【唐津街道中膝栗毛／前編】開発の波に呑まれ、往時の面影はわずか　唐津～博多の旧宿場町

博多（福岡市博多区）

古い寺社などは残るも、宿場の痕跡は焼失

　博多宿は、博多川と御笠川の間に挟まれた昭和通りの周辺――呉服町や綱場町、古門戸町、奈良屋町などにあったとされる宿場町である。とはいえ、一帯は町人の町・博多の一部でもあり、明確な境があったかどうかは定かではない。主な宿場は古門戸町近辺にあり、その町内に博多会所や馬継所などがあったとされるが、古い宿場町を思わせる建物などはやがて戦時中の空襲ですべて焼失し、現在ではその面影はまったく残っていない。なお、街道筋は現在の昭和通りのやや南側を通っており、御笠川に架かる石堂橋が東の入り口となっていたという。その石堂橋のたもとには現在、「濡れ衣を着せる」という言葉の語源となった故事にまつわる「濡衣塚」が築かれている。

   現在の博多宿周辺は、石堂橋の西側には、一行寺や選擇寺、海元寺、正定寺などの古くからの寺が残っているほか、官内筋と呼ばれる通り沿いには古くからの風情を残す商店なども軒を連ねている。また、綱敷天満宮や鏡天満宮、豊国神社などの、博多の歴史と関係の深い神社もいくつかある。だが、前述のように空襲でエリアの大部分が焼失し、その後の再開発によって今はほとんどがオフィス街などになってしまっている。かつての宿場町の面影を探すのは至難の業だ。周辺では、明和地所福岡支店による「クリオ ラベルヴィ呉服町イースト」（49戸、20年7月竣工）および「クリオ ラベルヴィ呉服町ウエスト」（41戸、20年11月竣工）などのマンションのほか、オフィスやホテルなどの開発も旺盛に行われている。

～後編（10月29日配信予定）へつづく～

【坂田　憲治】