2024年05月02日( 木 )

ふくおかFGと西日本FHの21年3月期の経営成績を検証する(後)

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 【表4】は金融グループ(FG・FH)と傘下6行の預貸金残高推移表である。
~この表から見えるもの~
<金融グループの預貸金残高推移表>

◆ふくおかFGの2020年9月期の貸出金残高は前年同期比+1兆2,682億円の17兆1,519億円(前年同期比8.0%増)。20年3月期比+1兆257億円(同6.4%増)。
・総預金残高は前年同期比+1兆5,050億円の18兆7,583億円(同8.7%増)。20年3月期比+1兆2,370億円(同7.1%増)。
◆西日本FHの20年9月期の貸出金残高は前年同期比+1兆2,075億円の8兆4,142億円(同16.8%増)。20年3月期比+8,601億円(同11.4%増)と大幅に増加させている。
・総預金残高は前年同期比+6,797億円の9兆3,475億円(同7.8%増)。20年3月期比+5,166億円(同5.8%増)。
◆ふくおかFGの20年9月期の貸出金のシェアは67.1%。西日本FHは32.9%で、ほぼ1/2の比率となっている。預金残高はふくおかFGの66.7%に対して西日本FHは33.3%となっている。
◆ふくおかFGの預貸率は91.4%。西日本FHは90.0%。両グループともに預貸金を積極的に増加させているのがわかる。
<金融グループ傘下6行の預貸出金残高推移表>
◆福岡銀行の20年9月期の貸出金残高は11兆2,402億円。総預金は11兆9,587億円。預貸率は94.0%。
・次が西日本シティ銀行で貸出金残高は8兆1,917億円。総預金は9兆1,331億円。預貸率は89.7%。譲渡性預金の比率が高いのが目に付く。
◆以下、貸出金残高の多い順は、十八銀行、親和銀行、熊本銀行、長崎銀行となっている。
・熊本銀行の預貸率は110.2%。長崎銀行は104.3%と100%を超えるオーバーローンとなっている。

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 【表5】は金融グループ(FG・FH)と傘下5行の2021年3月期の経営成績予想表である。
~この表から見えるもの~
<金融グループの21年3月期の当期純利益(予想)について>

◆ふくおかFGの20年3月期の当期純利益は十八銀行との経営統合にともなう特別利益の「負ののれん発生益」」が1,174億44百万円含まれている。それを差し引きすると実質は178億2,600万円であり、前年同期比262億円(同146.8%増)の増益予想となる。
・西日本FHの21年3月期の当期純利益は前期比▲27億2,200万円の175億円(▲13.5%)と減益予想となっている。
<金融グループ傘下5行の21年3月期の当期純利益(予想)について>
◆21年3月期の当期純利益1位は福岡銀行。前年同期比+341億200万円の532億円(同178.6%増)と大幅な増益予想。
・2位は西日本シティ銀行。前年同期比▲23億9,500万円の150億円(同▲13.8%)の減益予想。
・3位は熊本銀行。20年3月期の赤字から同+59億2,600万円の40億円と大幅な黒字予想。
・4位は十八親和銀行。20年3月期は十八銀行のふくおかFGとの経営統合にともない赤字だったが、十八銀行と親和銀行の合併後は収益が安定。同166億8,200万円の22億円と黒字に転換。店舗統合など経費削減を進めており、今後収益は急回復するものと予想される。
・5位は長崎銀行。同+5,600万円の1億1,000万円(同103.7%増)と増益を予想。

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 【表6】はふくおかFGと西日本FHの株価推移表である。
~この表から見えるもの~
◆20年1月、新型コロナウイルスの日本国内での感染拡大が懸念されるなか、同年1月31日(金)のふくおかFGの株価は前日比+12円の1,925円(前日比0.63%増)。西日本FHの株価は前日比+14円の733円(同1.95%増)となっている。
◆ふくおかFGの今年1月29日(金)の株価は前年1月末比▲52円の1,873円(▲3.90%)。西日本FHは前年比▲103円の630円(同▲9.96%)。ふくおかFGのマイナス比率が低いのがわかる。
◆今年1月29日のふくおかFGと西日本FHの株価は20年3月末より高くなっているものの、20年9月末および12月末比を見ると、ふくおかFGはプラスで西日本FHはマイナスとなっており、明暗を分けているのがわかる。

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~ふくおかFGと西日本FHのトップについて
◆柴戸隆成ふくおかFGの社長兼福岡銀行頭取は福岡県出身。修猷館高校を経て1976年慶応大学経済学部を卒業し、福岡銀行入行。
・2014年6月、谷正明氏の後任としてふくおかFG代表取締役社長兼福岡銀行代表取締役頭取就任。19年4月、ふくおかFG代表取締役会長および福岡銀行代表取締役会長を兼務。
◆谷川浩道西日本FHの社長兼西日本シティ銀行頭取は福岡県出身。修猷館高校を経て1976年東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現・財務省)入省。2011年5月、西日本シティ銀行入行。
・14年6月、同行代表取締役頭取就任。16年10月、西日本FHの設立に伴い代表取締役社長就任。
◆両者とも修猷館高校の同級生であり、頭取に就任したのも同じ14年6月27日。

<まとめ>    
 今月中旬には21年3月期の第3四半期(12月期)決算短信が発表されるが、【表1】~【表5】の通り、20年9月期のふくおかFGと西日本FHの経営成績を比較すると、当期純利益などは約3分の1、預貸金を含む計数などは約2分1のボリュームとなっている。今後もふくおかFGの圧倒的な優位の流れは変わらないものと予想される。そのため西日本FHは、これから九州の第二地銀を中心に経営統合を加速していくものと推測される。
西日本FHの谷川浩道社長は財務省出身であり、今後経営の厳しい九州の第二地銀を中心に「救済合併」を名目に、経営統合を加速していく」ものと推測される。
【表7】からわかる通り、福岡県の福岡藩・久留米藩・小倉藩だけでなく、今後は九州各県の諸藩も再編の荒波に巻き込まれることは間違いないようだ。

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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