2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

アイランドシティ、15年の回顧~まちびらきから都市高開通まで(中)

車・バス頼みの交通事情、幻に終わった鉄道路線

 冒頭に述べたアイランドシティ線は、その整備目的の1つとして、島内の人口増加にともなう慢性的な交通渋滞の緩和が挙げられている。

 約1万2,000人(3月末現在)が暮らすアイランドシティだが、島内に鉄道路線は通っていない。最寄りの鉄道駅であるJRの千早駅や香椎駅、西鉄の香椎駅や香椎宮前駅までは、いずれも徒歩で30分程度はかかるため、通勤や通学での鉄道利用は、あまり現実的ではない。裏技的に、歩行者・自転車専用の「あいたか橋」を通れば西鉄・香椎花園前駅まで徒歩約20分で着けるが、吹きさらしの海上橋であるため、天候や時間帯によっては通行に支障をきたしてしまう。

 必然的に、住民の車やバスの利用率が非常に高いのだが、これまで島外に出るための橋は3本しかなく、朝夕の通勤ラッシュ時にはイオンモール香椎浜周辺で交通渋滞が頻発。住民たちは悩まされ続けていた。

 今回開通したアイランドシティ線も、出入口がみなとづくりエリアに面しているために、直接的な恩恵に与る住民はそれほど多くない。ただし、大型トラックなどの貨物車両の一部がアイランドシティ線に流れたことで、一般道の交通渋滞が緩和される効果が見られたことや、大型トラックなどの通行頻度が減ったことで、一般車両の運転手にとっての走りやすさの向上につながったとはいえるだろう。それでもなお、継続的な人口増も相まって、香椎浜エリアの完全な渋滞解消は難しく、今後も課題として残り続ける。

 交通面では、19年3月に西鉄「アイランドシティ自動車営業所」が新設され、その開業に合わせて利用頻度の高い博多・天神・千早行のバスが約4割増便された。同年7月からは、130人乗りの連節バス「Fukuoka BRT」も運行している。また、同年4月からは、西鉄が運営するオンデマンドバス「のるーと」が試験運行を開始した。当初は1年間限定での運行予定だったが、利用者の好評につき1年延長され、さらに22年4月下旬までの2回目の延長も決まった。

 このように、アイランドシティ内においては西鉄によるバス事業が幅を利かせる一方で、電車利用への不便さは変わっていない。実は、かつてアイランドシティまで鉄道路線を延伸する構想もあった。そのときの構想では、西鉄・香椎~香椎花園前駅間から分岐させるかたちで鉄軌道を延伸し、アイランドシティ内に駅を2つほどつくるというものだった。当時試算されていた総事業費は約250億円。だが、「手法や採算性の観点から実現の可能性は厳しい」(07年9月、西日本新聞報道)との理由などから頓挫し、いつの間にか“幻”となってしまった。今後も、住民がバスに頼らざるを得ない状況は、変わりそうにない。

ゼロベースだから可能な緑豊かな優れた都市景観

大きな修景池を中心とした「アイランドシティ中央公園」
大きな修景池を中心とした「アイランドシティ中央公園」

 島という地理的な制約もあって、交通インフラ面においてはまだ整備が不十分な部分も多々ある。しかし一方で、人工島という外界から隔離され、新設されたエリアだからこそ、良い意味で他エリアの影響を受けずに、うまく整備が進んでいる部分もある。それが、島内を南北に貫くグリーンベルトに代表される、緑豊かな都市景観・環境面だ。

 アイランドシティの緑の象徴としては、05年9月から開催された第22回全国都市緑化ふくおかフェア、通称「アイランド花どんたく」でのメイン会場となった「アイランドシティ中央公園」だ。公園内には、アイランド花どんたくでパビリオンとして利用された、建築家・伊東豊雄氏が設計した体験学習施設「ぐりんぐりん」のほか、園内の中央部には巨大な修景池があり、その周りを芝生広場や園路が取り囲んでいる。こうした巨大な公園は、同じ福岡市内の代表的な公園である大濠公園を彷彿とさせるし、島内中央部の大型公園という点では、ニューヨーク・マンハッタン島のセントラル・パークも想起させる。

 さらに、市総合体育館の横などを通る広大なグリーンベルトや、アイランドシティ外周緑地、北側エリアで整備が進められる予定の「アイランドシティはばたき公園」など、島内には多くの緑が植えられている。

 また、島内では電線地中化による無電柱化が徹底されていることや、東側の沿岸部は低層の戸建エリアとし、中央部に行くにつれて次第に高層のマンションエリアとなるような住宅配置など、景観・外観整備においては、市内でも格別の配慮が取られているように思われる。

 こうした極めて計画性の高いまちづくりが行えるのも、もともと何もなかった海上に、ゼロから新たな都市をつくることができるという、アイランドシティならではの地理的特性だといえよう。18年10月には、「福岡アイランドシティ照葉のまちづくり」が、他都市の模範となる優れた成果を上げた都市・地域・事業などを表彰する「アジア都市景観賞」を受賞した。これは、アイランドシティで進められている、環境共生や安全・安心面、良好な地域コミュニティ形成などの先進的で優れたまちづくりが評価されたものだ。

 こうした優れた景観や緑豊かな環境もあって、アイランドシティ内の住民だけでなく、近隣エリアからも多くの人々が、散歩やランニングで訪れることが多い。なかでも、13年3月に開通した海上遊歩道「あいたか橋」を通って、香椎浜とアイランドシティを一周する定番のルートは、約5.1kmという適度な距離と、島と橋に囲まれた海を眺めながら気持ち良く走れる起伏の少ないコースとあって、昼夜問わず人が行き交う人気ぶりだ。昨年4月に、第1回目の緊急事態宣言が発出された自粛期間中は、健康志向も相まって、普段よりも多くの人がランニングを行っていたのを記憶している。こうした、多くの人に親しまれ、「歩きたい」「走りたい」と思わせる優れた景観や環境が、アイランドシティの優れた点として、この先もずっと維持されていくことを期待したい。

海上遊歩道「あいたか橋」
海上遊歩道「あいたか橋」

(つづく)

【杉町 彩紗】

(前)
(後)

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