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2021年04月28日 13:30

火災保険損害認定の闇~異なる鑑定会社で再取得価額の見積もりが同額(後)

 地震保険をめぐって保険会社が被害を低く見積もり支払額を抑えていた実態があったが、被害を受けた建物の所有者が提訴し、保険会社が非公開としていた鑑定基準用の存在が明らかになった画期的な判決について、以前Net IB News で報じた。
リンク: 「地震保険裁判において画期的な判決!非公開の基準表の存在を保険会社が公式に認める~被災者が勝訴(前)

 火災保険でも同様に保険金の支払いを低く抑える事例が明るみになり、青森県の賃貸住宅所有者が共済団体を相手取った訴訟の第1回口頭弁論が、3月15日に東京地裁で開かれた。

   筆者が、知り合いの建築関係者に「2社の再取得価額の見積もりがまったく同じ金額になることがあり得るのか」と尋ねたところ、「あまり考えられないことであるが、同一製品のトイレ交換だけといった単独の工事であれば、同じ工事金額になることが稀にあるかもしれない。しかし、1,000万円前後の住宅の改修工事であれば、意図的でなければまったく同じ金額になることはあり得ない」との回答であった。

 原告Aが訴訟提訴前に依頼した業者3社の再取得価額の見積もりが最高額と最低額で195万円の差があることからも、鑑定会社2社の見積もりがまったく同額であることの不自然さが際立っている。また、濃煙による煤(すす)の付着、現場検証などによる汚損のために修理・交換が必要として見積もりをしているユニットバスや住宅設備機器などの金額が低いことも、原告Aが作成した損害調査報告書(名称別)内訳の資料からわかる。

 見積もりについて、共済団体B側の代理人は、「今後、主張を行う」としており、共済団体Bの答弁書では「見積書の相当性は争う」「共済団体Bが依頼した鑑定会社D社による再取得価額の見積もりは、借家人の保険会社C社が鑑定を依頼した鑑定会社E社の再取得価額の見積もりをそのまま認定している。したがって金額が一致するのは当然である」としている。

 賃貸人加入の共済団体BがE社の見積もりをそのまま認定したことを認めているが、このようなことで、保険金は正当に鑑定されているといえるだろうか。そのE社の見積もりはどのように入手したのか。共済団体の独自の判断は不要なのであろうか。

 仮に、損保会社C社側の鑑定会社E社の見積もりをそのまま共済団体B側の鑑定会社D社が認定したのであれば、見積もりの合計金額が1円単位まで同じ金額となることは理解できるとしても、内訳が異なっているのはどのような理由によるのだろうか。「丸写しした」と思われないために、内訳を変えているのであろうか。共済団体B側の主張に一貫性のなさを感じる。

 原告Aは下記のように語っている。


万が一に備えて加入しているのに、常軌を逸した言動や対応が許せない

 今回の共済団体Bとその鑑定会社Dおよび損保会社C社とその鑑定会社E社は、虚偽説明や契約約款にない拡大解釈(共済団体Bは、焼破損割合の計算は契約者には公表していない「内規」であることと契約約款に記載していないことを認めているが、契約者に明示されていない内規なるものが契約の内容とならないことは明らかである)を行なっている。

 これは、建築業界の常識及び実務の通例からはかけ離れた鑑定であり、共済団体Bの担当課長からは「外部サッシは焼け焦げていても窓ガラスは割れていない。雨風をしのげるから交換は認めない。火災による悪臭も、あなた(原告)は感じるかもしれないが、他の人は感じないかもしれない。臭いは目に見えないから。煤の付着は、薬品などを使うなど自分で何とかしてください」などと、常識では考えられないことを言われた。

 そして、2社それぞれの弁護士から損害調査報告書が開示され、再取得価額の見積もりが1円単位まで同額の報告書に呆れた私は、「これではまともな交渉はできない」と思い知らされた。

 弁護士から損害調査報告書が開示される前に、私は共済団体B側の鑑定会社D社の担当者と電話で話し、「再取得価額の見積もりは1,000万円を超えている」と聞いていたので、920万円という金額に驚くと同時に、賃貸人側と賃借人という系統が違う保険団体・損保会社から依頼された再取得価額の見積もりが全く同額であることに強い不信感を抱いた。

「保険金不払い事件」に近しいものであるとの疑い

 2018年12月1日に火災が発生してから、訴訟提起まで間、保険会社、鑑定会社、保険会社・鑑定会社の代理人弁護士の計6人とそれぞれ話し合いを行った。しかし、ずさんで法律的にも根拠のない対応や、実務的には到底考えられない契約の解釈、修繕の見解、損害査定額及び内訳に対する疑念などから、05年以降噴出した、利益至上主義による保険事業者の「保険金不払い事件」に近しいものであると疑いを抱いている。同時に、これまで報道されないだけで、現在も保険金の不払いが行われているのではないかと感じる。

被害者(契約者)の泣き寝入りを待っているのでは?

 火事に遭った人は、いち早く新築や修理を検討するため、また時間とお金がかかり裁判まではできないと考えることから、泣き寝入りしている人も多数いるのではないか。

 共済団体Bに対しては、契約約款や損害査定方法の異議、保険金の支払いについての主張を書面で行いました。しかし根拠を示さず、「請求には応じられません」との回答だった。

 正当な理由もなく保険金の払い渋り、不適切な行為・不正疑惑、企業のコンプライアンス意識の低さなど、常軌を逸した言動や対応をなくすためにも泣き寝入りをせず、裁判を通じてこの問題に一石を投じたい。

 共済団体B及び損保会社C社との交渉が進まないため、火災の損害を復旧できないまま時間が経過し、当然、建物は火災当時のままで、この間の家賃収入はなくなった。賃借人側の損保会社C社に対しては、家賃減収分の損害賠償請求をした。


 共済団体や鑑定会社の関係が複雑であるが、原告のAが作成した下記の資料を見れば関係を理解できる。

火災事故による共済金(保険金)請求の概要

 原告Aの代理人弁護士は「被告の共済団体Bは『追って主張を行う』としており、被告側弁護士が何を主張するのか現時点では不明。被告側の主張を確認して対応する」としている。

 次回の弁論期日は、本記事が掲載される4月28日だ。裁判の進展があれば、Net IB Newsで伝えていきたい。

(了)

【桑野 健介】

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