2021年12月02日( 木 )
by データ・マックス

産地直売、時代の要求と裏事情 規模拡大に立ちはだかる高い壁(前)

我が国のスーパーマーケットの青果売り場はどこも似たり寄ったり。魅力に乏しく、消費者に感動を与えられない。一方、産直もブームとなったものの、リアル店舗を脅かすほどの影響をもてないでいる。産直とリアル店舗が直面している課題を紐解く。

ファーマーズマーケットとオンラインショップ

 「BtoC」はここ数年、よく耳にする言葉である。生産者が直接消費者に販売する流通を指す言葉だが、似たかたちに「産直」がある。産直とは文字通り、生産者が卸や小売業者を通さず直接消費者に販売するやり方だ。

 我が国の食品や生活用品の流通は長い間、生産者から市場や問屋という中間流通を経て小売店に届き、そこで消費者の手にわたるのが普通だった。このかたちがここ数年、大きな曲がり角にきている。

 背景にあるのが、紙に代わる新たな情報ツールだ。インターネットの普及で消費者はありとあらゆる必要な情報を簡単に手にできるようになった。小売業態の多くがリアルの販売不振にあえぐなか、オンライン販売は順調に成長し、コロナ禍をきっかけにさらにその存在を強めている。ドラッグストア以外の業態では、ほぼ出店の限界を迎えた今、リアル店舗は出店どころかスクラップを余儀なくされている。そんな現実を横目に少子化、高齢化、人口減が進めば、この傾向はますます強まるはずだ。

 オンラインの普及だけが変化の理由ではない。もう1つは、生産者の世代交代だ。農業従事者は70%近くがすでに65歳を超え、その数も減少の一途にある。高齢化を言い換えると、バイタリティーの低下だ。年をとると人間は意欲的でリスキーな将来の展望よりも、持続可能でより省力・効率的な方法を考える。一次産業の場合、究極のかたちは軽労働と効率的な販売方式だろう。それは自分ができる範囲で、つくったモノを直接消費者に売ることでもある。そこには売上という消費者からのリアル評価もある。それも生産者にとって小さくない喜びだ。

 一方、若い生産者や新規参入の農業法人も、従来の経営規模、方式、流通に代えて新たな経営に取り組む。だが、店舗という拠点をもたない産直は極めて厳しい、というのが実態だ。その要因の1つはリピート。売買の基本はリピートにある。オンライン産直は売り場もなく、対面交流と商品が限られるため、リピーターづくりは難しい。一定のリピーターが見込めれば生産と販売の効率化も可能だが、それができないと産直方式の健全な維持は容易でない。産直がブームになっても、リアルに大きな影響を与える市場がなかなかできない大きな理由だ。

 もちろん、産直はアメリカにもある。大都市ニューヨークではユニオンスクエアなど数多くの場所で、近隣の農家が野菜や果物を直接販売する。そこは安さだけでなく市場の楽しさが満ちている。

 アメリカのスーパーマーケットは安くないから、食べる量が半端でないアメリカの消費者にとって低価格の生産者直売市場はなくてはならない。だからいつも多くの客で賑わっている。もう1つは、地元で生産した生鮮物を地元で消費すれば輸送にかかるエネルギーを削減でき、環境保護につながるという考え方だ。それもアメリカのファーマーズマーケットが支持される理由である。

 しかし、これらのファーマーズマーケットとオンラインショップが従来の流通に取って代わるかといえば、答えは否だ。理由はオンラインにはリアル市場の感動がなく、ファーマーズマーケットは人口密度が高い地域でしか成立しないからだ。品質にばらつきがある生鮮物は、直接自分の目で確認して買いたいという我が国と同じ消費者事情もオンラインに不利に働く。

(つづく)
【神戸 彲】

(中)

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