2024年05月19日( 日 )

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大韓貿易投資振興公社(KOTRA)福岡貿易館
館長 許 珍原 氏

 大韓貿易投資振興公社(通称:韓国貿易センター、KOTRA)は韓国・産業通商資源部(日本の経済産業省に相当)傘下の貿易促進・投資誘致などに従事する政府組織で、福岡貿易館は1987年に開設され、九州、沖縄、山口県を管轄している。コロナ禍により日本と韓国の往来が制限されるなか、同公社が行っている日韓企業へのサポートや九州―韓国経済関係、韓国経済・社会のコロナへの対応などについて同館長・許珍原氏に話を聞いた。

 ――スーパー、ディスカウントストアなどで販売されている韓国の食品などが増えています。

 許 韓国の食品・料理のニーズが増加し、主に東京または大阪で流通に従事していた企業が福岡に店舗を構え、事業を拡大するケースが増えています。とくに、日本で需要が増加する傾向にあるアイテムについて、独自ブランドを立ち上げる試みが増えています。

大韓貿易投資振興公社福岡貿易館 許 珍原 館長
大韓貿易投資振興公社福岡貿易館 許 珍原 館長

 市場開拓、物流についても同様に、まず東京で、それから福岡にという流れになっています。韓国料理店の新規オープンが福岡で増えていますが、同様に東京で成功してからという流れです。韓国系の大きな貿易会社が東京にあり、東京がハブ機能をはたして一括して輸入し、それが福岡に運ばれてくるというのが主流です。韓国から直接輸入している福岡の企業もありますが、まだ多くはありません。

 日本で販売されている韓国商品が増えているといっても、韓国で販売されている日本商品の数と比べたら大きな差があり、より多くの韓国商品が日本で販売されるよう、マッチングや拠点設立などの支援を引き続き行っていきます。

 近年の新しい動向については、東京などが中心になりますが、韓国企業の技術・サービスの質の向上にともない、ゲノム・遺伝子分析とそのサービス提供や機器販売、IT技術やビッグデータ、A I を積極的に取り入れたマーケティングソリューション企業の日本進出が目立ちます。日本企業と互角以上の競争力を武器に、比較的リーズナブルな価額で日本の顧客にサービスを提供しています。これらの企業の目には、日本はIT化が比較的遅れていると映っており、潜在的なニーズがあるとみているのでしょう。

コロナ禍がもたらす韓国の経済・社会の変化

2019年の商談会
2019年の商談会

 ――コロナにより韓国国内の事業環境はどう変わりましたか。

商談会の様子(2019年)
商談会の様子(2019年)

 許 コロナ禍で非対面市場が著しく成長しています。韓国ではオンラインショッピングが中高年層にも浸透していることを踏まえ、企業はライブコマースにおける新技術・サービス開発に取り組んでいます。キオスクなどの無人注文・決済のツールおよびサービスも拡大しています。配送サービスにおいても、接触を最小化した購買―決済―流通―配送のポータルサービスの開発が積極的に行われています。

 ――DXの進展はどうでしょうか。

 許 業種別に未来型自動車、家電、流通など主に大手企業が主導する顧客サービスの接点分野でDXによる革新が進行中です。サムスン電子のSmartThingsやLGエレクトロニクスのThinQ(アカウントに連動、各種電子機器を操作するサービス)は以前から実証実験が行われていましたが、コロナ禍で普及が加速しています。ただ、中小企業では大手企業のこれらのサービスとの互換性を確保することが難しく、現時点ではDXを推進する余裕はありません。

 政府は業種別に産学官連携によってDXに相互協力できる空間と機会を提供し、市場参入のハードルを低くするための「Digital Big Push」政策を策定中です。電気自動車、新素材、ウェアラブル、分散取引、バイオ素材、ヘルスケアなどの産業内・間の共通課題を解決するために、「産業データプラットフォーム」「産業デジタル連帯ネットワーク」を構築し、成果のシェア、バリュー・チェーンの連結を促します。

 ――韓国政府の今年の経済成長の見通しはどうでしょうか。

 許 韓国政府は6月28日、21年度下半期について、グローバル経済のV字回復の状況などを反映し、輸出・投資の回復により、成長率4.2%を達成するとの展望を示しました。その実現のため、財政拡大を中心とした経済振興策を引き続き強化していきます。内需回復のため、金融規制緩和、自動車や家電などの購入へのキャシュバック拡充、税制上の減免適用範囲の拡大などを実施し、半導体・バッテリー・ワクチンの3分野のR&Dに最大40~50%、施設投資には最大10~20%の税額控除を実施します。「デジタル・ニューディール」「グリーンニューディール」には22.5兆ウォンの予算を編成しています。

 ――最後に読者にメッセージをお願いします。

 許 日本において韓国の食品・化粧品・音楽・ドラマおよび関連グッズ、IT関連サービスを求めるニーズはますます大きくなっていくでしょう。「韓国製品の輸入を始めたい」「この製品をつくっているメーカーを探してほしい」などの案件がありましたら、お気軽にご相談ください。関連企業のリストアップ、オンライン商談のセッティング(通訳含む)、商談後のアフターフォローなどのサービスを無料で提供しています。

 今回のように景気が悪い時期に、韓国政府は当公社の役割を重視し、予算・人員を拡充しています。両国の人的往来が再開されるころには、企業の往来をサポートするとともに、韓国商品を宣伝するイベントをオンライン、オフラインのハイブリッドで開催する予定です。

(了)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
許 珍原
(ホ・ジンウォン)
1967年生まれ。大韓貿易投資振興公社入社後、オマーン、フィリピン、リビア勤務などを経て、2019年福岡貿易館館長に就任。

(前)

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