ウッドショック狂騒曲、住まいの本質問われる(後)
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改めて林業を見直す
建築に携わる事業者を右往左往させるウッドショックは、マイホームの購入を考える消費者にとっても頭の痛い問題だ。しかし、これは国内林業について再考する機会ともいえる。
国産のスギやヒノキの価格が、これまで安すぎたという声は少なくない。手間をかけ、品質を向上させてきたのにも関わらず、価格は低く抑えられてきたからだ。まずは、日本の林業政策が補助金に依拠してしか成り立たなくなっている現状を、国産木材本来の価値に見合った適正価格の実現によって打破する必要がある。ウッドショックを、林業再生のきっかけとして捉え直すことで、林業就業者が生計を立てやすい方向に導いていくのだ。
また、国産木材に救いを求めるには、これまで伐採地の一部に以前からの植生を残す「保持林業」に対する考えも欠けていた。バイオマス発電の燃料となる木質チップ確保のために、大量伐採が進んでいるという現実が、それを証明している。木材供給の土台となる国内林業の再生は、森林保全、ひいてはSDGsの目標達成のためにも、向き合わなければならない課題といえる。
木造建築が変わるきっかけに
当面の間、ウッドショックは続くことが予想される。ある仕入れ業者は、「輸入木材の価格が、ウッドショック以前の水準に下落することはない。つられて価格が上昇した国産木材にしても同じです」と話す。木材高騰の収束を座して待つより、今回のウッドショックを、木造建築の在り方を変える契機にしたほうが建設的だ。そこで再び注目されているのが、「CLT」だ。
CLT(Cross Laminated Timber/クロス・ラミネイティド・ティンバー)とは、小角材を縦と横に交互に重ね合わせた分厚い板状の材料。既存の集成材と比較し、高い強度を誇り安定性に優れているほか、断熱性能も有しており、梁や柱だけでなく、壁や床などにも幅広く利用することができる、新しい木造建築材だ。
国土交通省もCLT普及に向けて積極的に動いており、2014年に「CLTの普及に向けたロードマップ」を取りまとめ、強度データの収集や、一般的な設計法の告示などを行ってきた。しかし、現状日本国内におけるCLT建築物は決して多くはないのが現状だ。
CLTによる建築は、S造やRC造に比べてコンクリートの養生期間が不要となる分、施工期間を短縮できる。また、RCよりも軽いため、基礎工事の簡素化にもつながる。このほかにも、基本的にパネルを組み合わせていくだけのCLTは施工が容易であり、外装・内装ともに構造材が見える状態で仕上げる「現(あらわ)し」が可能となるため、木目が見えて木の温もりを感じる落ち着いたデザインを採用しやすいといった特徴がある。
こうしたメリットがある一方で、普及が滞っている原因、無視できないデメリットとなっているのが「コスト」の問題だ。CLTに似た工法に「2×4工法」(※)がある。
※:家を建てる際に最も使用される「2インチ×4インチ」サイズの角材とベニヤ板などの合板を接合することで、壁や床、天井、屋根部分を組み立てていく工法(立方体をつくり上げていくイメージ)。
CLT同様に施工が比較的簡単であるほか、CLTと比べて材料となる木材が安価で仕入れられるため、その分CLTが不利な状況だったといえる。しかし、輸入木材・国産木材ともに価格が高騰している現在、コスト面における優位性はなくなりつつある。
価格面での差異がなくなると考えれば、前述のCLTのメリットが際立つ。また、声高に叫ばれている「持続可能な社会」という世界的な目標の達成においても、CLTは力を発揮する。丈夫なので部材として再利用もできるほか、断熱性能による省エネ効果も期待される。また、CLTには日本の人工林面積の約7割を占めるスギやヒノキが用いられるため、国内林業の活性化につながる可能性もある。
今回のウッドショックを通じて、木造建築における選択肢を広げることは、国内のハウスメーカーや工務店にとっても、活路を見出すチャンスとなるはずだ。そして、エンドユーザーにとっては、「なぜ家を建てるのか」という、住まいの本質を見直す機会にもなるだろう。
(了)
【内山 義之/代 源太朗】
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