不動産のカーボンニュートラルでESG投資、バリューアップに先手(後)
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大規模ビルではRE100の動きが加速
RE100に適合する電力を調達するには、自社で再エネ発電所を設置する方法もあるが、設備が増えてビルとして売買しにくくなることも懸念されるため、不動産業では電力小売業から供給を受けるほうが、再エネ由来の電力を導入しやすいという。
国内外の大手企業、リーディングカンパニーを中心に、再エネ由来の電力が利用できるビルを選んで入居したり、使用電力の再エネ化に取り組む企業は少しずつ増え始めている。「ヒューリック(株)が昨年12月、2050年に保有物件を100%再エネ化すると発表したことは反響が大きかったようだ。今まで環境対応をしなければと感じながらも様子見していた企業も、電力の再エネ化に取り組まなければという意識が生まれている」(久保氏)という。
中小規模ビルならではのCO₂削減の取り組みも
一方、久保氏は「個人の資産家や中小企業経営者ら中小規模ビルのオーナーは、電力コストが上がっても、物件のバリューアップや流動性向上を見込んで脱炭素化に取り組むケースが多い。この場合には、大規模ビルのような基準に準拠する必要はないため、J-クレジットも再エネのものに限定せず、省エネや森林によるCO₂吸収によるものも活用でき、コスト効率を最大化できる」という。
また、日本省電は、サンフロンティア不動産と提携し、同社の不動産再生物件で、森林由来の環境価値を証明するJ-クレジット(三保山林の森のでんき[神奈川県山北町])を利用して、CO₂ゼロの電力を供給。オフィスビル電力のカーボンニュートラルを実現している。コスト削減の意識が強い製造業などとは違って、不動産業界はまだまだコスト削減余地が大きい。物件の運用に悪影響がおよばないよう慎重になりがちで、電力会社の標準料金からまったく切り替えていない物件もある。電力会社を切り替えても、再エネに切り替えても、制度上、平常時に電力供給が途絶えるなどのリスクはなく、電力の品質に影響を与えずに再エネ由来電力に変えることができる。
久保氏は、「電力会社から購入する電気料金は、再エネ賦課金や託送料金などの上昇により、今後も上がる傾向にある。そのため、そもそもの電気コスト削減も必要となり、さらにCO₂排出量も気にしないといけない。ビル経営にとって、これまで以上に電力調達は重要になってくるはずだ」と語る。
(了)
【石井 ゆかり】
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