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2021年04月11日 07:00

【凡学一生の優しい法律学】カンニング竹山失言事件~東京都のコロナ感染拡大防止動画広告

事実の概要

 お笑い芸人のカンニング竹山が、東京都の新型コロナウイルス撲滅広告ビデオ制作の費用が実際は数千万円だったものを勘違いして4億数千万円とテレビで公表し、(税金の無駄遣いと)批判したが、誤解に基づくものとのテレビ局による即座の指摘により、お詫び、訂正をした。しかし、東京都には放送後にも多くの都民からの批判の電話などがあり、東京都はより徹底した謝罪の継続を求めて竹山に厳重抗議した。

 竹山が素直に東京都が要求する程度の謝罪を続ければ何も問題は起こらなかったが、最終的に、これ以上の謝罪はしない、と徹底した。そのため、都民からの苦情、抗議の電話が消滅するまでの謝罪を想定していると推測される東京都と対立するに至った。

問題の所在

 竹山は明らかな誤解に基づき、事実に反する税金の使途について批判し、訂正、謝罪をしたものの、いったん、膨大な視聴者に流布された虚偽の風説はたった一度くらいの訂正、謝罪で消し去ることはできないから、東京都の度重なる訂正、謝罪の要求も一見すると、正当であるように見える。

 大部分の市民には、竹山の「これ以上の謝罪は拒否する」との態度は社会的に許容されないように見える。実は、筆者も友人からこの事件についてコメントを求められたため、竹山は東京都に対する被害の発生を防ぐために必要な一切の行為をなすべきであり、訂正や謝罪の表明に多大な経済的負担を強いるものではないため、東京都の要求は社会的相当性の範囲にあり妥当である旨を述べた。

 しかし、するどい社会批評で定評のある室井佑月氏が堂々と「“竹山さん、がんばれ”ではなく“竹山、がんばれ”」という一文をネットに公表した。この一文を見て、筆者は自分のコメントがいかに浅薄なエセ法律論であるかということを気付かされた。無論、室井氏の一文は軽妙洒脱であり、多くの読者がなぜ、彼女が竹山を本気で応援するかという理由を理解できるような文章ではなかった。

筆者の誤り その1

 誤解に基づく批判を受けたのは地方公共団体である東京都であり、私人ではない。東京都に発生した「損害」を、私人に発生する損害と同列に扱うことはまったく誤りである。東京都に発生する「損害」は一応の「訂正と謝罪」によって防止されたのであり、テレビ報道という大きな規模のメディアであるため、視聴者全員に「訂正と謝罪」を徹底させることは不可能である。従って、東京都は不可能なことを竹山に強いた一面をもつ。つまり、一度の謝罪も、二度の謝罪も、三度の謝罪も大集団に対する効果は統計学的見地から見て同じだ。

筆者の誤り その2

 しかし、東京都の継続的謝罪訂正の要求はより本質的な理由から、不適切である。竹山の批判はもともと税金の使途についての政治的批判であるから、その批判が誤解によるものとの自己批判と訂正だけで十分であり、それ以上の行動を要求することは、政治的批判に対する主権者代理人である行政官庁としての権限を逸脱しているためだ。

 政治的情報はもともと市民には近寄りがたく、その信ぴょう性には常に不安が付きまとう。そのような状況にある一般市民が政治を批判する場合、ある程度のあやまりは不可避である。市民の代理人である権力執行機関に対する市民の批判が誤解に基づくものであった場合に、あたかも私人間で認められる程度の損害回復が認められるとする論理は明らかに不当である。極論すれば、有権者は主人であり知事はその代理人であるから、代理人が主人本人の過誤を厳しく・対等に追及することは現実の力関係から見ても不適切である。

 結局、問題の本質は、いかに小池知事に政策選択権があるとしても、宣伝効果を主とするビデオに貴重な税金をどの程度、投入することが適切かという「税金の使い方」の問題提起であったため、それを竹山という個人の過誤だけの問題にしてしまった、東京都の姿勢に問題があることを室井氏の一文は教えてくれる。

 名誉棄損事件でよくみられる現象であるが、原告の「謝罪広告」の請求はほとんど認められない。それは裁判官が、謝罪広告の実際上の効果と、被告の意に反する意見表明の強制、とくに表現の自由との権衡を考慮した「現実的判断」の結果である。

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