2024年05月03日( 金 )

中国経済新聞に学ぶ~中米首脳会談 2時間の会談で何を話したのか

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 バイデン氏がアメリカの新大統領に就任したことで、米中関係はどういった方向に進むのか。バイデン大統領は、トランプ前大統領に増して厳しく中国を締め付けるのだろうか。こうした心配の声が寄せられている。

 バイデン大統領の就任後、任命されたブリンケン国務長官やイエレン財務長官、そしてオースティン国防長官などの閣僚級は皆、国会の指名公聴会で中国を「挑戦」、あるいは「最大の脅威」などとは表現しなかった。

 では、大統領自身は中国をどう見ているのだろうか。バイデン大統領は就任後の外交演説で、「かなり前に習近平氏と面会した際に、アメリカとは何かを定義してほしい、と言われた。そこで私は『可能性』の一言で表現できる、と答えた。やると決めればすべては可能になると信じている」と述べた。

 そして2月4日、初の外交演説で中国を「もっとも重大な競争相手」とし、「人権と知的財産、グローバル・ガバナンスヘの攻撃を続ける」と述べた。その一方で、アメリカの国益に利する場合は中国政府と協力したいとも述べている。

 さらに2月7日、CBS放送の番組で「中国とは対立する必要はないが、熾烈な競争になる。トランプ氏のようなやり方はしない。この点は習主席も知っている。同じくシグナルを発しているからだ。国際的規則という手段に焦点を合わせる」と述べた。

 習主席についてバイデン大統領は、「とても頭脳明晰で、手こわい人物だ。批判というわけではないが、習氏に民主的性質はない」と評している。ところがバイデン大統領は就任後、主要国の首脳とは電話会談をしたが、習主席との会談は遅れていた。これについては、「まだ話す機会をもてていないが、電話しない理由はない」と述べている。こうしたバイデン大統領の言葉には、少なくとも3通りの意味がある。

 まず1つは、対話をしたくなかったのではなく、きっかけが必要だったのである。はっきりいえばどちらから行うか、である。貿易戦が始まってから急激に冷え込んでいる両国関係にあって、中国側は、関係悪化の理由はすべてアメリカが仕掛けたことであるとの一貫した立場で、対立を解くにはアメリカから自発的に、といった姿勢を示している。

 それから、米中間は衝突する必要もないが、極めて激しい競争は起こり得る。その競争とはトランプ式のむやみなものではなく、国際ルールに戻ってのものである。ただ、その国際ルールについて米中双方で見方がわかれている。

 さらに双方とも、仮に利益の面を踏まえて何らかの関係改善を目指すにしても、価値観における衝突は激しくなる一方である。バイデン大統領がいつ頃習主席に電話するのか、かねてから米中関係を占う1つの目安になっていた。

習近平主席とバイデン大統領、10年間の友情

 そして、中国の旧正月・春節の大晦日にあたる2月11日、ホワイトハウスと中南海で電話が鳴った。バイデン大統領は初めての習主席との電話会談に際し、この大変意義深い1日を選んだのだった。

 バイデン大統領は、習主席との対話は今回が初めてではなく、CBSの番組で述べていたように、副大統領の在任中、他国の首脳に増して会話を重ねていたのである。「副大統領だったころ、習氏とは24時間から25時間にわたり私的な交流をしており、習氏をよく知っている」と述べている。

 数回にわたる両者の交流を振り返ってみよう。

 2011年8月、副大統領だったバイデン氏は、同じく副主席だった習氏の招待を受け、6日間にわたり中国を公式訪問した。

 習氏は北京の人民大会堂で歓迎式典を行い、その後2人は北京飯店で、米中両国のビジネス関係者の座談会に出席した。習氏はさらに、バイデン氏とともに四川省成都の都江堰を訪れ、灌漑設備を視察するといった異例の行動もとっている。

 12年2月、習氏はアメリカを公式訪問し、オバマ大統領との会談に向けてバイデン氏がホワイトハウスまで同行した。その後、2人はそろってロサンゼルスを訪れている。

 15年9月、国家主席に就任した習氏が再びアメリカを訪れた。バイデン氏はオバマ大統領とともにホワイトハウスで出迎え、国務省で歓迎の昼食会を行った。この場でバイデン氏は、「習氏はもう中国の国家主席になったが、私はまだ副大統領だ」などと述べている。

 それから5年あまり、バイデン氏もついに大統領になった。ゆえに、習主席が電話でバイデン大統領を祝福したのは本心であり、身内のような喜びだった。ともに副首脳として初めて出会った11年から10年にわたる友情があり、そして今、世界有数の大国を代表する最高指導者になったのである。習主席はかねてからバイデン氏の大統領就任を待っており、ようやくその願いが実現したのだった。

 一方、バイデン大統領と菅首相との会談時間は25分間で、それも完全に形式的なものだった。しかし、習主席との会談には丸々2時間を費やした。


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