2024年05月03日( 金 )

【凡学一生の優しい法律学】小室家バッシング報道の違法・犯罪性

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 『週刊文春』が最初に報道し、各報道機関が引用するかたちで拡散した、小室圭さんの母・小室佳代さんの遺族年金詐取疑惑報道に関して、ニッポン放送の5月4日配信の記事の犯罪性を以下に指摘する。

 当記事は、佳代さんに遺族年金詐取疑惑が存在することを前提にして、皇族出身(明治天皇の子孫)を売りにしている政治評論家・武田恒泰氏のニッポン放送番組での発言を掲載したものだ。

(1)佳代さんには、法的事実として遺族年金詐取の事実も疑惑も存在しない。これは最初に疑惑を報道した『週間文春』が故意または過失のいずれであったかは不明であるが、遺族厚生年金法の条文の明らかな誤解(意図的無視)に基づく。

(2)遺族厚生年金受給者の受給権の喪失規定は厚生年金保険法第63条にある。本件に関係するのは、その第1項第2号の

 二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。

 であり、とくにその括弧書きの内容(太字部分)である。

(3)年金受給権の成立や喪失要件の認定では、「生計同一」や「扶養関係」という実質的な経済的同一体関係(「事実婚」)にあることを重視する。佳代さんはこのことを知らず、「婚約関係」にあることで権利を失う要件に該当すると考えたからこそ、婚約の事実を世間に知れないよう内密にすることを元婚約者に依頼したのであろう。

 これは刑事法学でいうと、罪を犯そうという意図があって実行したが、犯罪の結果を生む可能性がない「不能犯」であり、有名な例が「子の刻参り」や「藁人形に鉄槌を打ち込む」である。そもそも権利を失う要件に該当しないため、人に知られないように隠したとしても、遺族年金詐取の実行行為とはならない。実行行為であることを前提とした「疑惑」という表現は道理に合わず、名誉棄損などの違法・犯罪である。

 「生計同一」の認定基準として、住民票で同一の住所であることをまず確認する。「扶養関係」は生活資金の定期的な提供があり、受領者がもっぱらその収入に依存して生活していることが要件である。事実婚と評価するには、この2つの要件を満たす必要がある。

(4)名誉棄損罪では、他人が述べた事実をそのまま第三者に伝播しても、最初に語った者と同じと見なされる。本件でいえば、ニッポン放送は、「言い出しっぺ」である『週刊文春』と同様に虚偽事実の公表に関する責任を負う。

 失権
厚生年金保険法第63条 遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき。
(以下、略)

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