2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

アイランドシティ、15年の回顧~まちびらきから都市高開通まで(後)

増加が相次ぐ人口・児童数、市内初の小中一貫校の特徴

 アイランドシティのまちびらきが行われたのは05年12月だが、このとき島内の住宅地のなかで、最も早い段階から整備されたのは、香椎照葉1丁目および2丁目だった。当時、アイランドシティ住宅開発事業の事業者となっていた積水ハウス(株)の開発事業概要によると、約18haのエリアに、戸建住宅236戸、集合住宅1,178戸、賃貸住宅100戸の総戸数1,514戸を開発。このエリアに移り住んだ住民が、いわばアイランドシティの最初の住民となった。また、ここに暮らす子どもたちが、新設された福岡市立照葉小中学校(小学校は07年4月開校、中学校は翌08年4月開校)の1期生となった。

センターマークスゲート(左)とセンターマークスタワー(右)
センターマークスゲート(左)とセンターマークスタワー(右)

 アイランドシティ内ではその後、アイランドタワースカイクラブ(08年8月竣工)やアイタワー(16年3月竣工)、センターマークスタワー(19年1月竣工)、現在建設中のアイランドシティオーシャン&フォレストタワーレジデンス(W棟:22年2月竣工予定、E棟:23年2月竣工予定)など高層のタワーマンションが相次いで建てられたほか、香椎照葉7丁目での新たな戸建開発もあって、人口増加が続いている。

 こうした人口増による児童数の増加にともなう小学校のキャパシティ不足の解消のため、19年4月には照葉小中学校と一部特別教室を共有するかたちで、照葉北小学校が開校。だが、それでも追い付かず、早くも同年12月にはさらなる校区分割の方針が決定し、24年度にはまた新たな小学校が開設される予定だ。島内にはまだ開発の余地が残されているところを見ると、今後も新たなマンションが建設されていくであろうことは想像に難くない。となれば、小・中学校のさらなる増設は免れないだろう。

 なお、筆者の母校でもある照葉小中学校は、福岡市初の「施設一体型小中連携校」である。校内を歩けば、私服の児童(小学生)と制服の生徒(中学生)が同じ空間にいるという、他校では見かけない光景を目にする。同校では、小学校と中学校の機能が一部合併しているが、これは、中学生に上がるタイミングで頻発する不登校の増加や学習意欲の低下、いわゆる“中1ギャップ”を防ぐことを目的にしたものだ。小学5・6年生ごろから、中学校教員と触れ合う機会が増え、図工や音楽の時間には、実際に中学校の美術・音楽担当の教員が教えるという、教科担任制が導入されている。

 また、教員だけでなく、小学校1年生から中学校3年生までの9学年を縦割りにして行うグループ活動や、小学5年生と中学1年生が共同で行う宿泊研修「自然教室」など、小中をまたいだ学年間で行う活動も多い。すべての児童生徒に当てはまるものではないが筆者の実感として、中学生という大きな環境の変化に対して手厚いサポートがあるのは、思春期という多感な時期にはありがたいものだった。

次々とオープンする魅力ある各種施設

 まちびらき当初、アイランドシティ内には住宅販売関連以外の目立った施設はなかった。だが、それから15年が経った現在、さまざまな施設が集まりつつある。

 14年11月に移転・開業した福岡市立こども病院は、もともと中央区唐人町にあった小児専門の高度医療機関。広い道路と十分な敷地、ドクターヘリ用のヘリポートをつくることができることから、老朽化などの問題を抱えていた同院の移転先としてアイランドシティに白羽の矢が立ち、移転・開業に至った。15年6月には、博多区吉塚から相生会「福岡みらい病院」が移転・開業するほか、以降も小規模の医院・クリニックなどが次々と開院し、住民への医療サポート体制が充実した。

 15年8月には、温浴施設「照葉スパリゾート」がオープンしたほか、16年2月には新青果市場「ベジフルスタジアム」が移転・開場。16年3月にはアイランドシティ内で初の大型食品スーパーとして、フードウェイアイランドシティ店(20年3月にアイランドアイ照葉店に移転)が開業した。

