2024年07月17日( 水 )

所有者不明の土地、空き家問題~公共工事で発覚する深い闇(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
大阪経済法科大学 経済学部教授 米山 秀隆 氏

 道路の幅を広げる公共工事などで判明する持ち主がわからない「所有者不明の土地」は増え続け、その面積は全国で830km2と九州を超える広さとなっている。所有者不明の空き家は老朽化して近隣に危険がおよぶが、解体する際に自治体が費用を回収することもできないなど問題となっている事例も多い。その実態とどのように対策すべきかを見つめた。

所有者不明のマンション

 所有者不明の問題は今後、築年数の古い分譲マンションでも深刻化する可能性が高い。滋賀県野洲市は、老朽化し危険な状態で放置された築47年のマンション(9戸)を総額1億1,800万円で解体。解体では区分所有者全員の賛成が必要で、9人のうち1人が行方不明だったが、アスベスト飛散の恐れがあり空き家など対策特措法の行政代執行が行われた。市は区分所有者に1人約1,300万円を請求したが、8人のうち支払いがあったのは3人ほどで、解体後の後始末が問題となり、自治体の負担が増加した。

 2018年の新潟県越後湯沢の築44年の老朽化したリゾートマンション解体では、土地売却費用などで解体費用をまかない区分所有者全員の同意が得られたが、同地のリゾートマンションで管理不全が懸念される6事例のうち半数は解体費用が土地売却費用を上回る(日本マンション学会調査)。

 分譲マンションの建替えは区分所有者8割の合意が必要だが、老朽化しても住み続けたい住民と、コストをかけて建て替えたい住民がおり、現実問題として合意が難しいケースも多いだろう。米山氏は、「建替優遇策は現状以上に取ることが難しく、老朽化したマンションの建替えが難航し、相続放棄などで所有者不明となる可能性がある。また、解体する場合も負担が発生するため、マンション土地を売却して割に合わない場合は解体が進まない可能性も高い」という。

 高齢化が進む欧州では空き家率は1~4%と低く、法制度の違いもあるが、もっとも大きい原因は長く住み続けることを前提に住宅がつくられることだ。日本の住宅寿命(※2)の32年に対しイギリスでは80年と長く、中古住宅の流通シェアも日本の14%に対しイギリスでは85%と高い(『世界の空き家対策』米山秀隆著)。米山氏は「日本の第二次世界大戦後の住宅は、耐用年数が短く数十年後の建替えを前提につくられるケースも多く、老朽化で空き家化する事例も多い。また、奈良県の法隆寺が古い木造建築として残っているように、建物が木造だからではなく、高温多湿の日本の気候では、西洋住宅でも密閉せず、換気を徹底することで建物を傷みにくくし、次の世代に引き継ぐことができる」と語る。

▼関連記事
空き家問題 関連記事一覧

 一方、耐用年数の長い住宅は建設コストが上がるため、現実的でないという問題もあり、逆に、「短期間や一代限りで解体する前提で建てる方法もある」(米山氏)。たとえば、江戸は火事が多く燃える懸念が高かったため、建築時にお金をかけず薄い板を使うなど簡素で壊しやすい構造とした。短命を前提としても、解体しやすく資材を再利用できるローコスト住宅であれば、空き家問題の解決のきっかけの1つになるのではないか。

(了)

【石井 ゆかり】

※2:滅失住宅の平均築後経過年数
   取り壊された住宅が築後、何年経過していたかを示す。 ^


<PROFILE>
米山 秀隆
(よねやま・ひでたか)
米山 秀隆 氏大阪経済法科大学経済学部教授。1963年生まれ。86年、筑波大学第三学群社会工学類卒業。 89年、筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了後、(株)野村総合研究所、(株)富士総合研究所、(株)富士通総研経済研究所を経て現職。住宅・土地政策、空き家問題を専門としている。主な著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『世界の空き家対策』(学芸出版社、編著)、『限界マンション』『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社)などがある。

(中)

関連キーワード

関連記事