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2021年05月10日 13:30

韓国がワクチンの委託生産拠点として浮上(前)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 米バイデン大統領は、世界で新型コロナウイルスのワクチン配分が不平等になっていることを打開するため、WTO(世界貿易機関)で提案された期間限定でのワクチン特許の一時放棄を支持することを表明。このため、多くの韓国製薬会社はワクチンの委託生産に関心を示し、市場に参入しつつある。今回は、ワクチンなどバイオ医薬品の受託生産ビジネスであるCMO(医薬品製造受託機関)について取り上げたい。

ワクチンに関する最近の動向

 ワクチンの接種が、世界各国で進んでいる。ワクチンの接種が最も進んでいる国はイスラエルで、国民の約60%以上が接種を終えた状況である。イスラエルについで米国、イギリスなどもワクチンの接種が急ピッチで進み、集団免疫の形成に対する期待が高まっている。

 一方、韓国や日本などのアジアのワクチン接種状況は少し遅れた感が否めない。韓国では、ワクチン接種が2月26日からスタートし、ワクチンを1回でも接種した人の割合はようやく国民の3%を上回った。

 このような中、各国がワクチンを奪い合うような状況になり、批判が高まっている。ワクチンを確保できる国は一部の先進国に集中し、ワクチンの配分が不公平になっているからだ。その背景にはさまざまな理由があるが、モデルナとファイザーのワクチンは、保管や流通においてコールドチェーン(最終消費地まで低温で配送する方式)のインフラ整備が前提となるため、どうしても先進国への配分が先にならざるを得ない。

 このようなワクチン配分の不公平を打開するため、米国・バイデン大統領はワクチンの特許権を期間限定で特許権者に放棄させ、ワクチンの生産を増やし、新型コロナウイルスの感染拡大を早く終息させたいという意思を表明した。

 もちろん、特許権者は猛反発している。一方、韓国は新薬の開発では先進国に比べて遅れを取っているが、今回ワクチンの特許が開放されれば、ワクチンの委託生産に強みを発揮し、韓国製薬業界にとって新しいチャンスの到来となる可能性がある。

ワクチンとは

 ワクチンには、「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類がある。生ワクチンとは、ウイルスの病原性を弱めたもので、不活化ワクチンとは、病原性をなくしたウイルスの一部を使うものだ。

 ウイルスには、人の免疫が異物として感知する部分がある。そのため、いずれのワクチンも人の免疫が感知する部分を残してウイルス感染前に人に接種し、免疫細胞にウイルスを覚えさせておき、いざウイルスが侵入してきたときにウイルスを攻撃する仕組みだ。ところが、新型コロナウイルス対策用のワクチンは従来のワクチンとは異なり、ウイルスの遺伝子を細胞に入れることによって、ウイルスのタンパク質をつくり免疫を発生させる。

ワクチンの委託生産とは

 ワクチンなどのバイオ医薬品は、細菌やウイルスといった生物を基につくられている。その構造は複雑であるため、化学的に合成される従来の医薬品と比べて、製造工程がとても複雑だ。

 バイオ医薬品を生産するためには、大規模な生産設備と約250項目以上の厳しい品質管理試験が求められる。バイオ医薬品は巨額の設備投資が必要であり、品質管理も厳しいため、自社で直接生産するより生産を外部に委託することが多い。委託生産会社は顧客の依頼した通りに医薬品を生産し、納品する。

 世界的な調査会社であるFrost & Sullivan(フロスト&サリバン)によると、世界のバイオ医薬品受託生産(CMO)市場は 2019年に119憶ドル(約1兆2,900億円)を記録したが、年平均13.7%で成長し、25年には253億ドル(約2兆7,500億円)になると見込まれている。

 さらに、昨年発生した新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の受託生産市場が急拡大している。とくに、韓国の製薬会社、SKバイオサイエンスは昨年7月と8月にイギリス・アストラゼネカや米国・ノババックスとワクチン受託生産契約を締結し、注目された。なお、受託生産分野における世界最大手はスイスの製薬会社ロンザである。

(つづく)

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