【唐津街道中膝栗毛/前編】開発の波に呑まれ、往時の面影はわずか 唐津~博多の旧宿場町
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浜崎(唐津市)
寂寥感が漂う、旧・浜玉町の中心部
浜崎宿は、唐津湾沿岸の特別名勝「虹の松原」の東側、現在のJR筑肥線・浜崎駅の北側一帯にあったとされる宿場町だ。唐津藩主や平戸藩主が参勤交代の際や、福岡藩主が長崎警備の際に立ち寄ったとされるほか、幕府の巡検使も利用していたとされ、商業・漁業で栄えて浜崎宿の通りは活況を呈していたようだ。浜崎宿一帯は、もともとは唐津藩領だったとされるが、その後に幕府直轄の天領となり、さらに対馬藩領に変わったという変遷をたどっている。現代では、2005年1月に唐津市に合併されるまでは浜玉町という自治体であり、役場庁舎が置かれるなど、旧浜玉町の中心部であった。
町の中央には諏訪神社が鎮座しており、鳥居や狛犬などは江戸期の姿を今も残している。通りには、うるち米の皮で餡を巻いた名物の餅菓子「けいらん/けえらん」を販売する店が今も軒を連ねているが、この餅菓子は朝鮮出兵の際に、諏訪神社で戦勝祈願を行った秀吉に地元民が献上したものが由来とされている。名前の「けいらん」には、「戦争に勝つまで帰らない(けえらん)」という意味が込められているという。
現在の浜崎宿一帯の様子は、かつての宿場町の面影がどことなく残っているが、諏訪神社前の通りにはかつての賑わいは感じられない。浜玉支所前交差点の角に位置する1837(天保8)年創業の溝江酒造場は、昔ながらの趣を感じさせる建物は残っているものの、すでに閉店してもぬけの殻。旧浜玉町の役場庁舎もすでに役目を終えて解体を待つばかりなど、周辺一帯には何ともいえない寂寥感が漂っている。エリア内を通る佐賀県道347号・虹の松原線は、唐津と糸島を結ぶ道路だけあって相応の交通量があるが、そのほとんどが通過交通のため、エリア一帯の賑わい創出にはつながっていない模様だ。なお、浜玉市民センターの新庁舎が今年5月から運用を開始したほか、浜崎駅の新駅舎も今年8月下旬から運用が開始されているなど、多少の開発の動きもある。ただし、風光明媚な「虹の松原」がすぐ横にあり、旧宿場町の面影も含めた景観への影響を考えると、過度な開発は抑制されるだろう。
【坂田 憲治】
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