチン接種開始とその後の展開(前)

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、待望のワクチンがいよいよ生産され、アメリカやイギリスなどの世界各国で接種が始まった。すでに国民の半分近くが接種を受けているイ...

pagetop