2024年04月18日( 木 )

「復興五輪」悪魔の正体

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「日本はいま『原子力緊急事態宣言』下に置かれている。被ばく線量の上限が変更され、菅内閣は原発事故被災者を放射能汚染地帯に棄てている」と訴えた1月27日付の記事を紹介する。

五輪は誰のもの。

五輪は政治権力の私有物でない。
スポンサー企業の私有物でもない。
アスリートの私有物でもない。
五輪は国民のもの。

なぜなら五輪開催費用を負担するのが主権者である国民だからだ。
東京五輪は「コンパクトな五輪」として招致活動が行われた。

1990年以降、日本経済は長期停滞を続けてきた。
しかし、これもウソ。
ウソで塗り固められた「悪魔の五輪」。

2012年12月に第2次安倍内閣が発足して自称「アベノミクス」が展開されたが結果は無残なものになった。
13年1~3月期以降の日本の実質GDP成長率(季節調整済、前期比年率、%)の単純平均値は+0.4%。

東日本大震災、フクシマ原発事故が発生して日本経済が暗闇に包まれた民主党政権時代でも実質GDP成長率単純平均値は+1.6%だった。
アベノミクス下の日本経済がいかに悲惨な状況であったのかを示す客観的データだ。

人々の暮らしに直結する最重要の経済指標は1人あたり実質賃金。
1人あたり実質賃金は13年7月から20年7月までの7年間で8%も減少した。

日本は主要国で最悪の賃金減少国になった。
多くの中間層が下流に押し流された。

国税庁の民間給与実態調査によると、1年を通じて働いた給与所得者の21%が年収200万円以下、55%が年収400万円以下である。
格差は拡大し、市民は日本経済の長期停滞にあえいできた。

安倍内閣、菅内閣が推進する労働市場の規制改変は、大資本の労働コスト削減要請に応えるもの。
「働き方改革」ではなく「働かせ方改悪」が推進された。

長時間残業の合法化
定額残業させ放題プラン労働の拡張
低賃金外国人労働力の輸入拡大
正規・非正規格差の温存
解雇の自由化
などの措置が推進されてきた。

働く市民にとって何よりも重要なことは、時間あたり賃金の増大と雇用の安定だ。
しかし、最低賃金の引き上げはほとんど行われていない。
最低賃金を全国一律で1,500円に定めれば、年間2,000時間労働なら年収300万円が保障される。

現在の最低賃金は792円(1時間当たり)。
2,000時間働いても年収は158万4,000円にしかならない。

さらに庶民の生活を圧迫しているのが消費税大増税。
所得税は所得の少ない個人の課税額がゼロになるが消費税は違う。
所得の少ない人は収入の全額を消費に充てざるを得ない。
そこから根こそぎ10%のお金が巻き上げられる。

10億の収入がある人が1年に1億円消費するとき、収入に対する税負担率は1%になる。
庶民を苦しめ、富裕者に極めて優しいのが消費税の特徴だ。

1989年の消費税導入以降、消費税で400兆円のお金が巻き上げられた。
その一方で法人税が300兆円、所得税が275兆円減免された。
消費税収のすべてが富裕層と大企業の減税に回された事実を多くの国民が知らない。

菅内閣の感染拡大推進策によってコロナ感染が爆発した。
多くの庶民が、コロナに感染しても入院も宿泊療養施設での保護もされず、放置され、死に至らしめられている。
7月までにコロナが収束する可能性はゼロ。

主権者である国民の8割以上が2021年の五輪開催に反対している。
日本が国民主権の国であるなら、五輪についての結論は確定している。

米国もバイデン政権が誕生してコロナ感染抑止を最優先課題に位置付けた。
米国は五輪に参加しないと思われる。
速やかに五輪開催中止の決定を行うべきだ。

菅内閣の罪深さは、目先の欲得を優先してコロナ感染を爆発させたこと。
その象徴がGoTo。

昨日付ブログ記事タイトルを
『菅劇場版「自滅の刃」GoTo列車編』
https://bit.ly/3r4r42f
としたが、菅首相はGoToをゴリ押しして自滅した。

GoToは典型的な利権予算事業。
一握りの旅行事業者に濡れ手に粟の巨大利益が供与される。

利益のおこぼれを頂戴する末端の零細事業者もGoToからわずかな恩恵を受けるが、供与される利益の配分に著しい偏りがある。

GoToを利用する中心は時間と暇を持つ富裕層とビジネス目的の利用者。
医療従事者、介護従事者はGoToどころではない緊迫した日々を送ってい
る。

GoToによってコロナが日本全国に拡散された。
医療は崩壊し、コロナに感染しても入院措置も宿泊療養施設での療養も案内されず、自宅に放置され、重篤化、死亡という事態に直面させられる国民が多数発生している。
「菅首相による虐殺」と表現することもできる。

安倍内閣、菅内閣はPCR検査を妨害し続けてきた。
感染が疑われ、検査を求めるのに、検査も受けられない。
検査も受けられぬまま重篤化して死亡する事例も多発している。
立憲民主党の羽田雄一郎参議院議員も菅コロナ失政の犠牲者である。

菅首相は11月25日の国会答弁で
「GoToトラベルが感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは存在しない」
と述べたが、
「GoToトラベルが感染拡大の主要な原因でないとのエビデンスも存在しない」
のだ。

日本医師会の中川俊男会長は11月18日の会見で
「(GoToトラベルが)感染拡大のきっかけになったことは間違いない」
と述べた。

感染拡大が明白になるなかで菅首相は12月27日までGoToトラベルの全面推進を維持した。
その結果としての感染爆発だ。

東京五輪は当初「復興五輪」と表現された。
しかし、東日本大震災・原発事故の被災者が「復興五輪」とまったく感じていない。

東京新聞が
「復興五輪「役立たぬ」64% 被災者「東京中心」に懐疑的 コロナ拡大に不安も」
https://bit.ly/2LXyVjc
と題する記事を掲載した。

次のように記す。

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 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で被災した住民の64%が、東京五輪・パラリンピックは「復興に役立たない」と考えていることが、岩手、宮城、福島3県の100人ずつに共同通信が実施したアンケートで25日、分かった。
「東京中心」との見方に加え、新型コロナウイルスの感染拡大を危ぶむ声も。
開催まで半年に迫った「復興五輪」の理念実現に、懐疑的な被災者の実態が浮き彫りとなった。

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日本はいま「原子力緊急事態宣言」下に置かれている。
一般公衆の被ばく線量上限は原子炉など規制法および放射線障害防止法に基づいて年間1ミリシーベルトと定められているが、「原子力緊急事態宣言」下に置かれているという特殊な状況を根拠に、この被曝上限が変更されている。

年間線量上限1ミリシーベルトはICRP(国際放射線防護委員会)勧告に基づく法定値。
菅内閣は「年間線量が20ミリシーベルト以下に低下することが確実と見込まれる」地域への居住を強制している。

「年間線量20ミリシーベルト以下」の地域ではない。
「年間線量が20ミリシーベルト以下に低下することが確実と見込まれる」地域だ。

年間線量20ミリシーベルトの地域に居住地を持つ人が年間線量1ミリシーベルト以下の地域に避難しても、避難に要する費用を1円も補償しない。

菅内閣は原発事故被災者を放射能汚染地帯に棄てている。
これが「復興五輪」の正体。
このような「悪魔の五輪」を容認できない。


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植草一秀の『知られざる真実』

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