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2021年07月22日 06:00

【コロナで明暗企業(9)】紳士服はるやまHDの“骨肉の争い”~創業者・父と長女が長男の社長に「レッドカード」(後)

 新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言で一気に広がった在宅勤務。在宅のテレワーク、リモート会議が浸透し、入社式はとりやめた。テレワークの普及が紳士服業界を直撃した。自宅で働くのにスーツは必要ない。大きな転換期を迎えた紳士服業界で、前代未聞の事態が起きた。「紳士服のはるやま」を展開するはるやまホールディングスで、創業者の長女が実弟の社長に「レッドカード」(退場処分)を突き付けたのだ。

「脚長スーツ」「アイシャツ」がヒット

 1994年に帰国した治山正史氏は、はるやま商事に入社した。大証二部に上場した年だ。商品部係長、社長室長、常務を経験した後、2003年に社長に就任した。

 正史氏の社長在職中、スーツ主体の紳士服業界には向かい風が吹いていた。05年、小池百合子環境相(現・東京都知事)が旗振り役となって「クールビズ」が誕生。11年に東日本大震災が起きると電力節約の観点から「スーパークールビス」として、ワイシャツの代わりにポロシャツを着るスタイルが広がった。

 紳士服専門店で靴やレディースの商品が売られているのは今や当たり前の風景だが、他社に先駆けて販売し始めたのは「はるやま」だ。また、主流となっているタイトなスーツを「脚長スーツ」の名称で売り出し、普及させたのも同社。最近では接触冷感の高機能ワイシャツ「アイシャツ」のヒットもある。

 08年の北京オリンピックでは、日本選手団のオフィシャルウエアを提供した。北京オリンピックのオフィシャルウエアの開発から生まれた商品は、現在までに約85万着の売上を記録している。

 その商品開発をリードしてきたのが、社長・正史氏だ。コロナ禍で、紳士服各社は「脱スーツ」に舵を切る。はるやまホールディングス(HD)は理容店やカフェを備えた新業態を出店する。

情報誌が内幕を報道

退場 イメージ はるやまHDで、創業者・治山正次氏-長女・岩渕典子氏と、長男の正史氏の“骨肉の争い”がなぜ起きたのか。外部からうかがいしれない内幕を、月刊情報誌『ZAITEN』(2021年7月号)が報じている。それによると、大株主の実姉が実弟の正史社長に「レッドカード」を突き付ける一因となったのが、正史氏の妻の弟である山本剛士元執行役員だという。

 記事では、「山本氏は19年に『取引先からの過剰接待や、その取引先と不明朗な決済が発生している』という匿名の内部告発を受けて自主退職した。だが、社内ではこの件に関して調査がなされなかったどころか、調査を求めた社員が相次いで左遷された。そうした異常事態に姉が創業家を代表して立ち上がったのだ」と説明。さらに、山本氏は退職後にコンサル会社を立ち上げたが、はるやま側はこの会社と業務委託を結び、20年度に1,500万円を支払ったという。

 違反行為が理由で退職した人物にコンサル料を支払うのは、普通では考えられない。“骨肉の争い”には、そうした要因があったのかと合点がいった。はるやまHDで起きた創業家間の壮絶バトルの第3ラウンドは避けられないだろう。

はるやまHD業績推移

(了)

【森村 和男】

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