2024年06月26日( 水 )

ウッドショック狂騒曲、住まいの本質問われる(前)

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不可避なグローバルの呪縛

 世界的な木材価格の高騰――いわゆる「ウッドショック」は、日本各地の工務店やハウスメーカーにとって悩みの種となっている。救世主として国産木材を担ぎ上げるも、日本における2020年の林業就業者数は6万人(総務省統計局公表「令和2年労働力調査年報」参照)。逼迫する国内需給を満たすには相応の時間が必要であり、自助努力と国(林野庁)からの補助金活用(緑の雇用事業)で就業者数を何とか維持してきた林業界にとって、新規就業者の確保や、一度業界を離れた経験者の復職促進は容易ではない。

 限られた国産木材を資本力のある大手が買い占めないよう、21年4月、林野庁は住宅業界に対して必要以上の買い付けを控えるように要請した。しかし、国産木材価格は輸入木材と同様に上昇を続けており、住宅建築に使用されるスギ正角、ヒノキ正角は21年1月時点でそれぞれ6万2,200円/m3と7万7,400円/m3だったものが、5月時点で6万5,400円/m3と8万3,700円/m3まで値上がりしている(農林水産省公表「木材価格統計調査」参照)。2階建ての一軒家(45坪)を木造軸組工法で建てるのに、29m3の木材が必要と仮定した場合、スギ正角で9万2,800円、ヒノキ正角で18万2,700円の建築費用が増加した計算になる。

 ウッドショックの背景にあるのは、アメリカと中国、二大超大国における住宅需要の拡大だ。中国においては、14年後半から貸出金利の引き下げや、頭金比率を下げるといった住宅ローン規制の緩和などが進んだことで、国民のマイホーム購入が加速。過熱する不動産市場を抑えるため、住宅の購入要件を厳しくする規制強化の動きも出てきているが、マイホームを求める動きは依然活発だ。

 コロナ禍の大ダメージから、凄まじい速度で経済回復するアメリカでは、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和によるゼロ金利政策や、非接触の徹底によるテレワークの普及が、都市部での賃貸生活から郊外でのマイホーム生活へと、国民のライフスタイルの変化を後押しした。

 こうしたアメリカと中国の国内事情が、カナダやスウェーデンなどの木材輸出国にとっての“お得意さま”を変えた。輸出に際して、J-Grade(日本仕様)と呼ばれる細かな調整が必要なく、大量に購入してくれるアメリカと中国。二大超大国の後塵を拝す日本は、再び仕入れルートの確保から始めねばならなくなったのだ。

 かつて「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪を引く」という二国間の関係性を表すたとえが話題になったが、それは多国間の関係性へと置き換わり、現在、木材価格の高騰というかたちで日本の住宅市場を圧迫している。ウッドショックは、グローバル社会の構成員として避けては通れない、グローバルの呪縛といえる。

感じた異変、福岡からの視点

1.【木材市場】

福岡市木材協同組合-(左)理事長・伊藤正隆氏/(右)副理事長・武田節氏
福岡市木材協同組合 (左)理事長・伊藤正隆氏/(右)副理事長・武田節氏

 ウッドショックについて、福岡市木材協同組合の伊藤正隆理事長((有)伊藤材木店・代表取締役)、武田節副理事長((有)たけだ材木店・取締役会長)らが情報を得たのは昨秋。複数のプレカット業者から「価格が上がる、商品がなくなる」という情報が寄せられるようになったという。ほどなくして実際に輸入木材が値上がりを始め、今年に入ってその傾向は顕著になった。

 たとえば市場の入札会においては、日頃はあまり顔を見せない買方も参加するほか、どの業者も躍起になって製品を競り落とそうとする傾向が見られた。また、今現在の需要がなくとも、手持ちの製品の不足を恐れて買いに走る業者の存在もあった。注文も多く、入札を待たずに売れるなど、市を開催するたびに高値が更新される状況が続いている。競ると価格が上がるため、市場としては塩梅が難しく、安定供給に赤信号が灯っているという。

 今後の見通しについては、「値上がりは続いており、まだ上が見えない。九州と関東とで2割近い価格差が生じていることからも、収束は見通せない」(武田副理事長)と語る。

 伊藤理事長は最後に、「今までの木材製品は安かった。今回のウッドショックを機に、木材業界を見直す動きが生まれ、今後の林業活性化につなげていければと思います」と締めくくった。

(つづく)

【内山 義之/代 源太朗】

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