経営者が知っておくべき「人財」に投資するという考え方
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「人財」は、いつの時代も経営の根幹です。良い人財がいるかいないかで、経営は大きく変わってきます。では、どのように良い人財を得ればよいでしょうか?そこでは、従来の「人“材”を育成する」という考え方から、「人“財”に投資する」という考え方への変容が必要になっています。
20世紀まで「人材」は、経営が使う素材でした。右肩上がりの経済を前提に、経営活動を担う素材を得るための手段として、効率的に必要な知見を詰め込んでボトムアップする人材育成を行ってきました。しかし21世紀になり、経営の前提条件が大きく変わりました。SDGsなどの社会課題やデジタルなどを背景とする超複雑な環境に対応しなければなりません。従来の人材育成では通用しなくなったのです。事実、スイスの国際系開発研究所(IMD)による2020年の世界タレント(高度人材)ランキングで、日本は38位まで低下しています(13年は27位)。
そこで必要となるのが、経営資産として「人財に投資する」という考え方です。投資は将来の価値を創出するために、今持っている経営資源を投入する活動です。成果が得られないリスクが存在しますが、リスクを取らなければ成果も得られません。この考え方を「人財」にも当てはめていくのです。
まず人財投資にあたっては、経営として得たい価値を明確にします。収益などの経済的価値はもちろん、知的財産や社内外の信頼関係なども対象になります。ここは単純に経営戦略を踏襲することになります。
次に、投資対象となる人財を明確にします。とはいえ、初期段階ではどの人財がどれだけの価値を創出するかはわかりません。そこで最初は薄く広く、できるだけ多様な人財に学習と挑戦の機会を提供していきます。
学習と挑戦の機会を経ることで人財としての成長可能性、つまり価値創出の可能性が見えてきます。ここでさらに選択と集中を行い、より成長可能性が高い人財に対し、より高度な学習と挑戦の機会を提供していきます。こうすることで超複雑な環境でも活躍できる人財を見出し、経営として求める価値を創出することが可能になるのです。
ただし、このときすべての人財を1人の人間として最大限尊重することは忘れてはいけません。通常の投資と違って、関係者同士の相互信頼関係がなければ成り立たないのです。そういう意味では経営の成否を担う人財投資は、経営の人間的な器次第―ということがいえるのかもしれません。
次回は、「気づく力」をテーマに寄稿いたします。
<プロフィール>
渋谷 健 (しぶや・たけし)/フィールド・フロー(株) 代表取締役
外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー、国内大手企業経営戦略室を経て2014年にフィールド・フロー(株)を設立。「事業に脚本を」をコンセプトに、戦略立案からシステム開発や人財育成までを総合的に提供するオープン・イノベーション実践活動を全国展開。経済産業省・農林水産省などの政策事業、北九州市・宮崎県などの地方創生事業、大企業・金融・ベンチャーなどの民間事業に、プロの事業プロデューサー/ファシリテーターとして関わる。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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