2024年04月26日( 金 )

西鉄天神大牟田線に謎の支障物、高架化開業延期の影響を探る(前)

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 福岡県と福岡市が事業主体として進めている西鉄天神大牟田線連続立体交差事業(以下、高架化)。当初は2020年度の高架切替を目指していたが、19年6月、県区間である春日原駅旧駅舎ホームにコンクリート基礎が埋まっていることが発覚。撤去に約9カ月の追加期間を要したことなどから、高架切替が22年度にズレ込むことになった。工期延期にともない工事費などの増加も見込まれる。高架切替延期により、どのような影響が出てくるのか。県市それぞれの現場を取材した。

同じ高架化でも県と市の区間は別事業

 西鉄天神大牟田線連続立体交差事業は、沿線の踏切渋滞の解消を目的に、合計900億円以上を投じて鉄道線路を高架化することで、約5.2kmにわたって設置された19カ所(県区間12カ所、市区間7カ所)の踏切を除去するもの。県が春日原駅~下大利駅間の約3.3km、市が雑餉隈駅周辺の約1.86kmのそれぞれの区間の事業主体になる。

 西鉄天神大牟田線の高架化という意味では1つの事業だが、実質的には県と市の区間は別事業になる。工事発注や工程管理などは、ともに鉄道事業者である西日本鉄道(株)(以下、西鉄)が行っているが、県区間は春日原連立工事事務所、市区間は雑餉隈連立工事事務所と担当する事務所が異なり、やはり別事業の色合いが濃い。

いまだに正体不明謎の支障物が発覚

仮設道路と仮設踏切

 2019年7月下旬、西鉄から県に「コンクリート支障物の発見」を告げる第一報が入った。県は西鉄に対し、支障物の全容解明、工期延期の見通し、工期短縮の可能性などについての回答を要求。同年10月末、西鉄から「工期変更(高架切替を当初から2年延期する)が必要」との申し入れがあった。

 これを受けて県は、同年11月に学識経験者を含む事業計画検証委員会(山口栄輝委員長)を設置。工期変更理由の検証、工期短縮策の検討などについて5回にわたって議論を行った。同委には、オブザーバーとして福岡市、春日市、大野城市職員も参加している。検証の結果、申し入れのあった2年延期から7カ月短縮し、1年5カ月の延期となる見通しが示されたほか、駅舎などすべての工事の完了時期も24年11月(10カ月短縮)との見通しが20年4月に示された。

 ただ、支障物の全容については、いまだに解明されていない。県は「旧春日原駅舎の設計図に今回の支障物について記載がなかったため」と説明する。支障物の正体については検証委でも議論されたが、結局「旧駅舎を建設する際に、何らかの目的で設置された底盤コンクリート」という想定の域を出なかった。この点、西日本鉄道の春日原工事事務所担当者も「一般的に、鉄道沿線に埋設物が残っているのはよくあることだが」――と首をかしげる。モノが撤去された今となっては、ナゾのまま忘れ去られていく可能性が高い。ただ、この支障物が駅舎半分ほどの広範囲に埋まっていたことを考えると、工事着手前になぜ発見できなかったのかという疑問は残り続ける。

(つづく)

【大石 恭正】

(中)

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