2024年04月25日( 木 )

ウッドショック狂騒曲、住まいの本質問われる(中)

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感じた異変、福岡からの視点(つづき)

2.【ローコスト住宅ビルダー】

久留米建設(株) 代表取締役社長 高江 一久 氏
久留米建設(株) 代表取締役社長 高江 一久 氏

 久留米市を拠点に、ローコスト住宅を供給する久留米建設(株)が使用してきた木材は、ほぼすべて輸入木材だ。「以前は国産材のほうが輸入材よりも安価だったこともあり、国産材を使用していましたが、20年くらい前から価格差がなくなったため、輸入材に切り換えました」(高江代表)という。このほか、手に入りやすいという市場での流通量や強度の高さ、形状変化を起こしにくいという点も、輸入木材への転換を後押しした。

 ウッドショックの影響について、同社代表・高江一久氏は、開口一番「まさか輸入木材が品薄になり、入手困難になるとは思ってもみませんでした」と、仕入れ状況の急変ぶりに驚いたと話す。 

 「輸入木材については、今年2月ごろから『品薄になるのでは』との話が周辺でなされるようになりました。当社で実際に影響が出始めたのは、6月に入ってから。現在は、一部国産木材を使うことで対応しています」(高江代表)。 

 同社の住宅販売価格は平均で1,500~1,600万円。このうち、木材関連が占める割合は1割ほど。国産木材を使用するようになったことで、仕入れ値は1割ほど上がったが、決断の早さが功を奏し、木材は順調に確保できているという。 

 「当社は年間120戸ほど建築しますので、仮に仕入れ値が10万円上がると、年間1,200万円のコスト増になります。8月ごろにはウッドショックも落ち着き、現状よりは輸入木材も入手しやすくなるのでは、という声も聞こえてきますが、確証はなく、ウッドショックが収束したからといって、仕入れ価格は以前の水準に下がることはないと考えています」(高江代表)。

3.【輸入住宅ビルダー】

(株)プロデュース 代表取締役 吉田 茂利 氏
(株)プロデュース 代表取締役 吉田 茂利 氏

 福岡を拠点に注文住宅や医院建築、店舗建築の設計施工を手がけるほか、全国の工務店に幅広いデザインの提供を行う(株)プロデュースは、主にカナダ産の輸入木材を使用しているという。同社代表・吉田茂利氏はウッドショックの影響について、「仕掛品に関しては、自社で価格上昇分を負担するしかない」と話す。しかし、幸いにして現時点では輸入木材の確保に余裕がある様子だ。

 「長年取引している仕入れ業者から3月に、『6月末までにまとめて発注しておいたほうが良いですよ。7月以降は、(輸入木材の価格が)いくらになるかこちらでも正直読めない』と案内がありました」(吉田代表)。この案内を受けて早めの注文を行ったことが吉となり、輸入木材が入手できずに工事が滞るという事態にはまだ陥っていない。

 吉田代表は仕入れ業者から、20年5月時点では約490USドル(約5万3,000円)だった2×4Loの価格が、21年4月には約1,350USドル(約14万7,000円)と約3倍まで高騰したという結果を聞き、「輸入木材の争奪戦は激しさを増していき、仕入れられない工務店、ハウスメーカーも出てくるのではないでしょうか。大手による寡占化は避けられないと思います」と予想する。

4.【商業施設内装デザイン】

(株)司建装 代表取締役 村山 誠 氏

 九州全域で活動し、主に病院やホテルの内装工事を手がける(株)司建装は、スーパーゼネコンや地場ゼネコンを取引先にもち、設計を行う(有)ムラヤマシステムコーポレーションとの2社で司グループを形成している。2社の代表を務める村山誠氏は今回のウッドショックについて、「国産材か輸入材かは、施主の意向により指定されます。現在の使用状況は、おおよそ半々といった印象です。ウッドショックについては、仕入先から輸入ベニヤやメラミン材などの加工済み木材が入りづらくなると聞いた社員が、あらかじめ多めに手配しておきたいと私に相談してきたことで、その影響を感じました」と話す。

 同社は、下地材としてもよく使用されるラワン合板(ベニヤ板)3×6サイズの価格がウッドショック以前に比べ3割ほど値上がりしており、現在施工中の案件については合わせて値上げすることが困難なため、「施工方法の見直しといった創意工夫、営業努力で吸収するしかない」(村山代表)と、対応を模索している状況だ。

(つづく)

【内山 義之/代 源太朗】

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