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2021年04月28日 07:00

2022年以降の世界経済秩序~米中激突と日本の最終選択(5)

 グローバリズムや自由貿易といった「幻想」は雲散霧消した。米国は左右に引き裂かれ、欧州は泥沼状態にある。一方で中国やロシア、東欧などでは全体主義の傾向が強まっている。2022年以降の世界経済秩序はどうなるのか。谷口誠元国連大使・元岩手県立大学学長に聞いた。陪席は日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・名古屋市立大学特任教授の中川十郎氏。話は谷口氏と親交がありノーベル賞候補だった2人の傑物、三島由紀夫氏と森嶋通夫氏にまでおよんだ。

元国連大使・元岩手県立大学学長 谷口誠 氏

20~30年後日本は大変な状況に

 谷口誠氏(以下、谷口) 世界3大投資家の1人と称されるアメリカの投資家、ジム・ロジャーズ氏は最近の日本について次のように述べています。

「1968年に世界第2位の経済大国になった日本は、50年以上の長きにわたって繁栄してきた。先の大戦、いやその前から大変な問題を何度も乗り越えてきた。しかし、現在、直面している重大な問題に対して、目を背けすぎだ。日本の借金は日々膨れ上がっている一方で、人口は減り続けている。出生数も大きく減少していて、数年先はともかく20~30年後には大変な状況になる。(略)私は日本の子どもたちにこう伝えたい。あなたが10歳だったら日本から逃げるか、AK-47(携帯用の自動小銃)を使えるようにしろと。生きているうちに社会の混乱から逃げられないからだ」。

出典:「ジム・ロジャーズ 大予測」(東洋経済新報社)、一部抜粋

    私はジム・ロジャーズ氏の予測はある面であたっていると思っています。日本は間違いなく衰退・没落の方向にあります。私のOECD時代の経験からいって、国連人口統計に基づく予測ほどたしかなものはないからです。

谷口 誠 氏
谷口 誠 氏

 しかし、今の政治家や財界人、国会中継などを見ていても、与党も野党も国内の政権争いに終始し、外交政策はもちろん、経済政策についても真の国益を考える議論が微塵もありません。OECDの実質GDP伸び率予測(2021年3月公表)を見ても、21年はG20の平均が6.2%であるのに対して日本は2.7%、22年は平均4.1%に対して日本は1.8%しかありません。ちなみに、21年の中国は7.8%、インドは12.6%、22年の中国は4.9%、インドは5.4%となっています。

 この困難を乗り切るカギとして、私は教育の重要性を考えています。それは、イギリスなどのヨーロッパの国々が典型ですが、たとえ人口が減っても優秀な大学や研究機関があれば、世界中から優秀な人材が集まってくるため、小さくなっても国は潰れないからです。現在もアメリカを除けば、世界の先進国は日本よりも小規模な国ばかりです。

 しかし、現在、日本の教育投資(政府の助成金)は、OECD加盟国の平均よりも大きく下回っています。国・公立大学の助成金も毎年のように減らされています。これでは家庭への負担が大きくなり、日本の子どもの将来にとって大きなマイナスです。

 大学の授業料ですが、ヨーロッパもロシアもほとんど無料に近く、スウェーデンなどは公立だけでなく私立大学も無料です。早稲田大学の教員時代に、フランスで行われた世界の大学学長会議(日本からは東大、早稲田、慶応など約50大学が参加)に出席したことがあります。授業料の話になったとき、日本の学長はほとんど発言できませんでした。日本の大学の授業料が、世界の国々と比べてあまりにも高いことをよく知っていたからです。

今も世界第2位だったころの感覚

 中川十郎氏(以下、中川) 谷口大使と私がニューヨークにいた約30年前(1980年代後半)は日本のGDPは世界第2位で、世界の約16%(第1位のアメリカは約25%)を占めていました。しかし、現在日本のGDPは世界の約6%で、ここ4~5年で約5%になると予測されています。28年にはインドのGDPが日本を抜くという話も現実味を帯びてきました。

 国民1人あたりのGDPでは、世界で20位以下まで下がり、すでに台湾、シンガポールにも抜かれています。しかし、政治家も財界人も、そして日本国民も、まだ世界第2位であったころの感覚に酔っており、厳しい現実から目を背け、直視することができなくなっています。今のままでは政治・経済に限らず、アカデミアなどあらゆる分野で衰退していきます。成長は一歩一歩ですが、転落は加速度がつくので速くなります。

(つづく)

【聞き手・文:金木 亮憲】


<プロフィール>

谷口 誠 氏谷口 誠(たにぐち・まこと)
 1956年一橋大学経済学部修士課程修了、58年英国ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジ卒、59年外務省入省。国連局経済課長、在ニューヨーク日本政府国連代表部特命全権大使、OECD事務次長(日本人初代)、早稲田大学アジア太平洋研究センター教授、岩手県立大学学長などを歴任。現在は「新渡戸国際塾」塾長、北東アジア研究交流ネットワーク代表幹事、桜美林大学アジア・ユーラシア総合研究所所長。著書に「21世紀の南北問題 グローバル化時代の挑戦」(早稲田大学出版部)など多数。

中川 十郎 氏中川 十郎(なかがわ・じゅうろう)
 東京外国語大学イタリア学科国際関係専修課程卒後、ニチメン(現・双日)入社。米国ニチメン・ニューヨーク本社開発担当副社長を経て、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授など歴任。日本ビジネスインテリジェンス協会理事長、中国競争情報協会国際顧問、日本コンペティティブ・インテリジェンス学会顧問など。著書多数。

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