2024年04月29日( 月 )

【唐津街道中膝栗毛/前編】開発の波に呑まれ、往時の面影はわずか 唐津~博多の旧宿場町

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姪浜(福岡市西区)

炭鉱町としても栄えた、宿場町「姪浜千軒」

住吉神社
住吉神社

 姪浜宿は、現在の福岡市地下鉄空港線/JR筑肥線・姪浜駅から北に約500m、福岡市道千代今宿線(明治通り)の北側エリア一帯にあったとされる宿場町だ。名柄川の河口に開けた港と姪浜浦に接しており、商船で栄えた商人町や漁業を営む漁師町、そして福岡藩の御茶屋などが置かれた宿場町が雑居。長崎警備の際に福岡藩が、参勤交代の際に唐津藩の大名行列が立ち寄ったほか、幕府の要人なども含めて多数の旅人が往来し、「姪浜千軒」と呼ばれるほど繁盛していたとされている。また、製塩業も盛んで、姪浜産の塩は高級品として重宝されたという。また、宿場町の東側にあたる室見川の河口に位置する愛宕山(標高68m)の山頂に位置する「鷲尾愛宕神社」(1901年に鷲尾神社と愛宕神社が合併)は、創建が西暦72年と福岡で最も古い歴史をもつとされ、唐津街道を行き交う旅人も道中の安全祈願のために立ち寄っていたようだ。なお、宿場町として栄えてきた姪浜宿だが、大正期に入ると「姪浜炭鉱」での採炭が開始。今度は炭鉱町として栄えた歴史をもつ。さらに炭鉱の閉山後は、採炭で発生したボタを埋め立てに活用してウォーターフロント開発を実施。埋立地として今の小戸や愛宕浜などを生み出した。

姪浜駅
姪浜駅

 現在の姪浜宿は、街道筋に古い町屋が点在しているほか、住吉神社をはじめとした古い寺社仏閣も周辺に多く立地している。古い民家の玄関に、時折しめ縄が飾られているところがあるが、これは海上の安全を祈願した漁師町の名残りだという。地元の「唐津街道姪浜まちづくり協議会」などが中心となってまちづくり活動を行っていることもあり、旧宿場町の面影が福岡市内では比較的残っている場所だといえる。

新たなマンション開発も進む
新たなマンション開発も進む

しかし、姪浜駅周辺は西区役所などが存在する西区の中心地ということもあり、旧宿場町の街道筋にも開発の波は押し寄せており、古い建物が取り壊されて新たにマンション開発が行われているような箇所も散見された。周辺での新たなマンション開発の動きとしては、(株)アライアンス(福岡市中央区)による「エイリックスタイル姪浜レクリア」(42戸、22年3月竣工予定)や「エイリックスタイル 姪浜駅南IIレジデンシャル」(21戸、22年4月竣工予定)、(株)ウェルホールディングス(福岡市中央区)と(株)グランディア(福岡市中央区)の共同開発による「ウェルグラン姪浜マリナヒルズ」(45戸、22年9月竣工予定)、(株)ラ・アトレ(東京都港区)による「ラ・アトレレジデンス姪浜」(44戸、23年6月竣工予定)など。

 姪浜駅は福岡市地下鉄およびJR筑肥線の起点ともなっており、周辺では単身者向け賃貸マンションの開発も進む。かつて街道は姪浜駅の北側を通っていたとされるが、そのわずかに南側、現在は幹線道路となっている明治通り沿いでは、(株)えんホールディングス(福岡市博多区)が「エンクレスト姪浜」(72戸、20年8月竣工)を開発。近隣にコンビニ、スーパーマーケットがあるほか、駅から徒歩7分程度ということもあり築1年を経過した現在、満室で稼働しているようだ。

左:鷲尾愛宕神社 / 右:民家の玄関にしめ縄があるのは漁師町の名残り
左:鷲尾愛宕神社 / 右:民家の玄関にしめ縄があるのは漁師町の名残り

【坂田 憲治】

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