2021年12月03日( 金 )
by データ・マックス

YouTubeで横行するファスト映画、消失する億単位の需要

氾濫するファスト映画

スマホ 動画視聴 イメージ 動画共有サービスYouTubeでは、ファスト映画が氾濫している。ファスト映画とは、映像や静止画を無断使用し、字幕やナレーションを付けて物語の内容を明かす10分程度の映画の紹介動画(ネタバレ動画)。

 短時間で過去の名作や人気作の内容を知れることもあり、話のネタとして映画を抑えておきたいライトな層に人気となっている。しかし、実際に動画を見てもらえればわかるが、ファスト映画で使用されている映像・画像は「引用の範疇」を越えており、著作権法に違反している可能性が高い。動画投稿者のなかには広告収入を得ている者もいるが、制作者が訴えれば、アカウントのBAN(収益化剥奪)は避けられないだろう。

 短編作品をのぞけば、映画の上映時間は大抵1時間30分~2時間。大作ともなれば、2時間越えの作品も珍しくない。相応の時間を費やすことになるのは明白で、これを無駄と捉える層にとってファスト映画はありがたい存在といえるのだろうが、映画鑑賞はコト消費の側面が強い。ファスト映画で物語の概要を把握できたとしても、その映画の世界観を十分に体験したことにはならないのだ。

消失する億単位の需要

 ファスト映画の存在は、コンテンツ産業にとって有益とはいえない。たとえば、現在全国ロードショー中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、興行収入がすでに5億円を超えている。また、映画館で販売された同作品のBlue-ray販売枚数は5万枚を突破。劇場限定版で4億円超、通常版で9,500万円超を売り上げている。

 ファスト映画に関わらず、違法・侵害コンテンツは、こうした映画関係者が制作・興行・配給といった活動を続けていくために不可欠な需要を脅かすものだ。視聴する側も、そのことを忘れてはいけない。

 日本のエンタメコンテンツの普及や権利の保護に尽力する(一社)コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、HP上で「国際執行を行使して悪質なアカウント運営者を特定し、警察と相談し刑事摘発につなげ、「ファスト映画」を一掃していきたいと考えています」との声明を発表している。

時短の波はエンタメにも

 ただ、エンタメを楽しむ時間を短くしたい層が多いのも事実だ。サービス提供は終わってしまったが、配信作品の多くが10分未満の短編ということでも話題になった「Quibi(クイビー)」の登場は象徴的だった。音楽においてもここ数年、3分以内の楽曲が増加傾向にある。

 短期的な成果を求める風潮が強まっていった結果としての効率重視が、エンタメの楽しみ方にも影響をおよぼしているのではないだろうか。良くも悪くも忘れられない作品との出会いより、失敗しないこと(正しい選択)を重視する層にとって、エンタメは「つまみ食い」するくらいが丁度いいのかもしれない。

【代 源太朗】

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