 そして18年2月には、スーパーセンタートライアルアイランドシティ店が開業。同店の特筆すべき点として、AIを使って流通における問題を緩和・解消する実店舗「スマートストア」の実証実験が行われていることが挙げられる。タブレット決済機能付きレジカート導入による決済のスマート化や、店内に設置されたAI搭載のスマートカメラによる来客の行動の可視化、商品の残量把握、顧客の商品接触傾向の分析など、AIを活用して店舗運営とマーケティングの効率化を図っている。

 ほかにもプロバスケットボールチーム「ライジングゼファーフクオカ」の本拠地である福岡市総合体育館「照葉積水ハウスアリーナ」(18年12月開館)や、商業施設や劇場、MICE施設、ホテルなどで構成される複合施設「island eye(アイランド アイ)」(20年3月開業)など、さまざまなジャンルの施設が続々とオープンした。15年前には想像もつかなかった光景に驚くばかりだが、まだまだ島内には開発の余地が十分残されている。今後も、さらなる魅力ある新たな施設が誕生してくるだろうことを思えば、ただただ胸が躍るばかりだ。もはやアイランドシティは、かつてのような“コンビニすらない、何もない島”ではない――。

福岡市総合体育館「照葉積水ハウスアリーナ」(左)と建設中の「オーシャン&フォレスト-タワーレジデンス」(右)
福岡市総合体育館「照葉積水ハウスアリーナ」(左)と
建設中の「オーシャン&フォレスト-タワーレジデンス」(右)

福岡の最先端を走る未来に向けたまちづくり

 そんなアイランドシティだが、21年の公示地価は10万8,000円/m2(香椎照葉2-3-90)となっている。市内で同じ埋立地であり、よく比較対象として挙げられる早良区百道浜の公示地価が37万2,000 円/m2(百道浜4-23-2)であることと照らせば、まだまだその土地の価値は、市内中心部などにはおよばないようだ。変動率も、直近の21年度こそアイランドシティが上回っているものの、百道浜エリアは過去10年近くもコンスタントに伸び続けており、トータルではまだ敵わない。とはいえ、アイランドシティでの公示地価調査は3年前に始まったばかり。今後の伸びに期待したいところだ。

 これまで述べてきたようにアイランドシティは、交通インフラの面や、急激な人口増による小中学校のキャパシティ不足など、さまざまな課題も抱えている。だが、そうはいっても、まだまだ開発・発展の余地が多く残されているのが、アイランドシティの強みであり、希望だ。前出のスマートストア「トライアル」やオンデマンドバス「のるーと」のように、さまざまな実証実験を行うにあたって十分な人口を抱え、島という立地から管理もしやすい。

 福岡市全体での15歳未満の割合は、人口の13.5%である一方で、アイランドシティ内の照葉校区では30.7%と高い割合を占めている。65歳以上の割合を見ると、福岡市が21.6%であるのに対し、照葉校区は5.1%となっており、その人口構成は、小・中学生世代の子どもをもつファミリー層が多く居住する、市内でも比較的若い層が多く暮らしているエリアだといえよう。

 また、アイランドシティ内の住宅は賃貸ではなく分譲が多いため、住民の多くは比較的長く住み続ける傾向にある。急激に住民が入れ替わることなく、かつ住宅を購入できる程度には所得もある。まさに、実証実験などを行うには、うってつけのエリアだ。

 そうしたエリア特性に注目し、福岡市でも先進的なまちづくりを行う「FUKUOKA Smart EAST」構想の対象エリアとして、東区・箱崎キャンパス跡地とともにさまざまな開発や実証実験を進めようとしている。最新技術の導入や新しい店舗の進出など、福岡の最先端を走るアイランドシティはこれからも、私たちに未来に向けたまちづくりを見せ続けてくれるだろう。

(了)

【杉町 彩紗】

(中)

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