2024年04月20日( 土 )

アイランドシティ、15年の回顧~まちびらきから都市高開通まで(前)

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渋滞緩和に期待がかかる「アイランドシティ線」開通

今年3月に開通した「アイランドシティ線」
今年3月に開通した「アイランドシティ線」
福岡都市高速「アイランドシティ出入口」
福岡都市高速「アイランドシティ出入口」

 3月27日、福岡高速6号線・臨港道路アイランドシティ3号線――通称「アイランドシティ線」が開通した。区間は、新たに供用開始された香椎浜JCTからアイランドシティ出入口までの約2.5km。福岡市立こども病院やセンターマークスタワーに近いアイランドシティ出入口から南下すると、香椎アイランドブリッジの近くから海上をまたいで香椎浜側にわたり、香椎浜ふ頭2丁目や香椎浜の海岸線の上部を走り、香椎浜JCTで福岡高速1号線と接続する。

 また、アイランドシティと香椎側とをつなぐ御島かたらい橋近くの上空を通る橋桁には「ISLAND CITY」の文字を入れることで、さりげなくアイランドシティへの“ゲート(門)感”も演出。このアイランドシティ線の開通により、アイランドシティから福岡市役所までの所要時間が以前より7分短縮されて約17分となったほか、九州自動車道・福岡ICまでは6分短縮されて約9分となった。

 アイランドシティ線は、福岡市東部地域の交通混雑の緩和および広域的な交通需要や港湾物流の増加、新青果市場の開場などにともなう交通需要に対応して、交通の円滑化を図ることを目的として整備されたもの。都心部方面などへ向かう通過交通の一部を流入させることで、一般道路の交通量を減少させて交通混雑の緩和につなげる。また、都市高から九州自動車道や西九州自動車道などを介してアイランドシティから九州各地を直結し、高速性・定時性の高い広域的なネットワーク形成にもつなげるほか、災害時における緊急輸送道路の役割も担う。

 整備にあたっては、3事業(有料道路事業、港湾整備事業、街路事業)の合併施工方式によって実施。福岡北九州高速道路公社が香椎浜JCTから約1.4km区間の橋脚および橋桁整備のほか、全区間の舗装と道路附属物工事を担当し、国土交通省九州地方整備局が公社担当区間より先のアイランドシティ出入り口までの約1.1km区間の橋脚および橋桁整備などを、福岡市が用地補償のほか、高架下の公園整備(香椎浜北公園)などを担当した。16年度に事業化および橋脚の着工となり、約4年の歳月を経て開通。総事業費は約401億円。

  

 気が付けば、2005年12月の「福岡アイランドシティ」(以下、アイランドシティ)のまちびらきとほぼ同時期に筆者が島内に移り住んでから、早くも15年近くが経過した。かつては空き地ばかりでコンビニすらなかった島内には、いつの間にか大規模商業施設や公共施設、病院、娯楽施設などのさまざまな施設が充実。建設中のものも含めて5棟のタワーマンションが屹立するほか、東部には戸建の住宅街も広がり、島内には4,136世帯・1万2,017人(21年3月末現在/日本人のみ)もの住民が暮らす、立派な“まち”になった。そこにきて、いよいよ都市高も開通――。この15年を思い返してみると、その目覚ましいばかりの都市開発のスピードには、ただただ驚かされるばかりだ。

当初は島じゃなかった!?アイランドシティの開発経緯

 アイランドシティの造成のために、福岡市東区の博多湾奥の埋め立てが始まったのは、1994年7月ごろからだ。当時は、博多港に入る貨物船の大型化にともない、水深の浅い博多湾の海底を掘削して航路を整備する浚渫作業が積極的に行われていた。この航路整備や地下鉄・道路工事の際に大量に出る土砂の活用法を考えた末に、現在のような「人工島」をつくるという案が生まれたという。

東側には閑静な住宅街が広がる
東側には閑静な住宅街が広がる

 実はアイランドシティは、スタート時点から今の人工島というかたちで計画が始まったわけではない。1978年時点での港湾計画では、香椎潟および和白干潟の全面を埋め立てる予定となっていた。しかし、その2つの干潟がクロツラヘラサギなど個体数の少ない鳥たちの生息地となっていたことや、海の中道・志賀島エリアへの新しい交通ルートの形成などを目的として、89年7月に博多港港湾計画を改訂して、干潟の埋め立てを人工島形式に変更。94年7月に埋め立て工事が着工し、2002年10月には臨港道路アイランドシティ1号線と都市計画道路海の中道アイランド線の2本の道路に加えて、香椎アイランドブリッジと御島かたらい橋、海の中道大橋の3つの橋が開通。島内に上陸できるようになった。03年9月には、国際コンテナターミナルの一部が供用開始。現在に至る物流拠点としての機能も稼働し出した。

 そして埋め立て工事開始から約11年が経過した05年12月、まちづくりエリアである「照葉のまち」の住居への入居開始によって、アイランドシティは晴れてまちびらきを迎えた。島内は、南北に走る臨港道路アイランドシティ1号線を境に東側と西側で異なる開発が進められ、東側が住宅地や産業用地および公園などで構成される191.8haの「まちづくりエリア」(香椎照葉地区)、西側が埠頭用地や港湾関連用地などで構成される209.5haの「みなとづくりエリア」(みなと香椎地区)となっている。

 こうしてアイランドシティは、異なる性格をもった2つのエリアを擁する人工島としてスタートした。

(つづく)

【杉町 彩紗】

(中)

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