2024年04月20日( 土 )

「住みよいまち・北九州」建設業を通じて実現へ

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(一社)北九州市建設業協会 代表理事  山本 慎一郎 氏

地域の守り手および社会インフラ整備の担い手

 ――貴協会の概要について、まずお聞かせください。

(一社)北九州市建設業協会 代表理事 山本 慎一郎 氏
(一社)北九州市建設業協会
代表理事 山本 慎一郎 氏

 山本 当協会は1963年3月に「北九州市建設業組合連絡協議会」として発足したのが始まりで、その後に数度の名称変更などを経て、2014年4月に現在の(一社)北九州市建設業協会となりました。

 当協会は発足からこれまで、地場の建設業界の育成・発展に向けて注力してきました。また一方で、公共の社会福祉増進に寄与しながら、行政とともに都市基盤の整備にも取り組んできています。門司区を除いた北九州市内6区を主な活動エリアとしており、会員数は今年4月末現在で145名。協会に属していると総合評価方式での点数が加算されるというメリットもあって、近年の会員数は微増傾向にあります。

 ――社会インフラ整備の担い手である建設業協会ですが、主な取り組みなどをお聞かせください。

 山本 おっしゃるように、当協会は北九州市の社会インフラ整備に最善を尽くすべく、北九州市との意見交換や情報交換を通じて適正な公共工事施工のために尽力してきました。たとえば、安倍政権下で地方の公共工事が増えた際に、北九州の建設業者がきちんと請けることができて入札不調が起こらないようにするために、北九州市の行政とも話し合いや情報交換を適宜行ってきました。

 一昔前までは、建設業協会なんていうと「談合団体なんじゃないか」と見られる時代もありました。ですが、今はもうそんな時代ではありません。行政に対しても、「今、建設物価はこんな状況ですよ」「民間の仕事の状況はこうですよ」というような情報交換を年2~3回行っているほか、「生コンがいついつから値上げすることになっています」などの大きな変化があったときは、必要に応じて随時行うなどして、行政ときちんと連携しながら、適正な公共工事の施工による都市基盤の整備に努めています。その一方で、そうした市との意見交換で得られた情報を会員企業にも適宜フィードバックするほか、会員企業にアンケートを実施して得られた情報なども市と共有していくなど、行政と各建設業者をつなぐ取り組みも行っています。

 そのほか、近年は気候変動による豪雨災害や相次ぐ台風災害など、激甚化する自然災害が国内の至るところで発生しており、ここ北九州市でも例外ではありません。そのため当協会でも、市との災害防止協定に基づく活動なども行っています。

 ――災害防止協定のお話がありましたが、災害発生時における活動についてお聞かせください。

 山本 当協会では11年7月に北九州市と災害防災協定を締結しており、その協定に基づいて災害発生時の応急対策や復旧措置を迅速かつ円滑に遂行することになっています。具体的には、災害時情報連絡網として門司区を除いた市内6区にそれぞれ幹事会社を定めており、災害発生時には幹事会社に各区役所からの要請が入ります。すると幹事会社は担当区の会員企業のなかで、「場所が一番近い」「適切な人員がいる」「重機をもっている」などからどの企業が最適なのかを判断して、応急復旧や見回りなどを要請する仕組みになっています。

 やはり我々地域の建設業者は、いざ災害が発生した際には最前線に立って、地域社会の安全・安心を確保する「地域の守り手」としての重要な役割を担っています。これからも市民の皆さまの安全・安心のために、行政ともしっかりと連携しながら、有事の際の活動に全力で努めていきたいと思います。

担い手確保に向け、産官連携で魅力発信

 ――建設業界においては、職人の高齢化や若者のなり手不足など、人材に関する課題も抱えていると思われます。

 山本 北九州市の建設業界においても高齢化が進むなか、とくに若者や女性の雇用および定着の促進などに重きを置きつつ、働き方改革を促進して魅力ある職場環境を整備することで、中長期的に人材確保および育成を進めていくことが重要です。しかし一方で、近年は当協会の会員企業各社において新卒者を採用できない状況が続いているという現状もあります。やはり若い人材が入ってこないことには、建設業界自体の存続も危ぶまれますし、当協会としても危機感を覚えていました。

 そこで「つなぐ建設産業2021プロジェクト」と題して、北九州市とも連携しながら建設の魅力を伝えていく産官連携の取り組みをスタートさせました。これは我々協会が学校と会員企業とを“つなぐ”役割をはたしていくもので、具体的には市内の大学や工業高等専門学校、工業高校などの建設関連の学校向けに、出張授業や説明会、生徒との座談会などの実施を想定しています。また、協会としてはこれまでにも、高校生および大学生を対象にした若者の職業観の醸成や将来の地元就職につなげることを目的としたイベント「北九州ゆめみらいワーク」に参加し、会場にブースを設けて若者に建設の魅力を伝えていく取り組みなども行っています。新卒者だけでなく、U・Iターンの中途人材も含めて、何とか業界に人を呼び込んでいきたいと考えています。

 ほかに、すでに建設業界で働いている若手技術者の育成についても、取り組まなければならないことは山積しています。もともとこの業界は「先輩の仕事を見て覚える」といった徒弟制度の色合いが濃いのですが、その昔ながらのやり方では、今の若い人たちはすぐに辞めてしまいます。せっかく入ってくれた若い人たちに何とか定着してもらうための取り組みも行わなければなりません。たとえば、九州ポリテクカレッジが行う研修会に参加して、一級建築士や一級施工管理技士などの資格を取得しようとする際に協会から補助金を出すほか、今後は会員各社の若い世代同士の仲間意識を育むべく、協会内にコミュニティをつくる構想もあります。こうした若い担い手の確保に向けては、今後、会員各社にアンケートを実施するなどしてニーズを汲み取り、業界としての働き方改革も踏まえて、具体的な活動に反映させていきたいと思います。

 ――最後に、北九州市の未来について、期待の声をお聞かせください。

 山本 ご存知のように、かつて五市合併によって九州初の「百万都市」となった北九州市も、今では人口95万人を下回るまでになってしまいました。しかしそれでも、製造業を中心に魅力ある企業が数多く存在し、九州2位の都市としてのポテンシャルは依然大きいと思います。

 市では従前から「高齢者に優しいまちづくり」を含めて、北九州市を「日本で一番住みよいまち」にするための取り組みを進めていらっしゃいますが、現在のようなコロナ禍においては、こうした市のまちづくり政策は、改めて良いものだと感じます。我々建設業の業界団体も、建設業を通じて「日本で一番住みよいまち・北九州」の実現をお手伝いしていきたいと考えています。

【坂田 憲治】


<INFORMATION>
(一社)北九州市建設業協会

所在地:北九州市小倉北区浅野3-8-1 AIM8階
TEL:093-521-678
URL:http://hokken.or.jp

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