2022年08月18日( 木 )
by データ・マックス

人類は進化する人工知能(AI)との戦いに勝てるのか?(後)

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年4月2日付の記事を紹介する。

 こうした動きは、外交、経済、技術といった各要素を一体化する戦略が世界の趨勢となりつつあることが影響している。さまざまな防衛装備品をステルス化・軽量化・無人化するためには、新素材の研究開発も欠かせない。こうした分野でも、日米の官民挙げての協力が要となる。とはいえ、こうした分野で技術の蓄積のある日本企業がアメリカ企業の傘下に入りつつある現状はもったいないといわざるを得ない。日本政府による自国企業支援策の強化が望まれる。

 現在、日本はアジアの近隣諸国に対し、気象海洋業務・航空気象分野・潜水医学といった分野で、防災や災害時の救援活動を視野に人材育成や技術移転協力を行っている。こうした分野においても、ロボット関連技術は極めて重要な役割をはたすものと期待が高まる一方だ。いうまでもなく、原発の事故現場など危険な環境下ではロボットの活躍が欠かせない。

 その半面、ロボット兵士に対する不安や懐疑的な見方も残っている。まさに、故ホーキング博士が懸念したところである。確かに、瞬発力や破壊力は人間の比ではないだろうが、感情をともなわないロボットの行動には、人間らしさが欠落しているために、どのような行動をとるのか、予測不能の可能性もあり、人間のコントロールがどこまで効くものか、不安視する声が出るのも当然であろう。専門家の間では「キラー・ロボットは原爆についで人類を絶滅の危機に追いやる恐れをはらんでいる」との見方も広がる。

 AIを身につけると、超人的な情報処理や瞬時の判断力は人間を上回るに違いないが、人間を超える存在になったキラー・ロボットたちが、人間を支配下に置くような想定外の行動に走る可能性も否定できないからだ。国連の場においても、キラー・ロボットの導入に関して、慎重な対応を求める声に耳を傾けるべきとの意見も出されているほどである。

 ディズニーの夢の世界でドローンやロボットと非日常的体験を楽しむのは結構だが、現実の世界にロボットがわが物顔で侵入してくる事態には歯止めをかけておく必要があるだろう。故ホーキング博士に限らず、ITの先駆者であるビル・ゲイツ氏やスティーブ・ウォズニアック氏までもが「人工知能ロボットは人類の終わりを意味するかもしれない」と警鐘を鳴らしているからだ。

 ノーベル文学賞に輝いた日系イギリス人作家のイシグロ・カズオ氏も同じような危機感を募らせている。とはいえ、同氏の最新作『クララとお日さま』は人間とロボットとの愛憎物語となっており、太陽エネルギーで動く人型ロボットこと人工親友(AF)と人間との新たな出会いと交流の可能性を示唆しているようも読み取れる。

 いずれにしても、生身の兵士に代わるロボット兵士の登場は時間の問題であろう。今から備えておくべきは、そうしたキラー・ロボットに人間的感情が移植されるようになった場合、どちらが主役の座を確保するようになるか、という本質論である。というのも、人間とロボットの一体化、いわゆるサイボーグやヒューマノイドが人類に取って代わる時代も間近に迫っているように思われるからだ。

 2年前、サウジアラビア政府は世界で初めてロボットに市民権を与える決定を下した。労働力不足に悩む「アラブ世界の石油大国」では、これまで海外から優秀な人材を呼び寄せていたが、厳格なイスラム教のため、束縛を嫌がる欧米人に敬遠され、近年では必要な人材の確保が難しくなってきた。そこで苦肉の策として、ロボットに正式な雇用の場を提供することにしたわけだろうが、はたして、うまく行くのだろうか。中国では自らが設計、製造した「理想のロボット」と結婚を認められたエンジニアも登場している。

 こうしたロボット社会が広がれば、「人間に任せていたのでは地球環境は悪化する一方だ。今こそ、我々ロボットが地球を守るため、立ち上がらねば」という“ロボット革命”も起こるかもしれない。そうした近未来シナリオも考慮しておくべきだろう。なぜなら、感情をもったロボットの研究開発も着々と進んでいるからだ。Googleでもアマゾンでも人間の記憶や感情をロボットに移植する研究が始まっている。

 手遅れにならないように、人間とロボットの境界線を明確化させておく必要がある。「あくまで人間が主役であること」を肝に銘じておかねばならない。さもなければ、ロボットに主役の座を奪われてしまう日も遠くないのではないか。故ホーキング博士があの世で「それ見たことか。俺が予言した通りだろう」と嘲笑っているようだ。

(了)


著者:浜田和幸
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