2024年03月29日( 金 )

地域にスーパーマーケットは必要、人口減少エリアに出店するということ

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(株)マルミヤストア 代表取締役社長 池邉 恭行 氏

 3月26日、大分県を中心に食品スーパーを展開する(株)マルミヤストアは、宇佐市の食品スーパー「セルフおの安心院店」と「セルフおの院内店」の2店舗を(株)小野商店から引き継ぎ、マルミヤストアの屋号で営業を再開した。店舗拡大を図りたいマルミヤストアと後継者不在から事業譲渡を決断した小野商店。2社に共通したのは、「地域にスーパーマーケットは必要である」との思いだった。

地域の老舗スーパーを承継

 ――引き継ぎはいかがでしたか。

(株)マルミヤストア 代表取締役社長 池邉 恭行 氏
(株)マルミヤストア
代表取締役社長 池邉 恭行 氏

 池邉 (株)小野商店の代表・小野太一郎さんは、最後まで地域のことを考えておられました。「お彼岸にスーパーが空いていないと地域の人が困る」「引き継ぎのための閉店期間をなるべく短くしてほしい」など、本当に細やかなことまで気にされていました。看板はマルミヤストアに変わりましたが、後継者不在ということからの事業譲渡ですので、2店舗ともほぼそのままで営業を再開しています。棚割りも変更していません。

 「あの商品がなくなった」といったようなことで、お客さまに迷惑をかけたくはないので、引き継ぐにあたって、まず半年くらいはしっかりとデータをとって、地域のお客さまのニーズを確認してから、必要があれば棚替えを検討していこうと思います。「セルフおの」で取り扱われていた日配品や塩干品などについても、継続してお取引いただいています。

 ――棚割りを変えない理由は?

セルフおの安心院店 地域の生産者直売コーナー
セルフおの安心院店 地域の生産者直売コーナー

 池邉 まずは、お客さまにとって必要な商品を、こちらの都合でなくすわけにはいきません。「セルフおの」は業績が悪かったわけではありませんし、長い間、地域に密着してやってこられた、しっかり利益を出してきたお店です。なので、地域のことを知らない我々が変える必要はないと思っています。

 また、大分県北部の山間に位置する安心院(あじむ)と院内(いんない)は、少子高齢化が進んでおり、従業員にも高齢の方が多くいらっしゃいます。ただでさえ、店舗が変わることでさまざまなシステムが変更されますので、なるべく従業員の皆さんの負担を増やしたくないというのも理由の1つです。

※安心院・院内の人口は2地区合計で4,147世帯、1万276人(2015年現在) 

人口減少地域での出店

 ――人口減少エリアに出店する理由は?

セルフおの安心院店 精肉売り場
セルフおの安心院店 精肉売り場

 池邉 まず大前提として、スーパーマーケットが必要とされているからです。小野さんから最初にお話をいただいたときに、競合店はコンビニエンスストアとおっしゃっていました。業態間競争をするわけではありませんが、家族でおいしいお肉やお魚を料理して食卓を囲もうと思えば、やはり地域にスーパーマーケットは必要だと思います。ですから、「地域のお客様の豊かな食生活と健やかな暮らしに奉仕する」ことを企業使命に掲げる我々にとって、人口減少エリアへの出店は、その存在意義を見つめ直す機会でもあると捉えています。

平日13時ごろのセルフおの安心院店
平日13時ごろのセルフおの安心院店

 また、マルミヤストアの店舗拡大という観点からも、既存の物流システム内で比較的シェアの低い県北エリアへの出店は、合理的なものだと判断しました。しかし、単純に拡大のための出店かといわれると、そうともいえません。当社が出店を検討する場合、悪くても前年比100%で事業計画を作成しますが、今回の出店では、売上が3年ごとに3%の減少見込みで想定しています。働いている方も65歳以上の方が多い。3年後とか5年後には、業務負担を減らす何らかの施策が必要になってくると考えています。

 ――今後の出店計画は?

 池邉 当社は食品スーパーのマルミヤストア、生鮮主体の新鮮マーケット、ディスカウントのアタックスマートと3業態を展開しております。物流効率を考えると、既存商圏内での出店が条件となりますが、競合との兼ね合いを見ながら、地域に合った業態で店舗拡大を図っていきます。まずは、今回の安心院、院内の2店舗をしっかりと引き継いで、地域の皆さまの普段の生活をサポートしていきたい。日本全体が人口減少社会に突入しているなかで、持続可能な地域の食生活インフラとなれるよう、引き続きお客さまに親しみやすく、利便性の高い店舗づくりを続けてまいります。

店頭に張り出された事業譲渡のお知らせ
店頭に張り出された事業譲渡のお知らせ

【児玉 崇】


<COMPANY INFORMATION>
(株)マルミヤストア

代 表:池邉 恭行
所在地:大分県佐伯市野岡町2-1-10
設 立:1972年5月
資本金:8億828万9,500円
TEL:0972-23-8111
URL:http://www.marumiya-st.jp

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