2024年04月19日( 金 )

首尾一貫した菅首相の行動原理

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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「五輪と共に日本のコロナ感染は急拡大することになる」と警鐘を鳴らす7月21日付の記事を紹介する。

市民を犠牲にする五輪に市民が反対している。

市民は主権者である。

日本のことは日本が決める。

その日本のことを決める決定権者が日本の市民。

日本の市民は日本のことを決定する権限を有している。

政治家は市民を代表して市民の意思を実行する役割を担う。

政治家が指揮して政治家の意思を実現するのではない。

市民が政治的意思決定の主人公だ。

その市民が五輪開催に反対している。

最大の理由はコロナ感染が拡大していること。

コロナは日本において季節性インフルエンザ程度の被害しかもたらしていな
い。

この事実に基づく対応を示していれば大騒動を展開する必然性はなかった。

しかし、世界規模でのワクチン販売を展開する事情から、世界的な大騒動が展開された。

菅内閣はワクチン販売促進計画に参画した。

そのためにコロナ大騒動を展開する必要に迫られた。

現実にコロナ大騒動が展開され、ワクチンの大量販売が実施されている。

しかし、この利権を獲得することと東京五輪の利権を獲得することの両方を実現することは困難だ。

コロナ大騒動は五輪開催と相いれない。

五輪の利権を目指すならワクチン利権を放棄する必要がある。

ワクチン利権を目指すなら五輪を放棄する必要がある。

ところが強欲な菅首相はワクチン利権と五輪利権の両取りを目指している。

このことが根本的な矛盾の原点である。

国民全員がワクチンを接種しなければならないような大騒動が展開されてい
る。

折り合い悪く、丁度五輪開催のタイミングで感染拡大がピークを迎える。

国民全員がワクチンを打たねばならぬような重大感染症の感染が拡大しているということなら、五輪を開催している場合ではない。

コロナの最大警戒対象は変異株出現。

世界各地で新しい変異株が確認されている。

変異株は感染力を強め、毒性を強め、ワクチン有効率を引き下げることが警戒されている。

五輪開催は世界中から変異株を集積させる。

日本の杜撰な五輪組織委のザル検疫は変異株流入を全面的に推進している。

7月の4連休に際して菅内閣は感染拡大地から全国各地への人流拡大を一切制限しなかった。

五輪と共に日本のコロナ感染は急拡大することになる。

東京では五輪を優先して首都高の大幅値上げが強行され、市民は五輪大渋滞に直面している。

市民を踏み台にして五輪利権を守る。

これが菅内閣の基本姿勢。

同時に、安全性が確認されていないワクチン接種を強行し、多数の市民が失わずに済む命を失っている。

利権のみを追求する菅内閣に正当性はかけらもない。

そもそも菅内閣は国民の信任を得た内閣ではない。

その菅内閣が利権至上主義に走り、日本の市民に多大な迷惑を与えている。

天の網が機能するなら菅首相を絡め取らないわけがない。

台風6号が沖縄県地方を暴風雨に巻き込んでいるが、東京五輪に向けて台風8号、9号、10号が列を形成する状況にある。

台風の動向をいち早く教えてくれるのがWindyサイト。

https://bit.ly/3xWfIAX

7月26日から30日にかけて台風8号、9号が相次いで日本列島に接近する可能性がある。

民主主義の根幹は国民主権。

日本の主権者を踏み台にし、日本の主権者の意思を無視する菅首相に応分の天の裁きが下されることになるだろう。

政治の基本に立ち帰るべきだ。

政治の基本は主権者の意思に忠実であること。

権力行使の根拠は主権者である国民による厳粛な信託。

主権者の意思なしに為政者の行為は存立し得ない。

その主権者が命と健康の優先を示している。

為政者が主権者の意思を無視して国民の命と健康を損ねる行為を示すことは許されない。

菅義偉氏が五輪に突き進むのは自分自身の利益のため。

失態続きの菅義偉氏に残されたただ一つの逃げ道は五輪開催を強行して国民の心理の転換を待つこと。

これ以外に地位にしがみつく道は残されていない。

そのために、五輪開催を強行しようとしている。

本末転倒なのだ。

菅義偉氏が首相に就任したのは昨年9月。

五輪開催に照準を当てるなら、五輪までは感染抑止を最優先にすればよかっ
た。

そうしていればまったく異なる現状に遭遇していたはずだ。

しかし、菅義偉氏は首相就任からの10ヵ月間、感染抑止に力を注がなかっ
た。

逆に感染を拡大させる方策を実行し続けた。

その結果として現在の惨状がある。

感染抑止を最優先にするならGoto全面推進はあり得なかった。

変異株確認後、直ちに水際対策を強化すべきだったが、菅義偉氏は率先して水際対策をザル規制にした。

最大の失策は時期尚早の緊急事態宣言解除。

3月21日の緊急事態宣言解除も時期尚早。

6月21日の緊急事態宣言解除も時期尚早。

五輪開催を強行する、五輪を有観客開催にすることを優先して時期尚早の緊急事態宣言解除に突き進んだ。

Gotoに執着したのはGotoが観光業界利権施策だから。

菅義偉氏の施策はすべてが利権動機。

利権に結びつくものだけを選択して実行する。

五輪を推進するのも利権。

ワクチンを推進するのも利権。

Gotoを推進するのも利権。

水際対策をザル規制にするのも利権。

ビジネストラック、レジデンストラックの入国を停止しなかったのはこれが外国人労働力活用利権施策だからだった。

利権に通じる施策のみを推進する。

この点で菅義偉氏の施策は首尾一貫している。

しかし、そのために致命的な矛盾が生まれる。

ワクチンを推進するほど感染症問題が深刻であるとするのに五輪開催を強行する。

コロナ抑止が最優先課題であるのにGotoトラブル事業を全面推進する。

「国民の命と健康が最優先」と言いながらコロナ感染を拡大させる五輪開催を強行する。

支離滅裂になる。

問題の根源に、菅義偉氏が自分の利益を国民の利益よりも上位に置いていることがある。

菅義偉氏は国民の利益を下位に置いているのではない。

菅義偉氏は国民の利益をまったく考えていない。

民主主義政治の基本を欠落している。

このような人物を民主主義政治の頂点に置いてはいけない。

主権者である国民にとって不利益にしかならない。

菅内閣の支持率が3割を切り、菅義偉氏退場が秒読み段階に移行した。

日本の主権者は次の総選挙を通じて、どのような新内閣を発足させるのかについて、早急に具体像を固める必要がある。

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