2024年04月16日( 火 )

新型コロナ、自宅療養対象者拡大~医療崩壊への序章か?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

中等症者も自宅療養の対象へ

 菅総理は2日、総理大臣官邸で新型コロナウイルス感染症の医療提供体制に関する関係閣僚会議を開催し、陽性者の入院対象者を重症者などに限定する方針を決定した。自宅療養者の対象に、重症化リスクが低いとされる中等症患者が追加される(図1参照)。2日午後6時現在で東京都の自宅療養者数は1万2,161人。今回の決定でさらに自宅療養者が増加すると予想される。

 自宅療養者へのフォローアップを行う機関では、すでに対応に遅れが出ている。今回の方針決定によって、同機関はさらに負担と責任を課されるかたちとなる。

【図1】厚生労働省が発表している重症度分類
出典:厚労省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」

 以下、菅首相発表文(一部抜粋)

 「ワクチン接種の進行と、感染者の状況の変化を踏まえて、医療提供体制を確保し、重症者、中等症者、軽症者のそれぞれの方が、症状に応じて必要な医療を受けられるよう、方針を取りまとめました。重症患者や重症化リスクのとくに高い方には、確実に入院していただけるよう、必要な病床を確保します。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備します。

 パルスオキシメーターを配布し、身近な地域の診療所が、往診やオンライン診療などによって、丁寧に状況を把握できるようにします。そのため、往診の診療報酬を拡充します。家庭内感染の恐れがあるなどの事情がある方には、健康管理体制を強化したホテルを活用します。さらに、重症化リスクを7割減らす画期的な治療薬について、50代以上や基礎疾患のある方に積極的に投与し、在宅患者も含めた取り組みを進めます。」

出典:首相官邸HP

各機関はすでに限界に近い

 菅首相は発表のなかで「パルスオキシメーターを配布し、身近な地域の診療所が、往診やオンライン診療などによって、丁寧に状況を把握できるようにします」と述べているが、はたして十分な対応が行われるのだろうか。

 既報の通り、各保健所を含め、自宅療養者向けに健康観察や配食、パルスオキシメーターの配布などの支援を行う自宅療養者フォローアップセンターはすでに対応に窮している(参照:“若者”に押し付けられるコロナ「対策」と「対応」〜結局は自己責任?)。今後、自宅療養者がさらに増加すれば、事態がより深刻化するのは明白だ。

 厚生労働省によれば、東京都の入院患者病床使用率47%、重症患者病床利用率64%、宿泊療養施設居室使用率62%(更新7月28日)となっている。今回の決定で使用率が下がる可能性もあるが、急増する新規陽性者数を鑑みれば、今後重症者が増え、使用率が高まると考えるのが自然だ。

 今回の決定は、これまで危惧されてきた「救えたかもしれない命が救えなくなる」という、医療崩壊の状況に近づくリスクをはらんでいる。たしかにコロナによる死亡者は大幅に減少し、重症化しやすい高齢者の感染者数の割合も大きく低下している。しかし、それはあくまでも現状に過ぎない。問題は、若い世代でも重症化しやすい変異株が蔓延する事態になっても十分な対応ができてないこと。菅政権は常に後手に回ってきただけに、不安は募る一方だ。

 菅首相は自宅療養者への対応を強化するために日本医師会や医療機関に協力を要請するとしているが、緊急事態宣言同様、“一方的な要請”で相手任せにならない対応が必要といえる。

【麓 由哉】

関連記事