2024年04月20日( 土 )

【唐津街道中膝栗毛/前編】開発の波に呑まれ、往時の面影はわずか 唐津~博多の旧宿場町

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唐津街道 イメージ

時代によって変わるルート、呼び名もさまざま

 かつての九州は、関門海峡という海によって隔てられている地勢的な理由から、中央政府が置かれていた本州に向かっての人の往来や物品の運搬などは海路をたどることが多く、内陸部の交通路の整備は海路に比べて遅れていたとされている。しかし、近世―とくに江戸期に入ると幕藩体制の確立が進み、幕府の奨励によって参勤交代も次第に陸路をとるようになり、各地で街道の整備が進行。九州北部では小倉を起点とする「小倉の五街道」と呼ばれる5つの街道(長崎街道、唐津街道、中津街道、秋月街道、門司往還)が伸びていたほか、その周辺にも複数の道路や往還(※)が通っていたとされている。

※往還:街道の別称とされるが、道幅など多少の違いがある。往還の道幅は馬がすれ違える1間(約1.8m)なのに対し、街道の道幅は荷車がすれ違える2間(約3.6m)程度。また、街道は主に平野部を通って山・丘陵などを迂回するが、往還は山・丘陵なども直登・直下するルートをたどるケースが多い。

 そのなかの1つである唐津街道は、現在の北九州市小倉北区の紫川に架かる「常盤橋」を起点に、主に福岡県北側の沿岸部を通りながら、佐賀県唐津市までを結んでいた街道だ。小倉を起点に、若松(北九州市若松区)、芦屋(芦屋町)、赤間(宗像市)、畦町(あぜまち/福津市)、青柳(古賀市)、箱崎(福岡市東区)、博多(福岡市博多区)、福岡(福岡市中央区)、姪浜(福岡市西区)、今宿(福岡市西区)、前原(糸島市)、深江(糸島市)、浜崎(唐津市)を通って唐津に至るルートが基本とされている。だが、時代を経るとともに少しずつルートが変わっていき、やがて長崎街道と重なって、小倉から黒崎(北九州市八幡西区)を通って、木屋瀬(こやのせ/北九州市八幡西区)から分岐した後に、赤間に至るようになったとされている。また、起点・小倉から終点・唐津までのルートだけでなく、唐津の先の名護屋(唐津市)までや、伊万里(伊万里市)や松浦(松浦市)、平戸口(平戸市)を経て平戸(平戸市)までのルート、厳木(きゅうらぎ/唐津市)や小城(小城市)を経て佐賀(佐賀市)までのルートも含めて唐津街道と呼ぶこともある。

 街道の起源については、古代から大陸と行き来する人々が利用していたとされているほか、中世には日本に攻め入ろうとする蒙古軍(元)の大軍を防衛する際に使用されたという話がある。だが直接的には、豊臣秀吉が朝鮮出兵に際して拠点となる「名護屋城」を築く際や、全国から集結した武将らが通ったとされる「太閤道」がその前身とされているようだ。

 なお、名称については、福岡藩(黒田藩)と唐津藩が参勤交代で通ったことで唐津街道と呼ばれていたが、ほかにも時代や人、進む方向、区間によってさまざまな呼び方がされていたようだ。ほかの呼び名としては、「筑前街道」や「内宿通り」「青柳通り」「赤間道」などがあるほか、一部区間を指して「中原往還」「若松街道」「芦屋街道」などという呼び名もあったとされる。また、唐津街道の貨客運賃(御定賃銭)は長崎街道と比べて約4分の3程度であったとされており、九州北部における交通上の重要性では長崎街道のほうが格上だったようだ。

 多くの人々が行き交い、宿場町や街道沿いが相応に賑わったとされている唐津街道だが、時代の流れとともに都市化や開発の波に呑まれ、今ではその面影はほとんど消えてしまっている。しかし、それでも旧宿場町の界隈には、わずかながら往時の面影が残っているところもある。本誌では今号と次号の2回に分けて、旧宿場町の現在の様子を追いながら、往時の様子に思いを馳せてみたい。なお、タイトルは「膝栗毛」(徒歩で旅行すること)と冠しているが、旧宿場町の界隈を実際に歩き回ったほかは、エリア間の移動は主に車なのであしからず・・・。

唐津街道 地図

【坂田 憲治】

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