2024年03月19日( 火 )

糸島半島に秘められたポテンシャル、持続可能な地方創生へ

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海岸線沿いのサンセットロード
海岸線沿いのサンセットロード

豊かな自然が生み出す、糸島時間

前原商店街(旧・唐津街道前原宿)
前原商店街(旧・唐津街道前原宿)

 福岡市の中心部から、JR筑肥線(福岡市地下鉄経由)や西九州自動車道(福岡都市高速経由)の利用で40分程度。まちの景観が一変する。古き良き時代の商店街があるまちなみや田園風景、そして「筑紫富士」とも呼ばれる雄大な可也山など――。糸島半島(以下、糸島)のどこかレトロで緑あふれる光景は、そこを訪れた人たちに束の間の癒しをもたらしてくれる。

 糸島を人気の観光地へと押し上げた要素は、緑だけではない。欠かすことができないのが、海の青だ。糸島は唐津湾や玄界灘に面しており、潮風を感じながら海岸線をドライブやサイクリングするだけでも、海辺のまちの良さを感じることができる。

 糸島の財産でもある豊かな自然がもたらす美しい風景は、旅の思い出としてSNS上で“映えスポット”として共有されている。豊かな自然のなかで育まれた山海の幸は、昔ながらの食堂や海岸線沿いで観光客をもてなすオシャレなカフェなどで振る舞われ、糸島観光の魅力向上に寄与している。実際にコロナ禍前の2018年の糸島市への観光入込客数は682万6,970人と、18年連続の増加をはたしていた。

 観光地として、確固たるエリアブランドを築き上げた糸島。自然と調和し、ゆったりと流れる“糸島時間”は、非日常を体験するには最適といえる。

二見ヶ浦商店OYATU-STAND
二見ヶ浦商店OYATU-STAND

伊都国としての歴史的ロマン

志摩中央公園川辺の里
志摩中央公園川辺の里

 観光地、そして良質な食材の産地として、相応の知名度を有するようになった糸島。レジャーや飲食のイメージが先行しがちだが、「伊都国」としての悠久の歴史をもつロマンあふれる地域でもある。

 伊都国は、紀元前後の弥生時代中~後期にかけて、倭国内の国の1つとして栄えていたとされている。玄界灘を挟んで朝鮮半島や中国大陸に近いという地理的特性から、古代から大陸との接点として重要視され、当時における最先端の文明や技術が早い段階で大陸から伝わったことで、それなりの生活利便性が確保されていたものと考えられる。

 大陸との交流を示すものとして、志登支石墓群がある。志登支石墓群は、弥生早期から中期(約2,500~2,100年前)にかけての支石墓10基、甕棺墓8基などが発見された墓地群。遺体を埋葬したうえに大きな上石を置く支石墓は、もともと朝鮮半島でよく見られるタイプの墓地とされている。また、副葬品として打製石鏃6点、柳葉形磨製石鏃4点も出土しており、貴重な遺跡として認知されている。

 このほか、ソフトクリームを思わせる形状で人目を引き付ける「釜塚古墳」や、周辺の巨石群の存在もあってパワースポットのような趣のある「四反田古墳群」などの存在も、伊都国の存在価値を高めるのに一役買っている。

 そんな伊都国の王都は、現在の糸島市三雲エリアに置かれていたと考えられており、国史跡に指定された「三雲・井原遺跡」が論拠となっている。三雲・井原遺跡は東を川原川、西を瑞梅寺川に挟まれた低位段丘上に位置しており、集落域と墓域とを合わせると、その広さは約60ha(東京ドーム約12個分)にもおよぶ。

 弥生時代の集落拠点としては国内最大級のもので、中国産の辰砂(しんしゃ)や中近東原産のファイアンス玉といった数々の出土品も見つかっており、伊都国には文化交流拠点としての重要な役割があったものと考えられる。

 また、糸島は日本最古の戸籍の1つである「筑前国嶋郡川辺里戸籍」が発見された地でもある。これは702(大宝2)年における戸籍の一部で、この嶋郡というのは、糸島郡のころの志摩町と前原町、そして福岡市西区の一部と考えられている。川辺里戸籍が発見されたことを記念して、「志摩中央公園『川辺の里』」が整備され、今でも憩いの場として親しまれている。

 こうした歴史的ロマンを感じながら観光を楽しめるところも、糸島の面白みであり、幅広い層が糸島に興味を抱くきっかけになっている。

LANDICがサンセットロード沿いで計画中の宿泊施設
LANDICがサンセットロード沿いで計画中の宿泊施設

【代 源太朗】

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