2022年08月15日( 月 )
by データ・マックス

マンション管理適正化法の改正案

 増加し続ける高経年マンションストックが目下の問題となっている。進む老朽化と多発する自然災害、入居者の高齢化などを踏まえ、マンション管理適正法の改正が決定した。とくに今回は管理の適正だけでなく、建替えや土地売却などの再生を踏まえた「除却」の加筆に注目が集まっている。

高経年マンションストックの増加

 6月24日に公布された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律およびマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」(以下、改正マンション管理適正化法)を受け、国土交通省はマンション建替円滑化法で拡充された除却の必要性に係る認定の基準について議論するため、有識者で構成された検討会を設置した。

 この背景には、高度経済成長期に建設された住宅やビルなどの多くが老朽化し、安全性が低下しているとともに、維持・修繕などが困難な状況になりつつあることがある。検討会はマンション管理適正化法案の具体的基準を議論することを目的としており、問題となっている老朽化などの課題解決に向けた議論を行っている。

 国交省は6月21日、2020年末現在の築30年、40年、50年を超える分譲マンション数を発表した(図1)。これによると、築30年~40年未満は128.6万戸、築40~50年未満は87.5万戸、築50年以上は15.8万戸となっている。築40年超のマンションは103.3万戸に上り、マンションストック総数の約15%を占めていることがわかる。また、10年後には約2.2倍の231.9万戸、20年後には約3.9倍の404.6万戸となる見通しだ。

図1 202年末 高経年マンションストック数

 築40年を超える高経年マンションでは、共用部分である外壁等の剥落、鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化といった、生命・身体・財産に影響する問題を抱えるものが多いようだ。一方で、大規模修繕工事の周期を12年程度とした場合、築40年以上のマンションの約4割、築30年以上のマンションの約2割で、適切な大規模修繕が実施できていない可能性を国交省は指摘している。

適正化の推進と円滑化の推進

 改正マンション管理適正法では、主に「マンション管理の適正化の推進」と「マンションの再生の円滑化の推進」の2つの推進がなされている。適正化の推進は、主に建物を残した状態で状況を改善する維持・修繕を目的としたものであり、円滑化の推進は、すでに維持が困難な建物を建て替えるなどの再生に向けた取り組みである(図2)。

図2 管理適正化・円滑化のフロー

 とくに今回の改正では、円滑化の推進において除却対象を拡充することが決定しているが、その基準について注目が集まっている。検討会は、近年多発する水害や地震などの災害を考慮したうえで、外壁の剥落により居住者・近隣住民等の生命・身体に危険が生じる恐れがあるマンションについて、各区分所有者の権利制限にも配慮しつつ、マンション敷地売却事業の対象とすることも重要であるとしている。

 耐震性が不足するものに加え、多数決により実施できるマンション敷地売却事業の対象とし、外壁の剥落により危害が生じる恐れのあるマンションなどを今回の改正では適用対象とした。また、同様に外壁の剥落により危害が生じる恐れのあるマンション、バリアフリー性能が確保されていないマンションなどを、容積率緩和特例の適用対象としている。

 さらに、団地型マンションの再生円滑化のため、除却の必要性に係る認定を受けたマンションを含む場合に限り、団地における敷地分割制度を創設した。敷地分割制度とは、棟や区画ごとのニーズに応じ、一部棟を存置しながらその他の棟の建替え・敷地売却を行うため、全員合意ではなく5分の4の合意があれば敷地の分割を可能とするものである。

【麓 由哉】

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