フリーランスとして適正に働ける環境へ「一人親方問題」
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「是非」ではなく「適正か否か」
一人親方は企業側にとって経費削減のほかに、下請企業として取引ができるなどのメリットがある。デメリットとしては、1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事以外)の場合、建設業法上の許可がなければ工事を請け負うことができないため、一人親方への発注が困難になることなどが挙げられる。労働者側のメリットには、職場にとらわれず自由に働くことができ、効率的に稼ぐことができることなどがある。
一方で、社会保険に加入しなかった場合は、引退後の生活が不安定になる、失業等給付や雇用調整助成金等の対象外となる、建設業退職金共済制度の加入や掛金充当のハードルが高くなるなどのデメリットが存在する。また、雇用契約ではないことを理由に、長時間や無休労働を強要される可能性などが挙げられる。一人親方という働き方も一長一短で、検討会では一人親方としての働き方の是非ではなく、適正か否かで判断すべきであるとしている。
検討会では、適正な一人親方の定義案として、「適正と考えられる一人親方とは、請け負った仕事に対し自らの責任で完成させることができる技術力と責任感をもち、現場作業に従事する個人事業主」と挙げた。定義案には社会保険加入率や雇用関係などのシステムだけでなく、労働者の技術力や責任感などを含めている。その理由としては、適正な一人親方は事業選択の自由、勤務時間の自由、報酬の出来高見合いなどを含む労務対償性などを有している人物であるとすべきとしているためだ。
この背景には、厚生労働省が18年に行ったアンケート(日本建設業連合会や全国中小建設業協会などを含む4団体を対象、有効回答数:4万2,384件)で、30歳未満の一人親方に対する意見が注目されたことがある。なかには、「請け負った仕事に対し自らの責任で完成させることができる技術力と責任感を培うのに数年はかかるため、適正な一人親方とはいえない」「実態は労働者性が強いため、適正な一人親方とはいえない」「若年層の一人親方は収入が高額ではない実態が多い」「十分な知識がなく、企業都合で一人親方になっている」などの意見が挙がっていた。
この問題に対して国交省は19年、社員(労働者)と一人親方(個人事業主)の適切な働き方の理解を促すとともに、社員として働いた場合は一人親方として働いた場合に比べて、年金給付額が多くなる可能性などの優位性を、一人親方などに直接訴求する取り組みを行っていた。
【麓 由哉】
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