2024年04月17日( 水 )

DXで顧客・従業員満足を実現~食品シェア、まず10%に引き上げ(後)

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 イオン九州とマックスバリュ九州、イオンストア九州の3社は2020年9月1日に合併し、新「イオン九州」を発足させた。営業収益は4,500億円と九州の流通企業では3位になる。規模の利益を生かし収益力を強化、食品シェア拡大を目指す。おりからの新型コロナウイルス感染拡大で総合スーパーは大きな影響を受けている。新型コロナをどう乗り切り、新たな成長につなげていくか、新会社の方針を柴田祐司社長に書面インタビューで聞いた。

「エクスプレス」を積極出店

 ――食品スーパーの年間出店計画はいかがですか。都市型小型店「エクスプレス」業態を拡大する方針ですが、小型店はコンビニとの競合が予想され、商品力が重要になると思われます。惣菜など商品力強化の取り組みについて。

 柴田 食品スーパーの出店は、今後も行っていく予定です。業態としては、通常のマックスバリュに加えて、都市型小型のエクスプレス業態も積極的に出店をしていきます。

 コンビニとの競合については、生鮮3品がそろっていることに加え、インストアベーカリーを強化することで優位性を図ります。惣菜については、PC(プロセスセンター)からのオリジナル商品の供給やエリア内の店舗で店内加工した商品を近隣店舗へ供給する「マイクロPC」機能も強化し、新鮮な商品が提供できる体制を構築したいと考えています。

 ――ディスカウントストア(DS)「ザ・ビッグ」の出店計画および中期的な店舗数目標について。DSはコスト競争力が欠かせません。どう強化していきますか?

 柴田 ディスカウンターとの競争が激しい九州においては、「ザ・ビッグ」の出店も拡大をしていく予定です。現在の25店舗を、将来的には100店舗体制にしていきたいと考えています。店舗規模も300坪クラスの小型タイプになれば、より多くの出店ができ、エリアドミナントの形成によるコストメリットも出てきます。

 また、我々は衣料品や住関連、ホームセンターももっていますので、「ザ・ビッグ」と食品以外のカテゴリーの組み合わせにより、ショッピングセンターとしての集客力が高まれば、他社との差別化・優位性につながると考えています。

経常利益率、最低でも2%

 ――合併による合理化効果について。本部機能の統合によるコスト削減は計画していますか?具体的な後方部門の人員削減数について。

 柴田 本部機能の統合・スリム化は、当然計画しています。現状800人強いる本部のスタッフを最終的には70%(550人前後)まで減らす予定ですが、DXの推進によりさらに削減をすべく知恵を絞ってスマートヘッドクォーターを目指します。

 目的はコスト削減ではなく、より小さな本部にすることでエリア事業部に権限を委譲し、エリアや県単位で独立した運営ができる体制を構築することです。商品開発や行政との連携などを各エリアで行うことで、より地域に根ざした経営をスピードをもって行うことができます。それにより、本部の部署数や機能・役割も集約され、結果として、コストの削減にもつながると考えています。

 ――中期的な経営目標について。3年後(2024年3月期)の営業収益、および経常利益率の目標があれば教えてください。GMS、SM、DSにつぐ新規業態の開発はありますか?

柴田 祐司 氏
柴田 祐司 氏

 柴田 業績に関しては、旧3社の実績を合わせると営業収益では4,500億円になりますので、まずは5,000億円規模に到達し、その後、さらなる拡大に繋げていきたいと考えています。

 経常利益率は、営業収益対比で現状0.5%程度ですので、最低でも2.0%以上の経常利益が出る体制にしていきます。そのためには、新規出店を含めた営業収益の拡大と本部のスリム化をはじめとするローコスト体制の構築が必要だと認識しています。

 また現業態につぐ新規業態としては、インナー&カジュアルやホームコーディなどの衣料や住関連での専門店業態や、ホームセンター事業でのガーデンニング専門店および建設業の職人向けプロショップの出店を進めます。さらに、ショッピングセンター内の不足カテゴリー補完も見据え、スイーツをはじめとする飲食のフランチャイズ事業も新規業態として考えています。

 ――九州市場で食品シェア拡大を目指していると思われますが、シェア目標と方策について聞かせてください。

 柴田 都市別の家計消費支出と世帯数から、現状の九州7県での食品の市場規模を4兆円前後と推測すると、新イオン九州の食品のシェア率は8%前後となります。まずは10%を目指し、そのためには現状から25%、金額で800億円の嵩上げが必要です。

 そのための方策として、都市型小型店やザ・ビッグを新規出店していきます。都市型小型店の100店舗とザ・ビッグの40店舗が新規出店できた段階で、1,000億円は達成できていると想定しています。

 イオン九州の合併初年度の営業収益は、旧マックスバリュ九州と同イオンストア九州の6カ月分が加わり3,400億円となる見込み。経常利益は19億円、当期純利益4億円の予想。巣ごもり消費で食品スーパーとホームセンターは好調だが、外出自粛の影響で総合スーパーが苦戦する。

 成長戦略の柱として小型食品スーパー「エクスプレス」とディスカウント業態「ザ・ビッグ」を据え、事業規模を5,000億円に拡大するのが当面の目標。GMSは改装が中心になる見込みだ。また、キャッシュレス決済の導入やDXを活用したオンライン販売の拡大で既存店の底上げを図る。規模拡大を生かし収益性をどう改善していくか、柴田社長の手腕が問われる。

(了)

【工藤 勝広】


<PROFILE>
柴田 祐司
(しばた・ゆうじ)
1956年8月4日生まれ。79年3月ジャスコ(現・イオン)入社、2002年川口前川店長、03年マリンピア店長などを経て08年5月GMS事業戦略チームリーダー、10年5月イオン北海道取締役、11年5月同社長から14年5月イオン九州社長に就任。

(前)

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