2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

同一労働同一賃金、社内での点検・検討基準は?

岡本綜合法律事務所 岡本 成史弁護士
岡本弁護士

 前回は、今年4月1日から中小企業でも、同じ企業で働く正社員と短時間・有期雇用労働者(以下、パート・有期労働者)との間で不合理な待遇差を設けることを禁止する、いわゆる「同一労働同一賃金」が適用されることから、社内の制度の点検を行う必要があることをご紹介しました。今回は、具体的に検討・点検の基準について、ご紹介いたします。

 まず、パート・有期労働者を雇用されている場合に、正社員と「職務の内容」および「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じパート・有期労働者がいるかを確認します。具体的には、次の点を順番に検討し、正社員とパート・有期労働者とが「同じ」か「異なる」かを確認していきます。

(1)職務の内容

a 業務の内容
i 業務の種類(職種)
 販売職、管理職、事務職、製造工、印刷工などといった従事する業務のこと
ii 従事している業務のうち中核的な業務
 職種を構成する業務のうち、その職種を代表する中核的なもの、職種に不可欠な業務のこと。たとえば、キッチンスタッフという職種における調理、メニュー作成など

b 当該業務にともなう「責任の程度」
 業務上の権限の範囲・程度等のことであり、たとえば、 単独で決裁できる金額の範囲、管理する部下の人数、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応、売上目標などの成果への期待度など

(2)職務の内容・配置の変更の範囲

 転勤、昇進などの人事異動や本人の役割の変化など(職務内容の変更を含む)の有無や範囲のこと

   たとえば、同じキッチンスタッフという職種でも、パート・有期労働者は調理業務のみを行い、正社員はこれに加えてメニュー作成や人材育成も業務である場合は、前記iiが異なることになりますし、中核的業務まで同じでも、正社員は急な欠勤者が出た場合の対応を求められるが、パート・有期労働者は求められないという場合には、bが異なることになります。また、bまで同じでも、正社員は転居をともなうような場所にある店舗への異動もあるが、パート・有期労働者は自宅から通える範囲での異動に限られる場合は、(2)が異なることになります。

 正社員とパート・有期労働者とで、(1)(2)が同じ場合は、均等待遇の対象となり、パート・有期労働者の待遇も正社員と同じ方法で決定する必要があります。それ以外の場合は、均衡待遇(不合理な待遇差別禁止)が求められますので、各待遇の「適用の有無」あるいは「決定基準」に「違い」がある場合には、それが不合理か否かを検討することになります。この場合、次の手順で検討することになります。

a 各待遇の「性質・目的」を確認・整理

 なぜ、その待遇を設けたのか、その待遇を労働者に支給・付与することにより、どのような効果を期待しているかといった待遇の「性質・目的」の内容を明らかにする

b 待遇の「性質・目的」を踏まえて、待遇に関連する考慮要素のどれに該当するかを判断

 考慮要素は、前記(1)職務の内容、(2)職務の内容・配置の変更の範囲に加えて、(3)「その他の事情」(成果、能力、経験、合理的な労使慣行労使交渉の経緯などが想定される)です。

c その考慮要素に基づき、「違い」を適切に説明できるかを検討

 次回は、個別の待遇について検討したいと思います。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

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TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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